2022年12月20日火曜日

仮名文学

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 田中(仮名)は山下(仮名)を殴った。殴られた藤本(仮名)はかっとなって、杉浦(仮名)を殴りかえした。こうなるとあとは果てしない殴り合いだ。上田(仮名)の拳が上条(仮名)の顔面に当たり、お返しに上田(仮名)のキックが上条(仮名)の腰にヒットする。松井(仮名)のバットが秀喜(仮名)の背中に直撃した。

 さらに斉藤(仮名)は齋藤(仮名)の髪をつかむと、斎藤(仮名)めがけて頭突きをくりだす。これには齊藤(仮名)も齋籐(仮名)もダメージを受けてひっくり返る。先に立ち上がったのは齎藤(仮名)だった。

 亀井(仮名)と亀居(仮名)はふたりの喧嘩を呆然と見ていた。

 千葉(仮名)は地面にひっくりかえったまま昔のことを思い返していた。
 千葉(仮名)は山梨(仮名)出身だった。山梨(仮名)の奈良(仮名)という小さな港町で育ったのだった。幼い頃はよく岐阜(仮名)まで自転車を走らせて日が暮れるまで海を見ていた。群馬(仮名)の海はきれいだった。地元の少年たちにはモンゴル(仮名)の海のほうが人気だったが、千葉(仮名)はウズベキスタン(仮名)から見える海のほうが好きだった。

 甲(仮名)は乙(仮名)のことが好きだった。申(仮名)にとってZ(仮名)はただの親戚ではなかった。だが由(仮名)は己(仮名)に思いを伝えぬまま郷里を出たのだった。

<つづく>


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