松原 始
カラス研究者によるカラスの本。
おもしろかった。
こういう「自分の生活にはまったく影響ないものに人生を捧げている人の本」にはまずハズレがない。
伊沢 正名『くう・ねる・のぐそ』とか。
都会にも住んでいるし、日本ではハトと並んで人間にいちばん近い鳥だ。
どこにでもいるのかとおもっていたらそうでもないらしい。日本のすぐ近くでも、香港や韓国には街中にカラスがあまりいないのだとか。
日本は世界有数のカラス大国なんだそうだ。だからなんだって感じだけど。
すごく身近な存在なのに、嫌われているカラス。
ま、近いからこそ嫌われているのかもしれないな。
ゴキブリだって山にしか生息していなければあそこまで嫌われることないだろうし……。
ぼくもあまりいい印象は持っていなかったが、この本を読んでカラスのことがちょっと好きになった。
あまりに著者がカラスのことを魅力的に語るんだもの。
読めば読むほど、都市のカラスの生活に人間の存在が深くかかわっていることがわかる。
ある日突然人類が死に絶えたら、都市に棲んでいるカラスもばたばたと死んでしまうかもしれない。
『カラスの教科書』によると、カラスは芋をあまり食べないが肉じゃがやフライドポテトや焼き芋は好きなんだそうだ。また米は好きじゃないけどご飯はよく食べるとか。
もう人間の味覚になっている!
都会はゴミが多いので、野山よりもずっと多くのカラスが棲めるらしい。
「人間が住み着いたので動物が追いやられる」ということが多いが、カラスに関しては逆で、人間がいるからこそ生きやすくなる。
もちろん人間に駆除されたり交通事故に遭ったりもするわけだが、それを差し引いても人間の近くにいることはカラスにとってメリットが大きいのだろう。
人間にとってもメリットがないわけではない。
ゴミを漁るので嫌われるが、カラスは片付けもしてくれているのだそうだ。
そもそも、ゴミを漁るなっていうのもずいぶん勝手な話だよなあ。
食べ物をそのへんに放りだしておいて「勝手に持っていくんじゃないぞ」って言ってもなあ。
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カラスは文字が読めるとおもっている人からのメッセージ。
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カラスをこわがる人も多いが、カラスのほうがずっと人間をこわがっている。
なぜならまともにやりあったらぜったいにカラスが負けるから。
そんなに軽いのか……。
アフリカゾウの体重が約6トン(成人男性の約100倍)だからカラスから見たヒトは、ヒトから見たゾウぐらいの重量だ。めちゃくちゃ怖いだろう。
アニメ版の『ゲゲゲの鬼太郎』で鬼太郎は数十羽のカラスに持ちあげられて空を飛んでいたが、数十羽集まってもせいぜい30kgぐらい。
人間ひとりを持ちあげて空を飛ぶのは相当きつそうだ……。
鬼太郎がめちゃくちゃ軽いという可能性もあるが、原作では鬼太郎が力士になって活躍したりしていたのでその可能性は低そうだし。
『カラスの教科書』によると、カラスが人を襲うことはめったにないらしい。
「巣にヒナがいるときに人間がなわばりに入ってきて、警告音を出しても立ち去らないときにだけ威嚇する」程度なんだそうだ。
まあゾウとヒトぐらいの対格差があったら、一対一で攻撃をしかけようとはおもわんわな。
だが他の鳥を襲うことはあるそうだ。
ひい、たしかにこれはビビるな……。
〝背中に乗ってハトが死ぬまで首筋をガッツンガッツンとつつき、最後は頭をくわえてひきちぎってポイと捨てていた〟だもんな……。
幼少期に目撃したら一生トラウマになりそうな光景だ。
しかしタカが小鳥や小動物を狩ったりする光景にはそこまでの残忍さは感じない。
一撃必殺で仕留めるより、じわじわなぶり殺しにするほうが残虐に見えるのだ。殺されるほうからしたらどっちも同じなんだろうけど。
そういや殺人事件でも〝めった刺し〟というと残虐な印象を受けるが、あれはたいてい「生き返って反撃されるかも」という臆病さによる行動らしい。
ほんとに残忍な殺人犯はもっと手堅く殺す、とどこかで聞いたことがある。
ただ「カラスは弱いから死ぬまで首筋をガッツンガッツンとつつくんだよ」と言われても「じゃあ許せるね」となるかどうかはまた別の話で……。
なるほどー。考えたことがなかったけど、言われてみればたしかにそうだね。
すごく強いとか、めちゃくちゃ速く飛べるとか、樹の中にいる虫をとれるとか、これといった特徴はカラスにはない。
なにかに特化したやつはその状況では強いけど、環境が変われば生きていけない。
だが全部そこそこやれるカラスは、環境の変化にも強い。だからこそ森林が都市化されても適応して生きていくことができた。
真っ黒い色が特徴的なので目がいきがちだが、じつはカラスはごくごく平凡な鳥なのかー。
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