2016年1月24日日曜日

【エッセイ】世界三大がっかり料理 ~チーズフォンデュ編~

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「三大がっかり料理」を選ぶとしたら、あたしは
・チーズフォンデュ
・パエリア
・駅弁
を推薦する。

まずチーズフォンデュ。

あたしはチーズが好きだ。とくに熱いチーズには目がなくて、居酒屋で「とろとろチーズの焼きトマト」みたいなメニューがあったら、迷わず注文する。ぜったいに頼む。おなかいっぱいでも頼む。頼んでから後悔する。
でも、とろとろチーズを頼んだことは後悔しない。とろとろチーズを食べる前におなかいっぱいにしてしまったことを悔やむ。
それぐらいとろとろチーズが好き。
とろとろチーズはいつだって正しい。

そんなあたしだから、はじめてチーズフォンデュという料理の存在を知ったときのことは今でも覚えている。
そう、あれは高校1年生の冬だった。
テレビで観たチーズフォンデュと一目で恋に落ちたあたしは、 うれしさを通りこして不安になった。不安のあまり、当時中学生だった弟を蹴飛ばしてみた。弟の「いてえ。なんだよ」という不機嫌な声を聞いて、やっと現実世界に戻ってこられた。
それぐらいチーズフォンデュというのはあたしにとって衝撃的な食べ物だった。

だって、好きな食材を、好きなだけとろとろチーズに浸けて食べていいのよ。
極楽かっ!
地獄では鬼が亡者を釜茹でにしてるその一方、極楽では天使たちがきゃっきゃ云いながらチーズフォンデュを楽しんでいる。


そんな光景があたしの脳裏に浮かんだ。

でも、あたしがチーズフォンデュ様に心を奪われてから、実際に食べるまでにはじつに3年を要した。
なんせあたしが育った田舎町にはチーズフォンデュなんてこじゃれた料理を出す店なんかなかった。せいぜいナポリタンがミートソーススパゲティかオムライス。ケチャップかけときゃ洋食だと思ってやがんのよ。

だから都会に出てきてこじゃれたバーで「チーズフォンデュ」の名前を見つけたときは小躍りした。「欣喜雀躍!」って声に出して叫んだ。
もちろん即座に注文した。
こじゃれたバーだからみんな静かに女を口説いたり男に口説かれたりしてんのに、あたしだけ寿司屋の常連ぐらいのテンションで「へいマスター、チーズフォンデュ一丁!」って。
バーのマスターも釣られて「あいようっ!」って言いかけてた、きっと。

それなのに。
嗚呼、それなのに。
はじめて食べたチーズフォンデュは。
夢にまで見たチーズフォンデュは。
イマイチだった。

なんだろう。たしかにチーズはとろとろなのに。好きな食材を好きなだけチーズにからめて食べてもいいのに。
なぜだかあんまりおいしくない。

その店のチーズフォンデュが悪いのかと思った。
しょせん気どったバーだもんね。
ちゃんとしたとこで食べたらちゃんとおいしいはず。
そう思って、イタリアンレストランにも行ってみた。チーズフォンデュを食べるために。
でもやっぱりもうひとつ。

いや、決してまずいわけじゃない。どっちかっていったらおいしい。

でも。
 
でも。

こんなもんじゃないだろチーズフォンデュ!
おまえはもっとやれる子だ!
「OLが選ぶ かばんに入れて持ち歩きたい料理 ベスト3」に入ってもいいぐらいのポテンシャルは持ってるはずだ!

食べるたびにそう吠えるのだけれど、あたしの咆哮はチーズフォンデュには届かず、毎回期待を裏切られてばかり。
いまだに、これはうまい! と思えるチーズフォンデュに出会ったことはない。

思うに、カマンベールとかゴーダとかグリュイエールとかのしゃれたチーズを使っているのが、あたしの舌にあわない理由なんだと思う。
グリュイエールだかアリエールだかしらないけど、そんな高いチーズはあたしの安い舌は受けつけない。
もっとやっすいやつでいいのよ。ピザ用のとろけるチーズとかで。
あとワインも入れなくていい。昆布だしでいい。あっ、おいしそう。

昆布だしととろけるチーズのチーズフォンデュ、これぜったいおいしいわ。
誰かやってみて。

あたし?
あたしはやらない。
だってチーズフォンデュって、死ぬほど皿洗いがたいへんそうだもの。
チーズフォンデュを考案したのって、自分では洗い物しないやつだよぜったい!


~パエリア編に続く~ このエントリーをはてなブックマークに追加

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