毎年恒例、2025年に読んだ本の中からベスト10を選出。
なるべくいろんなジャンルから。
順位はつけずに、読んだ順に紹介。
来年もおもしろい本に出会えますように……。
DNA分析を使って古生物の生態について調べる分子古生物学者の取り組みを紹介した本。
新書ではあるものの、専門用語もばんばん出てくるので、素人にとって決して読みやすい本ではない。たぶんこれでも平易に書いてくれてはいるんだろうけど……。
大昔の生物のことを調べるなら化石を調べるしかないだろう、とおもっていたけど、それは素人の考え。原生生物のDNAを調べることでもう絶滅した生物の遺伝子を突き止める。そんなことができるんだー(どうやってやるかは、正直読んでもよくわからんかった)。
新書にしてはずいぶん読みにくい本だとおもっていたら、あとがきを読んで著者の意図がわかった。
科学の本というより科学史の本だったんだよね。○○と考えた人がいたけどこの考えは間違いだった、かつては××と思われていたけどその後の研究で誤りだったことがわかった……という「失敗史」に多くのページが割かれている。
こういう「100回やって99回失敗」こそが研究者のリアルであり、それに耐えられる人しか成功しないんだろう。だから初学者に向けて「かんたんに世間をあっと言わせる研究結果が出るとおもうなよ」という戒めを込めてこの本を書いたんだろうけど……。
正直、ぼくのように研究の道に進みたいわけではなく、「ただおもしろい研究結果だけ知りたい」という人にとってはあんまりおもしろい本じゃなかったな。
「あーもしもし。何年か前に、そちらの市役所に電話して『クマを殺すな。かわいそうだろ。人間のエゴで動物を殺すな!』ってクレーム入れた者だけど。
ニュース見てて、おれの考えがまちがってたことに気づいたよ。ほんとに申し訳なかった」
「嘘つけー! 縁もゆかりもない役所にクレームの電話するやつが己の過ちを認めて反省できるわけないだろー!」
「りんごを収穫するところを思い浮かべてください」と言うと、りんごが木になっているところをイメージできる。
だが「桃を収穫するところを思い浮かべてください」だと、頭に浮かんでくるのは桃が川から流れてくる映像だけ。
役者をやってる子どものことを「子役」と呼ぶのは変じゃないか?
「悪役」は悪人を演じる役者、「刑事役」は刑事を演じる役者のことだ。
であれば「子役」かどうかは「芝居による」としか言いようがない。
30歳でも子どもを演じていれば子役だし、逆に5歳でも大人を演じていれば子役ではない。
役者をやってる子どものことは「子役」ではなくちゃんと「ジャリタレ」あるいは「激イタ親持ちガキ」と呼ぶべきだ。
長年いろんな人間を見てきて得られた真理のひとつに「返事がいいやつはだめなやつ」というものがある。
こちらが何かを注意したときに「はい!」と気持ちいい返事をしてくるやつ。打てば響く、というやつだ。そういうやつは同じ失敗を何度もくりかえす。
なぜなら何も考えずに返事をしているからだ。「この人はどういう意図でこんな注意をしているんだろう」とか「おれの考えとこの人のやり方は違うんだけどなあ」とか「いやそれ逆にあんたがまちがってるだろ」とか何も考えずにとりあえず「はい!」と返事をするくせがついているのだ。
ある種の部活ではこういう人間を育成している。
カーペンターズに『SING』という曲がある。これはカーペンターズのオリジナルではなく、セサミストリートで用いられていた曲のカバーらしい。
これは完全に想像なのだが、きっとカーペンターズが営業の仕事で子どもが多い現場に行って、なかなか曲を聴いてもらえなくて苦労して、子どもウケするようにセサミストリートの曲を歌いはじめたんじゃないだろうか。
以前なんばグランド花月に行ったとき、春休みだったので子どもや学生の客が多く、2丁拳銃が童謡をテーマにした漫才を披露して爆笑をとっていた。きっとカーペンターズも同じことをしていたにちがいない。
