はじめて胃カメラをやった。
これまで健康診断ではバリウム検査をやっていたのだが、あのゲップを我慢しながらぐるぐる回される刑罰(としかおもえない)や、その後の下剤や、その後のバリウムかちかち石膏ウンコなどが嫌になったので、今年は胃カメラにしてみたのだ。
胃カメラは痛いよ、苦しいよ、と聞かされていたのでびびりながら検査を受けてみた。
結論からいうと、胃カメラ検査は、楽しかった。
まず看護師さんがよかった。
年齢は六十歳ぐらい、小太りをやや超えて中太りぐらい、声がでかくて元気のいいおばちゃん、つまり「ザ・ベテラン看護師さん」タイプだ。
ふだんは若い女性に鼻の下をのばしてしまうぼくだけど、こと看護師さんと鍋釜に関しては古いほうがいい。きっとこのおばちゃん看護師は、あらゆる死線をくぐってきた百戦錬磨の老兵にちがいない。安心して胃を任せられる。
そして、胃カメラ担当の医師が妙に陽気な人だった。なんだかわからないけど、胃カメラを入れることを楽しんでいるというタイプだった。
この人がぼくの鼻に胃カメラを押しこみながら「はい奥に入っていくよ~、ちょっと力入ってるね~、おっと力抜けたね、いいよ、上手だよ~、はい、食道とおりま~す、それから胃、まもなく十二指腸が見えてきま~す、もうまもなくいちばん奥に達しますよ~」とハイテンションでガイドをしてくれるのだ。まるで観光バスのバスガイド。もしくは遊園地のアトラクションのナビゲーター。これから楽しいイベントが待ち受けているかのように胃カメラの旅を盛り上げてくれるのだ。
じっさい、なんだか楽しくなってくる。眼の前にはモニターが置かれていて、胃カメラがぼくの体内を旅する様子が確認できる。ドラえもんのエピソードで、ママの大事な指輪を飲み込んでしまったしずかちゃんの体内に小さくなったドラえもんとのび太が入っていくというエピソードがあるが、それをおもいだす。USJとかのアトラクションで『ミクロの決死圏』として胃カメラ検査をやってもいいかもしれない。
もちろん鼻にチューブをつっこまれるのは痛かったし人前でよだれをだらだら垂らすのは人間の尊厳を失わしめるものではあったが、苦痛を上回るワクワクドキドキをナビゲーター医師が与えてくれた。
あの医者に個人的ノーベル医学生理学賞を贈呈したい。
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