政治の話します。
最近の自民党を見ていると、脆弱な組織になったなあと感じる。
ずいぶん平板な組織だと。
トップが右と言ったらみんなが一斉に右を向くような。それって政権与党としてもろすぎるんじゃないのと心配になる。
かつての自由民主党はそうじゃなかった。
党内にいくつも派閥があって、常に何人かは虎視眈々とトップの座を狙っていた(ように思う)。
55年体制が40年近くも続いたのは、党内に有力者を幾人も抱えていて、それぞれがバランスをとっていたからだとぼくは見る。
それが、民主党から政権を奪い返して以降(つまり第2次安倍政権になって)、党内の団結力が高まったように思う。安倍晋三首相の力なのか菅義偉官房長官の尽力によるものなのか知らないけど。
「党内の団結力が高まったのならいいことじゃないか」という向きもあると思う。
たしかにメリットも大きい。
決定はスピーディーだし、党内の調整に余計な労力を使う必要はないし。
会社でもそうだ。
トップのワンマンで動く組織は決定が速い。ビジネスにおいてスピードは大事だから、スピード感のある組織はどんどん業績が伸びる。
でも成長の速い組織は、つぶれるのもあっという間だ。
ワンマン社長のやり方が時代に合わなくなると誰も止められない。そして、状況が悪くなったときにおこなわれる決断は、たいていの場合、悪手である。ひとたび悪い方向に転ぶと、止める力がないから坂を転げるように悪化していく。
業績は悪化し、社内の風通しは悪くなり、有能な人は辞め、労働環境は悪くなり、ますます業績は悪くなる。
ローマ帝国が400年近くも続いたのは、権力がほどよく分散していたからだという話がある。
しょっちゅう暗殺が起こり、政権交代が起こっていた。
物事には必ず善悪の両面があり、暗殺にもそれはいえる。圧倒的に悪いことだけど、いいこともないわけじゃない。
皇帝が暗殺されることが頻発すると「あまり無茶をすると殺される」というブレーキになる。
船頭多くして船山に登るという言葉もあるとおり、頭でっかちな組織は良くない。
けれど、船頭は1人しかいないとしても「いざとなったら船頭の代わりが務まるヤツ」や「船頭に進言できるヤツ」や「船頭のやり方に不満を抱えているヤツ」もある程度いたほうが、組織としては強固になる。
こういう組織は船頭が進路を誤ったときに早めに修正ができるから、「自浄作用がある」とも言える。
かつての自由民主党は、「一枚岩じゃない」のが強みだった。
「政権にしがみつきたい」という点以外は政策もバラバラで、なんでおまえら同じパーティー組んでるんだと言いたくなる状態だったが、今にして思うとそれこそが多様な意見を吸い上げることにつながり、長期政権を支えていたのだろう。
一枚岩ではなく、小岩の集まりが強固な石垣になるように。
強固な石垣 |
ほんの10年ほど前まで、「日本の首相は毎年変わる」と言われていた。
2006年から2011年の6年間に首相を務めたのは7人いた。
1991年~1996年の6年間でも総理大臣は6人いた。
「毎年変わる」は大げさでもなんでもなかった。
トップが頻繁に変わっても、市民の生活は特に変わらなかった。これはすごいことだ。
「どうせ誰がやっても同じでしょ」と思えるのは、強固なシステムが備わっているからだ。
これぞ近代国家と胸を張っていい。
『HUNTER×HUNTER』という漫画に幻影旅団という窃盗集団が出てくる。
「クモ(幻影旅団の愛称)は頭が死んでも手足が生き延びればいい」というセリフが出てくる(実際のクモは頭をとられたら死ぬけど)。
ぼくはあの言葉が好きで、組織というものはある程度の大きさになったらそうあるべきだと思う。
「おれがいないと仕事にならないから」と風邪をおして仕事に出てくる課長は、課を組織する資格がない。
自分が突然死しても、少し混乱しただけで他のメンバーは業務を続けられる。こういう組織を作ることが、リーダーの使命だ。
2000年に小渕恵三首相が脳梗塞で緊急入院したとき、発症からわずか3日後には後任の森内閣が誕生している。ごたごたはあったが、まあそれなりに落ち着いて大きな混乱も生じなかったのは、万が一に備えて森喜朗氏が後釜を狙っていたからではないだろうか。
トップが倒れても、たったの3日で建てなおす。なんとしなやかで強い組織だろう。
ぼくは今の内閣が好きじゃないけど、だからといって民進党や他の野党が政権を握ったほうがいいとは思わない。
共産党にはがんばってほしいけど、政権はとってほしくない(だってあそこは自民党以上に一枚岩だから)。
だから自民党に期待している。
以前のような、自浄作用のある組織に戻ってくれることを。
党内の意見がばらばらで、党内の権力闘争に明け暮れていて、決定の遅い組織に戻ってくれることを切に願う。
ぼくとしては、与党はそんなわけのわからん政党であるほうがずっと信用できる。
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