2024年2月7日水曜日

【読書感想文】鎌田 浩毅『武器としての教養』 / そうはいっても素人知識

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武器としての教養

鎌田 浩毅

内容(e-honより)
超想定外を突破する真の教養とは何か。「京大人気No.1教授」が紙上講義。


 講談社現代新書みたいな装丁だったので講談社現代新書だとおもって読んでいたら、講談社現代新書にしては内容がスカスカだなとおもってよく見たら講談社現代新書じゃなかったごめんよ講談社現代新書、講談社現代新書って書きたいだけだね。


 いやあ、ほんと中身なかったなあ。

 火山学の教授らしいんだけど、この本に関しては火山のことよりも歴史や文学について語っている。博識ではあるんだけど、そうはいっても歴史や文学については素人の域を出ないから、どうも語っている内容が薄い。要約みたいな内容なので、それだったらオリジナル作品にあたったほうがいいやとおもってしまう。一応火山活動にからめて語ってはいるけど。


 たぶんここに書いてあることを聞いたらおもしろいんじゃないかな。ただ聞いておもしろいのと読んでおもしろいのはちがうからね。話が散漫だし、掘り下げは浅いし、読んでおもしろいもんじゃないな。編集が良くないんだろうな。講談社現代新書ならこうはならなかったはず。




 「浅間山の大噴火がフランス革命の原因になった説」という俗説について。

 この「天明三年の大噴火」については、一八世紀のフランス革命と関連するという巷説があります。この年に日本を覆った「天明の大飢饉」もそうですが、この時期は北半球全体を異常気象が襲いました。
 冷害がヨーロッパの農作物に大打撃を与えました。特に小麦が不作となり、パンの値段が高騰しました。そのためフランスでは、庶民の不満がちょうど”マグマ"が急速に上昇するように高まりました。やがてそれが社会にあふれ出し、ついに爆発したのが一七八九年のフランス革命だった――というわけです。
 たいへん魅力的な説です。しかし残念ながら、火山学的にはフランス革命は、浅間山が原因なのではありません。
 一七八三年の気候変動は、大西洋北部の氷の島アイスランドの火山爆発が原因だったと現在では考えられています。アイスランドの活火山ラカギガル火山が、大爆発を起こしたのです。確かに、浅間山の天明の大爆発とまさに同じ年という偶然はありました。
 地上にできた巨大な割れ目から噴出した溶岩流による直接の被害も甚大でした。しかし、もっとも深刻だったのは、飛散した細粒の火山灰による被害でした。農耕地や牧畜への弊害だけに留まらなかったのです。火口から空中に排出された二酸化硫黄が、人体にまで悪い影響を及ぼしました。
 こうした被害は、アイスランド国内や近隣のイギリスに留まりませんでした。火山灰と有毒な火山ガスは、偏西風にのって遠くヨーロッパ大陸にまで達したのです。すなわち、地に降りては人、動物、農地を直接襲いました。そして天に昇っては、分厚い靄を形成して気温の低下を招いたのです(拙著『地球の歴史』中公新書)。

 残念ながら「浅間山が原因説」は誤りらしく、「アイスランドの火山爆発が原因説」も完全に立証されているわけではないらしい。

 とはいえ、こういう話はおもしろい。歴史の話って「誰が何をした」でとらえてしまうけど、人が生きていた以上、気候とか天気とか食事とか体調とかも関係あったはずなんだよな。「あの日雨が降っていたからこうなった」「もしあのとき風邪気味じゃなかったら歴史はこうなっていた」みたいなこともあるんだろうな。あんまり記録に残っていないだけで。近ければ「桜田門外の変は雪が降っていたので成功した」みたいなのもあるけど。


 もっとこういう専門分野の話を読みたかったなあ。


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