ゲーム『スーパーマリオワールド』には、ヨッシーの卵というものが存在する。
この卵、実にカラフルな柄をしている。
白地に鮮やかなグリーンの斑点。
遠目に見ても、ヨッシーの卵だということがすぐわかる。
はたして、これは何のためだろうか?
卵が派手であることは、どう考えても、生存競争をする上で不利である。
卵というものは自走ができないため外敵に対して無防備であり、かつ栄養豊富であるため外敵からは狙われやすい。
卵が危険にさらされることは、すなわち種族の繁栄の危機である。
そのため、通常は卵が外敵から目立たない方向に進化圧がはたらく。
目立たない卵は生存に有利であり、逆に目につきやすい卵を産む個体は淘汰されて遺伝子を残すことができない。
結果として目立たない卵ばかりになる……はずだ。
なぜヨッシーは派手な卵を産むのか。
仮説1)
進化圧となるような外敵が存在しないのではないか。
外敵がまったく存在しない環境であれば卵はどんなに派手でも問題はない。
→ 反証)
『スーパーマリオワールド』の舞台となった「恐竜ランド」には、あたりかまわず攻撃をしかけてくる凶暴な生物が多い。
仮説2)
親が卵をつきっきりで保護するので柄は問題ないのではないか。
ワニのように、十分に強い親が卵を守るのであれば、仮に卵が外敵から目をつけられたとしても手出しはされない。
→ 反証)
プレイしたことのある人ならわかるが、卵が出現する場所の付近にヨッシーがいることなどない。
ヨッシーはたいていの爬虫類と同じく、子育てをしない。
仮説3)
卵を大量に産むので、少々の犠牲は問題ないのではないか。
マンボウは一度に数億個の卵を産むが、そのうち成魚になるのは数匹だけである。この数打ちゃ当たるシステムを採用しているのではないか。
→ 反証)
たしかにヨッシーは数多く卵を産むようだ。恐竜ランドのいたるところにヨッシーの卵が産みつけられている。
この仮説はなかなか有力そうだが、問題は、卵から孵ったばかりのヨッシーが成獣の半分くらいのサイズだということだ。
自身の十分の一以下のサイズの赤ちゃんを産むのでも、人間のお母さんはあれだけ苦労しているのだ。いくらヨッシーが大食いだとはいえ、成獣の半分サイズの卵を産むのには非常に大きなコストとリスクが伴うはずだ。
数打ちゃ当たる戦法は通用しない。
仮説4)
卵が外敵に食べられやすくなるというデメリットを上回るほどのメリットが存在するのではないか。
→ アブラムシは、甘い汁を分泌し、アリを集める。
アリはアブラムシから汁を吸わせてもらう代わりに、アブラムシの天敵であるテントウムシを追い払う。
同じようにヨッシーも、あえて目立つ卵を産むことで他の生物、すなわちマリオを惹きつけようとしているのではないか。
先ほども説明したとおり、ヨッシーは子育てをしない。また、恐竜ランドには危険な外敵が多数生息している。
この過酷な環境で生存するために、ヨッシーはマリオという生物種を利用する道を選んだのではないか。
ヨッシーはマリオの足となり、代わりにマリオは外敵からヨッシーを守る。
このような共生関係を保つためには、遠目からでもマリオの目につきやすいデザインの卵は都合がよかったのだろう。
遺伝子を残すために他の生物の習性(姫を助けに行きがち、という習性)を利用する。
たくましくもしたたかな生物としての戦略が、ここにはある。
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