杉元 伶一
刊行は1990年。翌年には映画化されている。
タイトルぐらいは聞いたことがあったけど内容はぜんぜん知らなかった。
で、読んでみたわけだけど、なんていうか、おもしろかった。でも小説の内容がおもしろかったというより、変な小説でものめずらしくておもしろかったというか。
なんちゅうか、ずっとドタバタしてる。あんまり説明がない。いろいろとクレイジー。「マスコミ業界をめざして就職活動をする四人の大学生と、その四人のうち誰が最初に内定をもらうかを賭ける後輩たち」というストーリーなのだが、背景の説明もないし、登場人物はみんな変なやつだし、むちゃくちゃなことばかり言っている。
テレビ局や新聞社、出版社などの名前はすべて出てくるのに、急にスパイダーマンが出てきたり、謎の企業が出てきて荒唐無稽な入社試験をしたり、妙に現実的なところと突拍子もないほら話が入り混じっている。
マジックリアリズムってやつかな。
小説としてのうまさとかストーリーの組み立ての妙とかそんなものはまったく気にしないで、とにかくエネルギーだけをぶつけた、って感じの小説。こういうの、嫌いじゃない。読みにくかったけど。
今でこそネットで「素人が書いた情熱だけは感じられる文章」をいくらでも読めるけど、三十数年前はそうとう斬新だったんじゃないかな。
ぼくも大学時代、マスコミ業界を夢見ていた。といっても明確なビジョンを持っていたわけでも、マスコミ業界に進むために一生懸命研究・対策していたわけでもなく、ほんとにただ漠然と「なんかおもしろそう」とおもっていただけだ。まさに〝夢見ていた〟という表現がふさわしい。
もう、まさにこれ。
そうなんだよね。現実と向き合ってないだけなんだよね。ほんとはありもしない己のクリエイティビティを活かせる仕事はマスコミぐらいしかない! ってあさはかな考え。
自分が就活する前に読んでおけば、もうちょっと己の浅慮さに気づけたかもなあ。
ぼくもこういう心境だったなあ、就活してるとき。
「就職したくない理由」ばっかり考えてたんだよね。一生懸命、就職したくない理由を探してた。とにかく社会に出たくなかったんだよな、今おもうと。
何十年たってもモラトリアム大学生の考えはそんなに変わらないね。
話の中にはどっぷり入れなかったけど、時代性が強く感じられて歴史的資料として読むとけっこうおもしろかった。
その他の読書感想文は
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失礼します。ブログ主さんと自分が少しも似てると感じコメントさ背ていただきます。今振り返って就活するなら、お金として割りきれる興味ない仕事にもつきましたか?
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除今だと、職種は選びますが業種は選ばないとおもいます。「どうしてもやりたくない仕事じゃないか」と給与、待遇などで考えるでしょうね。面接でもとりつくろった笑顔で心にもないことを言えるようにはなっているはず(大学生のころと比べると)……。
まさか!返信ありがとうございます。最後の質問ですが、営業とかも別にやってもいいって感じでしょうか?
返信削除いや、営業は選ばないですね。いろいろやった挙句、人と話すのは自分にとってストレスの大きいタスクだとわかったので。
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