自分ができの悪い人間であることを知っているから、とても他人に偉そうなことなんて云えない。
先週、本格的に説教を施した。
ふだん叱らないぶん説教するときのぼくはとてもしつこい。
叱った相手は同僚のAさん(30代女性)。
「考えられないっ!」
「すみません」「そういうことしますか。社会人、いや人間としてぜったいにやっちゃいけないことでしょう」
「すみません。つい……」「ついで済まされることじゃないですよ、会社の冷凍庫のアイスクリームを勝手に食べるなんて!」
「犬犬さんのって知らなかったから……」「だとしても食べちゃだめでしょ。自分以外の人が買ったアイスは」
「はい、反省してます」「ぼくだって、ただのアイスクリームならここまで云いませんよ。でもハーゲンダッツですよ、ハーゲンダッツ。ハーゲンダッツっていったら税法上は固定資産ですよ」
「いやそれは……」「言い訳しない!」
「でも、冷凍庫の奥の方にあったから、誰かがずっと前に買って忘れてるのかと思ったんですよ」「ピノとかスイカバーならそういうこともあるかもしれません。でもハーゲンダッツ忘れますか? 結婚記念日忘れても、ハーゲンダッツの存在は片時も忘れないでしょ」
「結婚記念日も覚えといたほうがいいですよ」「今はそんな話してるんじゃないんです。まだね、百歩譲ってですよ、バニラ味とかストロベリー味なら忘れることもあるかもしれません。『ミニカップ・マルチパック 6個入』を買って1個忘れるってことはありえます。でもあなたが食べたのはマカデミアンナッツ味ですよ! マルチパックにマカデミアンナッツ味が入ってないことぐらい常識じゃないですか。つまりこれはマカデミアンナッツ味を食べたくてわざわざ買ってきたものだってことぐらい、ちょっと考えればすぐわかるでしょうよ!」
「たかがアイスの1個なのにすごく理屈っぽいな……」「たかがとはなんですか。これ、夫婦間でやったらまちがいなく離婚事由になりますよ!」
「すみません、買って返しますんで」「そういうことじゃないんですよ! 見てください、この紅茶。たった今淹れた紅茶です。さあ今からティータイムだと思って紅茶を用意して、うきうきしながら冷凍庫を開けたらからっぽ。この絶望感、わかりますか!? ぼくがなんのために仕事をしてると思って……」
と長々と説教をしていると、上司から
「犬犬くん、長くなるようならその話は仕事終わってからにして。それとあんまり仕事中にアイスクリーム食べないように」
と叱られた。
叱っていたはずがいつのまにかぼくが叱られている……。
やっぱり、説教は苦手だ。
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