子どもたちを連れて、大阪・梅田に行った。
他の地域の人には伝わりにくいかもしれないが、梅田というのは大阪の中心部で、すなわち関西、ひいては西日本でいちばんの繁華街だ(ちゃんと調べたわけじゃないからまちがってたらスマン)。
ぼくは兵庫県の校外で育ったので「梅田に行く」というのはビッグイベントだった。自宅からバスと電車を乗り継いで約二時間。時間的にも経済的にもふらっと行ける距離ではなく(父親はその距離を毎日通勤していたが)、半年に一度ぐらいのことだった。
家族で梅田に行くのは年末年始だった。梅田にはキディランドという大きなおもちゃ屋と、紀伊國屋書店梅田本店というそれはそれは大きな書店がある(ちなみに梅田本店という名前だが登記上の本店は新宿本店らしい)。
小さい頃はキディランドにおもちゃを見にいった。クリスマスプレゼントや誕生日プレゼントを物色したり、あるいはお年玉で買うためだ。
また、パズル雑誌もキディランドで買っていた。ぼくが大好きな『ニコリ』というパズル雑誌はかつて一般の書店には置いてなくて、おもちゃ屋であるキディランドまで行かないと買えなかったのだ。
また、小学校高学年ぐらいからはおもちゃよりも本を欲しがるようになり、紀伊國屋書店に行くたびに十冊ぐらいの文庫本を買ってもらっていた。
「プレゼントを買ってもらうための場所」だったから、子どものぼくにとって梅田という場所はとてもわくわくする場所だった。ただでさえ年末年始の街は浮かれているのに、そこに浮かれているぼくが行くのだ。こんなに気持ちを昂らせてくれる場所はない。
大きくなってからは梅田に行く機会も増え、昔に比べて特別な場所ではなくなった。前の職場は梅田にあったし、今も通勤で毎日通っている。
とはいえ子どもにとってはやはり心躍る場所にちがいない。子どもたちを喜ばせてやろうと「明日おっきいおもちゃ屋さんに行こうか」と宣言して、子どもたちを梅田に連れていった。
キディランドと紀伊國屋書店は、今も現役だ。多くのお客さんが来ている。しかし、どちらもぼくの記憶にある店とは少し様相が異なっていた。
まずキディランド。たいへんにぎわっている。が、どうも昔とは客層がちがう。ずいぶん年齢が高いのだ。大人のひとり客も多いし、カップルで来ている人も多い。そして子どもの数が少ない。ファミリー客よりも、大人だけで来ている人のほうが多かった。
今でもおもちゃは売られているが、どちらかといえば隅に追いやられていてメインの商材ではなくなっている。その代わりに店の中央に集められているのはキャラクター商品だ。
サンリオ、くまのがっこう、おさるのジョージ、ミッフィー、ムーミンなどのグッズが多く売られている。その多くはおもちゃではない。クリアファイル、食器、コスメ用品、文具などでどちらかといえば大人が持つためのものだ。セーラームーンとか夏目友人帳とか、明らかに大人にターゲットを絞ったキャラクターも多かった。
店の中央で行列ができていたので何かとおもったら、とあるキャラクターのグッズが限定販売されていた。並んでいるのは全員大人だった。
久々に行ったキディランドは、おもちゃ屋さんというよりキャラクターグッズの店になっていた。
ことわっておくが、おもちゃ屋からキャラクターグッズの店に経営方針を変えたキディランドを責める気は一切ない。むしろいい判断だとおもう。
少子化だし、ネット通販もあるし、おもちゃ屋をやっていても儲からないことは目に見えている。申し訳ないけど、ぼくもおもちゃはたいていAmazonで買う。
十数年前にキディランドの前を通ったらもっと閑散としていたような記憶がある。キャラクターグッズの店になったことでうまく経営を立て直したのだろう。賢明な判断だ。
ただ、ぼくの知っていたキディランドではなくなったな、とおもった。
その後に行った紀伊國屋書店もまた、昔ほど唯一無二の場所ではなくなった。
というのは、我が家から歩いて行ける距離に大きな書店があり、児童書に関してはそっちのほうが品ぞろえが充実しているのだ。まあ梅田という場所柄、児童書よりもビジネス書を充実させるのは当然なのだが……。
キディランドにしても紀伊國屋書店にしても、かつては「そこに行けばたいてい揃っている。そこになければ他を探してもまず見つからない」場所だったのだが、今はそうでもなくなった。まあこの二店舗にかぎらず、Amazonに匹敵する品ぞろえの店舗なんて世界中どこにもないのだが……。
「ここに行けばなんでもあるようにおもえて胸躍る場所」って、今はもう現実世界にはなくなってきているのかもしれないな。
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