2017年5月4日木曜日

昭和18年の地図帳ってこんなんでした

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妻の祖父の遺品を整理していたら、戦時中に発行された地図帳が出てきた。

今の地図と見比べてみるとおもしろかったので、画像を載せてみる。

(ぼくのコメントには誤った知識もあるかもしれません。お気づきの方はコメント欄でご訂正いただけるとありがたいです)

表紙。『新選大地圖 外國篇』

奥付

昭和18年7月発行。

太平洋戦争まっただなかの、戦局が悪くなってきた頃だね。

この頃は国境がめまぐるしく変わってたはずだから、地図帳を作る会社はたいへんだったろうね。



刊行は中等學校教科書株式會社。

旧制中等学校ということは、今の高等学校に相当。

ただし中等学校への進学率は10%前後だったそうなので(Wikipedia)、今でいうと大学院を出ている人ぐらいの高学歴といっていいでしょう。



定価は1円30銭。

岩瀬 彰 『「月給100円サラリーマン」の時代』 によると、昭和10年前後の物価は2,000倍して考えるとよいとのことなので、1円30銭は今の2,600円ぐらい。

けっこう高いね。

でも今でも大学のテキストは数千円するのがふつうだから、そんなもんかな。


国旗と帝国支配図



国旗。

表紙はぼろぼろになってるけど、中はカラーできれい。

まだ物資不足がそこまでひどくなかったのかな。



おお、ナチスの鉤十字!

映画や漫画でしか見たことなかったから、こうやって地図帳で見ると「ほんとにあったんだなあ」と思ってしまう。

あったんだなあ。あたりまえなんだけど。


イタリアも今とはちがうね。

今は共和国だけどこのころは王国だったんだね。ムッソリーニ!




80年代生まれのぼくにとっては、ソ連の旗はぎりぎり見覚えがある。

日本は日本帝國なんだね。


中華民国の旗はすごいね。「和平 反共建國」って書いてある。

国旗にこんなに思想の強いメッセージを書いていいんだ。

残念ながら「反共」の夢はかなわず、この後中国共産党に敗れるんですが。



アメリカの国旗も今とは微妙に違うね。星の配置が。

このころはアラスカやハワイがなくて、48州だったそう。

国々が「どの帝国の植民地か」を色分けした地図。

特に東南アジアやアフリカの植民地化されっぷりがすごいね。

これだけ帝国主義の世の中だったら、日本が「うちも植民地持たないと!」って気持ちになっちゃうのも無理ないような気もするなあ。

「みんなが株で儲けてる」って聞いたら「よくわかんないけど株買ったほうがいいかも!」ってなるような感じかな。


東アジア

アジアの地図。

(拡大)極東
今とはまったくちがうね。

朝鮮半島や台湾は日本領だし、中国は中華人民共和国じゃなくて中華民国。

満州国もけっこうな大きさを占めてる。


中国とモンゴルの間に「蒙古聯合」ってのがあるね。

中華民国の傀儡政権があったらしいんだけど、学校で習った記憶がないなあ……。

今の東アジア(Google Mapより)


東南アジア

(拡大)東南アジア

ベトナム・ラオス・カンボジアは、フランス領インド支那。

インドネシアは、オランダ領東インド。

マレーシアは、イギリス領(この頃は日本占領下かな?)

バングラデシュ・パキスタンも存在しないね。インドの一部みたい。

これだけ帝国主義の嵐が吹き荒れているのに、小国のブータンやネパールは独立国なんですね。

内陸部だったから狙われにくかったのかな?

今の東南アジア(Google Mapより)



中東

中東


レバノン、ヨルダン、そしてイスラエルの独立前だね。

シリアはあるけどフランス領みたいです。

アラブ首長国連邦もないんだね。トルシァル オーマンって書いてある。


エルサレム付近は、この地図だとどこの領地になってるのかよくわからないね。

イギリスの三枚舌外交」とやらのせいでややこしくなってたところだったからかな。

今の中東(Google Mapより)


ヨーロッパ

ヨーロッパの地図

(拡大)中央ヨーロッパ

チェコとオーストリアはドイツの一部、ポーランドも「独ソ分割線」によって分断されてる。

あとは東欧がソ連の一部なのと、ユーゴスラヴィアが分裂前なのを除けば、意外と国境線は今と変わらないね。

もっとドイツが大きくなってるのかと思った。

昭和18年だと、もうアメリカも参戦していてドイツの勢いが弱まっていた時期なんだね。

今のヨーロッパ(Google Mapより)


アフリカ

アフリカ

最後にアフリカだけど、このころのアフリカ大陸はほぼ全土がヨーロッパの帝国の植民地化にある状況だね。

独立国だったのは(赤字で書いているところ)はエジプトとリベリアだけかな?

今のアフリカ(Google Mapより)



北米、南米、オセアニア、南極


今とあんまり変わってないので割愛。

気が向いたら第2回やるかもしれない(『日本篇』の地図帳もあるし)。



地図って大事


学生時代、歴史が苦手だった。

理由のひとつに、位置関係がよくわからなかったということがある。

「ナポレオンはスペインからポーランドまで支配下においた」 
「チグリス川とユーフラテス川の流域に栄えたメソポタミア文明」

なんて記述を読んでも、地理も苦手だったのでどのぐらいの広さなのかぴんとこなかった。

ポーランドがどこかわからないし(いまだにときどきポルトガルとごっちゃになる)。

たまに教科書に地図も載ってたけど、ごく一部の、それも昔の地図を見ても、結局位置関係はうまくつかむことができなかった。



歴史の教科書には年表がついているけど、年表よりも地図があったほうが理解の助けになるんじゃないかな。

各年代ごとの地図を用意しようと思ったら地図帳が何百冊も必要になるけど、今ならパソコンでかんたんに見ることができる( GeaCron とか)。

右モニターに教科書、左モニターに地図、みたいな歴史の授業をやったらすごく理解が進みそうだなあ。





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