2019年8月2日金曜日

けったくそわるい

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「けったくそわるい」という言葉がある。

たぶん関西弁。
意味としては、不愉快だ、胸くそ悪い、反吐が出そうだ、虫唾が走る、といったところだろうか。強い嫌悪を表す言葉だ。

用例としては、
「けったくそとは漢字で書くと[卦体糞]。[卦体]とは元々……なんてインターネットで三十秒で拾ってきた蘊蓄をならべてえらそうにすなや、けったくそわるい!」
のように使う。

ぼくは関西で生まれ育ったのでときどき耳にする。若い人やきちんとした身なりの人はあまり使わない。
昼間からハイボールを飲んでいるおじさんが口にする言葉、というイメージだ。

ただでさえお近づきになりたくない人が不快感をあらわにしているわけだから、「けったくそわるい」という言葉を聞いたらとるものもとらずにすぐその場を離れたほうがいい。「海辺で地震が起きたら高台に向かって走れ」と同じだ。


危険をあらわすシグナルではあるが、ぼくはこの「けったくそわるい」という言葉が好きだ。
なぜなら、「けったくそわるい」という言葉自体にけったくそわるさがにじみでているから。

「けったくそわるい」とつぶやいてみてほしい。
吐きすてるような言い方になるはずだ。「けっ」で痰がこみあげてきて「たくそわるい」でそれを吐きだすようなイメージ。

「けったくそわるい」と口にしたとき、自然にしかめっつらになるはずだ。
「けったくそわるい」と言いながら笑顔にはならないはずだ。


発声と身体動作が結びついている言葉はほかにもある。

「にやにや」というとき、自然と顔がにやにやしてしまう、とか。

「のらりくらり」と口にするときは無意識に顔の力が抜ける、とか。

「COOL」とつぶやくと体温が少し下がる、とか。

「クラムチャウダー」と言うと口の中でクラムチャウダーができる、とか。

「けったくそわるい」の顔

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