同僚の女性が「Googleで『秋服コーデ』で検索するとレディースファッションばかりが表示される。Googleはちゃんとユーザーが女性であることを認識しているんでしょうね」と言っていた。
半分正解だが半分間違いだ。なぜなら秋服とは女性だけが持つ概念で、男の服に秋服なんてものは存在しないからだ。
男の服には夏服と冬服しかない。より正確に言えば半袖と長袖があるだけだ。
夏は半袖。秋は長袖。秋服にアウターを羽織ったら冬服で、冬服からアウターを脱いだら春服だ。
2人用対戦カードゲーム。
カードの枚数はたったの16枚。同じカードは2枚としてなく、それぞれが異なる効果を持っている。それぞれ「ライフ」を4ポイントずつ持っており、カードを交互に出して相手のライフを0にした方の勝利。
相手のライフをなくすゲームだが、相手のライフを削ることのできるカードは意外と少なく4枚しかない。相手に2ダメージを与える『そらとぶナイフ』、毎ターン相手に1ポイントを与える『こどもバハムート』、受けたダメージを相手にはねかえす『はねかえしゴブリン』、そして一度に4ダメージを与えることのできる『はらぺこバハムート』だ。
一撃必殺の『はらぺこバハムート』を出せば勝ちじゃん! でもまあそうかんたんにはいかないんだろうな。
そのとおり、あたりまえだがかんたんには一撃必殺は決まらない。まず『はらぺこバハムート』は手札から直接出せない。他のカードと交換する、捨て札から復活させる、などの手段をとる必要がある。首尾よく『はらぺこバハムート』を出しても、ダメージを与える前に相手に「モンスターを葬る」カードを使われてしまうこともある。
さらにこのゲームを複雑にしているのが「打ち消しの書」というアイテム。相手の出した札を無効化することができるアイテムだ。さらに「打ち消しの書」を2つ消費することで、「相手の打ち消しを打ち消す」という荒業を使うこともできる(「打ち消しの打ち消しの打ち消し」はできない)。
この「打ち消しの書」が強力なので、序盤~中盤は「いかに相手に打ち消しの書を消費させるか」の攻防がくりひろげられることになる。
「いかにダメージを与えるか」ではなく、「いかに相手がダメージを防ぐ方法を削れるか」の戦いだ。なかなか奥が深いじゃないか。
最初は攻撃のことばかり考えてしまうが、何度かやっているうちに防御の重要性に気づく。将棋の初心者が「どうやって詰ますか」を考えてしまうのに対し、中級者が「どうやって守りを固めるか」と考えるのにも似ている。
そう、味わいがけっこう将棋に似ているのだ。
もちろんカードゲームなので運には左右されるが、おもっていたよりも運の要素は小さい。
カードは全部で16枚しかなく、自分が数枚持っていて、捨て札にも何枚かあるわけだから、相手が持っているカードはある程度見当がつく。おまけに「相手の手札を見る」「山札をすべて見る」といった効果を持つカードもあるので、相手の手札がだいたい把握できる。なので「たぶん相手はあのカードを出してくるから、そしたらこれを出す。すると相手は取り消しの書を使うだろうから……」と数手先を読む思考が求められる。
自分の読み通りに相手が動いてくれて勝つことができればうれしいが、運の要素もあるので必ずうまくいくとはかぎらない。「相手があのカードさえ引かなければ勝てる!」という局面で、まんまとそのカードを引かれて負ける、なんてことも起こる。
このバランスが絶妙で、子どもと遊ぶのにちょうどいい。子ども相手に本気でやってもけっこう負ける。でも運任せでもなく、戦略を持って戦えば勝率は上がる。
1ゲーム5~10分ぐらいで手軽なのに、おもっていたより奥が深い。対象年齢10歳以上なだけはある。
軽く、でも頭を使ったゲームをしたいときにおすすめ。