2018年1月27日土曜日

人生のやりなおし

このエントリーをはてなブックマークに追加

人生のやりなおしができたら……って考えるじゃないですか。ときどき。
いや私は一日に四回ぐらい考えますって人、お気の毒です。さぞかしつらい人生を送ってるんでしょう。

ぼくは今のところそんなにつらい人生を送ってない。たぶん。未来人から見たら「仕事をしないと生きていけなかった時代にうまれてかわいそうに」って思うかもしれないけど。
それでもたまに「あのときああしていたらどうなってたかな」と考える夜もある。

だけど今の科学技術では人生のやりなおしはできないっぽいので、ぼんやりと考えてはすぐに「ま、考えてもしょうがないしな」と思う。



子育てをしていると、「これは人生のやりなおしに近いのかもしれない」と思う。

子どもと一緒に遊んでいると、子ども時代をやりなおしているような感覚にとらわれる。
ああ、これはぼくが四歳のときにやったやつと一緒だ、と。

子どもは自分だと別人だとわかっているんだけど、ついつい己の姿を重ねてしまう。いってみたらアバター。
スーパーマリオのゲームをやるとき、マリオと自分って重なってるじゃない。コントローラーを握っている間は、マリオは自分でもあるわけでしょ。あんな感覚。
娘とおにごっこをしていると、逃げている自分はもちろん自分なんだけど、追いかけている娘もまた自分なんだよね。自分が自分を追いかけている。「娘にはこう見えているだろうな」と思いながら逃げている。

遊んでいる間、「娘だったらこれはおもしろいだろうな」と思うことをやる。たとえば「お父さんが転んだらおもしろいだろうな」と思う。で、わざと転んでみせる。娘は楽しそうにけたけた笑う。ぼくも楽しい。
この「楽しい」は、「娘が笑っているから父親として楽しい」もあるんだけど、それだけじゃなくて「お父さんが転んだから娘として楽しい」も味わっている。娘に自分の意識が憑依している。

赤ちゃんは自分と母親の自我が分かれていない(母親と自分がべつの存在であることがわからない)と聞いたことがあるけど、親もまたある部分では子どもと同一だと思っているんじゃないだろうか。

これは人生のやりなおしだ。



そうは言っても、娘はマリオとちがって思ったとおりに動かない(ぼくはゲームがへたなのでマリオも思いどおりに動かせないけど)。
今は四歳だから「こうやったら楽しいだろうな」とか「こう云われたら怒るだろうな」とかなんとなくわかるけど、もっと大きくなってきたら意識の差はどんどん大きくなっていくのだろう。

思春期以降、「親が口うるさい」と感じることが多くなるけど、たぶんそれは子どもにとっては親は完全にべつの存在であるのに対して、親にとってはまた子どもが自分と分化されていないからだと思う。
反抗期の問題って子ども側の問題(子どもが成長の過程で不安定になる)として語られているけど、もしかすると原因は「子どもが自分とはべつの存在だということを受け入れられない親」のほうにあるんじゃないかな。



親が子どもに口うるさく云うのは、自分の人生をやりなおしているからだと思う。

もし人生のやりなおしができたら。
「もっと勉強しとけばよかった」と思う人は人生をやりなおしたら勉強するだろう(たぶん長続きしないけど)。学生時代の自分に会えたら「ぜったいに勉強しろ!」と言うだろう。
そういう人は親になったら子どもに勉強させようとするにちがいない。

「スポーツやっといてよかった」と思う人は人生をやりなおしてもスポーツをやるだろうし、親になったら子どもにスポーツをさせようとするだろう。


ま、ほとんどはどうせ無駄なんだけどね。
勉強しなかった人は何度人生をやりなおしたって勉強しないし、勉強しない親の子どもは勉強しない。

タイムトリップもののSFで「運命は決まっているから何度タイムマシンで昔に戻ってやりなおしても同じ結末になってしまう」ってのがあるけど、あんな感じ。

わかってるんだけどね。
でもやっぱり、自分にできなかったことを子どもに期待しちゃうし、自分がやってきてよかったと思う道を子どもに薦めてしまう。

時代が変わってるから同じことをやってもうまくいくとはかぎらないんだけどね。
英語がしゃべれることが大きなアドバンテージだった時代もあれば、自動翻訳の性能向上により外国語スキルが「電卓が普及している時代の暗算スキル」程度に下落してしまう時代もあるわけで(外国語会話能力に価値がある時代はあと数年だろうね)。
でも親の意識は「自分の人生のやりなおし」だから、ついつい「この先どうなっているか知っている未来人」の立場でアドバイスしちゃうんだよね。
縄文時代ならいざ知らず、社会は常に変化してるってことを忘れて。

いや、縄文時代の親だって「悪いこと言わないからお父さんと同じように縄の跡つけた土器をつくりなさい。そんな薄くて軽い弥生式を作ろうとしてもうまくいくわけないだろ」みたいな時代錯誤なアドバイスをしていたんだろうな。


このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