ガチで考える山岳遭難の防止
小尾 和男
ときどき登山をする。
といっても初心者に毛が生えかけてまだ生えてないレベルだ。
1,000メートル弱の山に日帰りで登るだけ。どちらかといえば下山して銭湯に浸かってビールを飲むのが目的だったりする。
登山ガイドで見た「登山初心者の山ガールにおすすめ!」みたいなところしか行かない。
これまでに何度か登ったが、一度も危険な目に遭ったことはない。
ときおり「山中で遭難」とか「滑落して大けが」なんてニュースを見ても、こわいなあ、本格的な登山はあぶないなあ、とどこか対岸の火事だった。
ぼくは入門者向けの山しか登らないから大丈夫だ、と。散歩の延長ぐらいに考えていた。
だが『ガチで考える山岳遭難の防止』を読んで考えを改めた。
ぼくがやってたような入門登山でも、ちょっと誤ったら十分生命にかかわる事故につながっていたんだな、と。
実際、本格的なトラブルに遭ったことこそないが、山頂で足をすべらせて足首を痛めたことがある。
道をまちがえて本来のルートに復帰するまで一時間ぐらい道なき道をさまよったこともある。
「ここで一歩足を踏み外したら大けがするな、下手したら死ぬかも」と冷や汗をかく道を通ったこともある。
それでも大きな事故や遭難に至らなかったのは、たまたま運が良かっただけなのだろう。
『ガチで考える山岳遭難の防止』には、初心者よりも中級者や上級者のほうが遭難しやすいと書いてある。
あのまま甘い考えの登山を続けていたら、いつかぼくも痛い目に遭っていたかもしれない。
特に方向音痴のぼくが怖いのは、道迷い遭難だ。
これ、わかるなあ。
以前迷ったときも「これちがうんじゃないか」とおもいながら、引き返すことなく前進を続けて、たいへんな目に遭った。
山登りって疲れるから、なるべく余計なことをしたくないんだよね。だから「引き返す勇気」が持てない。
で、「そのうち本来の道につながるだろう」なんて考えで歩いて、ますます引き返すタイミングを失ってしまう。
一分後に引き返していれば往復二分のロスで済むのに、十分後なら二十分のロスだからね。遅くなればなるほど引き返す判断が困難になる。
街中の整備された道なら、たとえ迷ってでたらめに歩いても必ずどこかにつながるから、ついついその感覚で歩いちゃうんだよね。
肉体的に疲れるから頭もはたらかなくなるし。とにかく冷静な判断ができなくなる。
あとぼくの体験的に危険だとおもうのは、メンバーとの登山レベルが違う場合。
たとえば中級者と初心者が一緒に登っていて迷ったとき。
「あれ、この道ちがうんじゃない?」とおもっても、初心者は「でも中級者がこっちに進んでるから大丈夫だろう」と考えてしまう。
中級者のほうは初心者の前でいいかっこをしたいから「ごめん、道まちがえました」とは言いづらい。
で、お互いに薄々「この道おかしい」とおもいながらお互いに言いだせない、ということがあった。
きっと、こんなつまらない遠慮や見栄が原因で命を落とす遭難に至った人もいたのだろうな。
遭難しない方法だけでなく、遭難した場合の対策も載っている。
なるほどねえ。
知らなければ、あわてて助けに行ってしまいそうだ。ここにも書かれているように子どもが落ちたときならなおさら。
でも余計に危ない目に遭わせてしまうかもしれないんだな。
山登りをする人は読んでおいて損はない一冊。
この知識が、万が一のときには生死を分けることになるかもしれない。
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