レイクサイド
東野 圭吾
舞台は湖畔の別荘。中学受験の合宿で、四人の子ども、その両親、塾講師が泊まっている。そこに主人公の愛人が訪ねてくる。
その夜、出かけていた主人公が別荘に帰ってくると、愛人の死体があった。妻が言う。「あたしが殺したのよ」と。受験前に騒がれることを嫌った保護者たちは、死体を隠して事件を隠蔽しようとする……。
ミステリを読んでいると「そううまくはいかんやろ」とおもう作品によく出くわす。
そんな万事計画通りに話が運ばんやろ、そうかんたんに人を殺さんやろ、そううまく目撃者が現れんやろ、そんなにたやすく本心を吐露せんやろ、そうかんたんに犯人がべらべらと犯行について語らんやろ。
『レイクサイド』がよくできているのは、中盤まではその「そううまくはいかんやろ」レベルのミステリなんだよね。
そこにいあわせた人が死体遺棄に手を貸すのは不自然じゃないかな。いくら仲が良いといっても、他人のためにそうかんたんに犯罪に手を染めるか……? 死体隠蔽工作も順調に進む。目撃者が現れるが、それもうまく仲間に引き込むことができる。
できすぎじゃない?
……という違和感は、ちゃんと後半で解消される。なるほどなるほど、ちゃんと読者の「そううまくはいかんやろ」を想定して、それすらも謎解きに利用している。さすが東野圭吾氏だなあ。押しも押されぬ大人気ミステリ作家に対して今さらこんなこと言うのもなんだけど、上手だなあ。
また、単なる謎解きに終始させず、夫婦、親子などの関係が生み出す愛憎入り混じった感情もストーリーに盛り込んでいる。
登場人物が多い(現場にいるのは14人)のにそれほどややこしさも感じさせないし、つくづくうまい小説だった。
ちなみに、後味は悪い。登場人物は主人公を筆頭にみんな身勝手だし、保身ばかり考えていて行動もまったく道徳的でない。また、犯人の動機については最後まで明らかにされないし、犯行の結末も不明。つまり、まったくもってすっきりしない。
でも個人的にはこういうのがけっこう好きなのよね。読んだ後にもやもやが残る小説は嫌いじゃない。
悪い犯人が捕まりましたメデタシメデタシ、っていうわかりやすい物語が好きな人にはおすすめしません。
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