井堀利宏
『あなたが払った税金の使われ方
政府はなぜ無駄遣いをするのか』
2001年発行とちょっと古い本だけど、税金について基本的なことを知りたかったので読んでみた。
いきなり話それるけど、「ちょっと古い本」って書いたけど2001年って16年も前か!
おっさんからすると「ちょっと前」ぐらいの感覚なんだけど。
そんなおっさんだけど、確定申告をしたことがないので自分がどれぐらい税金を払っているのか知らない。
会社をやめて無職になったときに住民税の請求がきて
「無職の人間からこんなにとるのかよ!」
と思った記憶があるけど、ふだんは気にしない。
税金が高いと感じたことはない。他の国の税率を知らないし。
だから税額に不満はないけど、もっとうまくとってほしいとは思う。
もっと金持ちからじゃんじゃんとってくれよ、と。
身ぐるみはがすぐらいいっちゃって、と(やりすぎだ)。
庶民とは無縁の贅沢品にもっと税金かけたらいいんじゃないの?
金の延べ棒とか虎の毛皮とか剥製の鹿とかに(金持ちのイメージが貧困)。
でも「贅沢品に多く課税する」というのは、効率性の観点からはけっしていいことではないらしい。
つまり、塩は生活必需品だけど、塩の価格が下がったからといって購入量が増えるわけじゃない。辛いの嫌だし。
逆に高くなっても消費量はほとんど変わらない。
一方、ゴルフのプレーに高い税金を課せばゴルフをやめる人が出てくる。
だから高いゴルフ税をかけても全体的な税収アップにはつながらない。
それより塩に高い税金をかけるほうが(効率よく税収を増やすという観点では)いいということになる……。
うーん、理屈としては納得いくけど心情的には納得いかない話だなー。
また「金持ちにめちゃくちゃ高い税率を課す」ってのも庶民からすると溜飲の下がる話ではあるけど、
- 経済活動を萎縮させてしまう
- 脱税へのインセンティブが強くなる
直感的に受け入れやすい話が、効率的とはかぎらないんだね……。
ポピュリズム系の政治家がよく「公務員の人件費が税金の無駄だから削ろう」と主張する。
この主張も、直感的に受け入れやすいので(公務員以外には)いつも一定の支持を集める。
「どっかで不当にいい思いをしてるやつがいる気がする」
という "おれの暮らしぶりが悪いのは誰かのせい論" の支持者は多い。
「公務員の無駄をなくそう」って、はたしていいことなんだろうか。
それをやって社会全体にメリットがあるかというと、ぼくにはかなり疑問がある。
(一応言っとくけどぼくは公務員じゃない)
"おれの暮らしぶりが悪いのは誰かのせい論" は考えとしては単純で楽なんだけど、それを進めた先にハッピーな未来があるとは思えないんだよね。
足の引っ張り合いになるような気がする。
ぼくが「あんまり公務員叩きをするべきでない」と思うのは以下のように考えるから。
- 公務員の仕事効率を数字で評価しようとしたら監視コストがかさむ。監視コストこそ何も生みださない無駄な費用だから、少なければ少ないほどいい。
- そもそも評価になじまない業務だからこそ民間でなく公共でやっている。
- 叩かれてモチベーションが上がる組織なんてない。
- よく「民間に比べて公務員はもらいすぎ」と言われるけど、公務員は一定以上の学歴を要求され、さらに公務員試験を突破してその職に就いている。求められるレベルが平均より高いんだから民間の平均より多くもらうのはあたりまえだ。
- 公務員にお金を回せば民間にもお金が落ちる。公務員の給与を下げたら民間の給与が上がるなんてことはない。
小さい無駄を根絶しようとするのってかえって大きなコストがかかるんだよね。
必要なものまでカットされるし。
ま、ぼくも役所にいくと「これはもっと効率化できんじゃないの?」って思うことはあるし、評価しようのない無駄があるのは事実だと思う。
これはすごい。穴を掘って埋めるだけで二兆円のGDP増加。夢のような話だ!
どっかの政治家が大好きな「民間では考えられない」ってやつだね。
ここまで極端なことはやらないにしても「穴を掘って埋める」に近いことをやっている公務員はいると思う。
でもそれって、公務員のせいなの?
「合法的に楽して大儲けできる方法」があればみんなやるでしょ?
(そんな方法を知っている方はぼくまでご一報を)
「入試のカンニングを容認したらカンニングが増えて大学全体の学力が下がった。学生のせいだ!」
って大学が言うようなもんでしょ。
いやおまえがカンニング容認するからだろ、としか思えない。
何も生みださずにGDPを増やすことができるんだったら、GDPは政治の目標に使っちゃいけないと思うんだけどね。
税金って、どんな制度にしてもどこかから不満が出るもんだと思う。
いや、どこかから出るなんてもんじゃない。全方位から出る。
税金上げても文句言われるし、下げても不満が出るし、偏らせてもクレームがつくし、まんべんなくとっても不平が出る。
納税者も企業も公務員も納得いっていない。たぶん税務署の人だって納得してない。
「今の税制最高! これで文句なし!」って思ってる人、日本にひとりもいないんじゃない?
必要だということは誰もが理解しているのに、誰もが納得していない制度。
他にこんな制度ないんじゃない?
税金に対する不満って、大きくふたつに分かれる。
・徴収のされ方が不公平
・使われ方が不公平
前者はたぶん永遠に解決しない。
だってみんな「自分以外から多くとってほしい」と思ってるんだから、全員が納得いく方法なんてありえない。
でも使い道の不満が少しでも解消されるよう、著者はこんな制度の導入を提案している。
ふるさと納税制度は市町村を選んで寄付をする制度だけど、それの省庁版という感じだね。
これ、いいねえ。
ぜひやってほしい。
ぼくだったら、軍事費とか今の経済政策とかじゃなく国の借金解消に使ってほしいなー。
あと年金と。
少子化にしても経済問題にしても「将来が不安すぎる」ことに起因してると思うから、「将来への不安を解消する」ことに税金を使ってほしい。
でも年金問題だったら厚生労働省になるわけだけど、厚生労働省にお金を渡しても、目先の票をかせぐために今の高齢者の医療費負担減とかに使われちゃうんだろうな……。
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