2017年11月27日月曜日

血圧計がこわい

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血圧計がこわい。
ポンプでしゅっしゅっってやる手動のやつじゃなくて、機械の筒の中に腕を入れて自動的に測定されるタイプの血圧計。

怖くないですか。あの腕をぎゅーっと締めつけてくるロボ。
もちろんこっちも「締めつけられるぞ」と覚悟して血圧計に対峙するんですけど、「これぐらいの強さで締めつけてくるだろうな」という想定の五割増ぐらいの力で締めつけてくる。毎回。毎回五割増。「五割増でくるぞ」と身構えているのに、さらにその五割増で締めつけてくる。

あんなに強く締める必要ある?
体温計を見てみなさいよ、腋の下にはさむだけ。つかずはなれずの適切な距離を保っている。
ところが血圧計は想定の五割増でぎゅーっですよ。アメリカ人の握手かってぐらいの強さ。いやアメリカ人にだってあの強さで握ったらファックとか言われちゃうよ。

隙あらばこっちの腕を砕いてやろう、みたいな意思を感じる。ほんとほんと。
医者とか看護師とかが近くにいるときはおとなしくしてるけど、もしも密室で血圧計と一対一だったらあいつは何してくるかわからない。そんな怖さがあるよね。
想像してみて。二畳ぐらいの狭い部屋。窓はない。扉は閉まっている。壁はぶあつくて、こちらの声は外に漏れない。その部屋の真ん中に血圧計が置いてあるの。あなたはそこに手を入れる勇気はある? ぼくはぜったい無理。


病院って命の危険と隣り合わせじゃないですか。
だからぼくは、いろんな検査を受けながら危険を回避するための脳内シミュレーションをおこなっている。
たとえば点滴を受けているあいだ。地震が起こったらどうしようか、と考える。初期振動を感じたら、あいているほうの手で管をつかみ、一気に引き抜く。多少の出血はあるかもしれないが、空気が血管に入るような事態よりはマシだろう。
たとえば採血。この看護師が急に注射器で血管に空気を送りこんできたらどうしようか、と考える。あいているほうの手で腕の根元を抑え、すかさず立ち上がって右足で注射器を蹴りあげ、大声を上げて出口に向かって走る。
万が一の事態にもすぐ対応できるように、ずっとそんなシミュレーションをしている。採血中に鏡で自分の顔を見たことはないが、きっと鬼のような形相で顔で看護師さんをにらみつけていることだろう。

ところが血圧計だけはどうシミュレーションをしても助かる道がない。
もしもこのロボが狂ってすごい力でぼくの左腕を砕きにきたら。
この力でがっちり抑えられたら、ほとんど身体を動かせないに違いない。できることといえば電源プラグをコンセントから引っこ抜くことぐらいだろうが、この位置からはコードに手を伸ばせない。こいつらが叛逆を起こせば、生身の人間に太刀打ちできる術はないのだ。

血圧計の前で人は無力だ。だからせめてぼくの番のときに叛逆を起こさないように、小声で「かっこいい機械ですね」とつぶやいて血圧計様のご機嫌をとることぐらいしかぼくにはできない。


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