2022年12月8日木曜日

たこ焼き風 文化祭風

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 高校三年生の文化祭で、模擬店をやったんだよね。

 それがさあ、ものすごくつまらなくてね。

 まず、なんだか知らないけど「三年生は模擬店をやる」って決まってるの。まあ演劇とかは練習とかに時間がかかるから、受験を控えてる三年生は準備期間の短い模擬店をやらせとけって感じなんだろうね。

 模擬店で売れるものも決まっていて、基本的に火は使えない。ホットプレートぐらいならセーフ。ナマ物を扱うのはだめ。生肉や魚介類は(たとえ火を通したとしても)売ってはいけない。

 価格も決まっていて、すべて一品百円。

 とまあものすごく制約が多くて、食材も予算も決まっているわけだから、やれることはほとんど決まっている。

 ぼくらのクラスが選んだのは「たこ焼き風」だった。魚介類がダメなのでたこ焼きはできず、たこの代わりにこんにゃくとかチーズとかを入れるわけだ。

 で、ホームルームの時間に、どんな「たこ焼き風」にするかという話し合いがもたれるわけだ。たこの代わりにキムチはどうだとか、ハムはいいかとか、カニカマはどうでしょうとか、わいわい議論が交わされるわけだ。


 それを聞きながら、うわあ、くそつまらねえ、これのどこが〝文化〟祭なんだよ。文化もクソもねえじゃん、こんなのほぼ授業じゃん、タコの代わりにこんにゃくを入れるのが創意工夫ですか、とおもったわけですよ。

 ちょっと待って、みんな「高校最後の文化祭だから盛り上げようぜ」みたいなテンションでしゃべってるけど、ほんとに〝たこ焼き風〟を売るのが楽しみなの?  だったら飲食店でバイトしたほうがなんぼかマシじゃない? ハムとカニカマのどっちがいいか本気で悩んでるの? もううちのクラスだけでもボイコットするほうがよっぽど文化的じゃない?

 って言いたくなった。もちろん言わなかったけど。


 ぼくがうんざりしてたら、店の名前はどうするとか、ポスターは誰が書くとか、クラスみんなでおそろいのTシャツを作ろうとか、あれこれ話が進んでくわけね。そういうのも全部新しく出たアイデアじゃなくて、店の名前は「担任の名前をおもしろおかしく取り入れたもの」で、ポスターも「怒られない程度にふざけた感じ」で、おそろいのTシャツも「例年三年生がやっていること」なわけですよ。

 おい文化ってなんなんだよ。革新的なことをやるだけが文化とはおもわないけど、これが文化の祭だったら、自治体のごみ拾いだって文化祭じゃねえかよとげんなりしてしまった。


 そんなわけで、ぼくはクラスの手伝いを一切せず、もちろん店番もサボり、別のクラスの友人といっしょに「余った段ボールで等身大の人形を作って校舎の四階から吊るす」活動と、「みんなが後片付けをしているときに中庭でゲリラ演劇ライブをする」活動に全精力を注いでたのね。

 そんで、一致団結して〝たこ焼き風〟を売っているクラスの連中をばかにしていたわけだから、我ながら嫌なやつだったとおもう。ぼくらがやってたことも楽しかったけど、クラスのみんなと一致団結することも今おもえばそれなりに悪くなかったのかもしれないとおもう。

 でもなあ。あれを文化祭と呼ぶのはやっぱり欺瞞だとおもうんだよなあ。文化祭じゃなくて「飲食店体験学習」と呼ぶのであれば、なんら異論はないけどさ。

 これじゃまるで「文化祭風」だよ。たこ焼き風がよくお似合いだ。


 ぜったいに食中毒を出したくないとかトラブルを起こしたくないとかの学校側の事情もわかるけど、少なくともあれを「生徒の自主性を養う行事」という嘘だけはつかないでくれよな。出なきゃ熱々のたこ焼き風を口の中に詰めこむぞ。


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