『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』
藻谷 浩介
2010年不況期に刊行された本だからちょっと古いんだけど、今読むと見事に著者が書いているとおりになっている。
生産性が上がって景気も良くなっているのにいっこうにモノは売れない、労働者の給与は上がらない。
失業率は下がって有効求人倍率は上がっているはずなのに、誰も景気の良さを実感できない。
それは生産人口が減っている上に、若い人に金がまわっていないから。
書いてあることがことごとく当たっていて、だから余計に陰鬱な気持ちになる。はぁ。
もう日本の状況が良くなることはないんだな。まあ日本だけじゃなくて遅かれ早かれ他の国も同じ道をたどるんだろうけど。
いろんな人が「景気さえよくなれば日本の経済は再びよくなる」って言ってるけど、この本を読めばそんなことはぜったいに起こりえないということがわかる。生産人口が減っている以上、もうどうしようもないのだと。
もしかしたら「景気さえよくなれば」って言ってるほうも、それが嘘だってわかってて言ってるのかもね。だって「もう何がどうなろうと日本の経済が以前のように回復することは100%ありません」って言うのはつらいもんね。たとえ逃れようのない真実であっても。
だから景気だとか失業率とか有効求人倍率とか、どうとでもできる(ということは意味がないということでもある)数字をあれこれ言って現実からみんなで目を背けているのかもね。
だって書いてあることは、景気が良くなっても状況は良くならない、日本製品が海外で売れても良くならない、子ども産んでも良くならない、って話だからね。
じゃあどうしたらええねんって思うでしょ。どうにもならないんですよ、これが。笑っちゃうよね。ははっ(乾いた笑い声)。
バブルの原因である地価の高騰について。
ということはもう二度とバブル期のような伸びはこないんだよね。これから一組の夫婦が十人ぐらい子どもを産んで爆発的に人口が増えて、老人だけが死ぬ伝染病が大流行でもしないかぎり(もしそうなっても経済の伸びがやってくるのは数十年後だけど)。
一応、対策も書いてある。こうやったらまだマシですよ、という施策が。
ひとつは、女性の雇用を増やすこと。でもそれって達成できたとしても一時的な解決であって、人口が減っている以上根本的な解決にはならないよね。
ひとつは、外国人旅行者に使ってもらうお金を増やすこと。これはわりと達成できつつあるよね。
ひとつは、財産を老人から若い人に移すこと。これはクーデターでも起こらないかぎり不可能でしょう。
はー、つらい。読めば読むほど日本の状況って八方塞がりなんだと気が付かされる。政治が悪いとかそういう話だったらまだよかったんだけどね。それだったらまだ改善の見込みがあるから。
いやでもほんとに革命政権が実権握って〇歳以上は全員死なす、とかしないかぎりどうにもならないんだろうね。どっちにしろぼくらみたいな中年に明るい未来はないね。
もうしょうがない。みんなで老人の介護しながらゆっくり滅んでいきましょう。
著者の藻谷さんって頭いい人なんだろうなあ、と思う。ほんでほんとのことをビシバシ言ってすぐに敵をつくっちゃうんだろうなあ、とも。
いかに自分が正しいと思いこんでいることがいいかげんか、ということに気づかされる。
「女性の社会進出が進むと少子化が加速するんじゃないか」という話、聞いたことありませんか?
ありそうな話ですよね。ぼくも直感的にそう思う。
へえ。
たしかに昔は「専業主婦ほど子だくさん」だったんだろうね。というか子どもが生まれたら専業主婦になる人のほうが多かったわけだから。
でも今は経済的に恵まれている人のほうが子どもを持てるんだろうね。あと働いていると保育園に預けられるからつきっきりで面倒みなくていい、ってのも大きいかもしれない。これは人によると思うけど「大人とほとんど話すことなくずっと子どもの面倒みてる」ってのをきついと思う人も少なくないだろうからね。
2010年の本だけどおもしろかった。ひょっとすると当時読むより今読むほうがおもしろいかもしれない。「怖いぐらい当たってる……!」って思えるから。
そして当時よりもっと状況が悪くなっていることに気づいて慄然とするから……。
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