プロ野球カードゲーム。
ぼくが小学生のとき、死ぬほど遊んだゲームだ。
タカラから発売されていて、1球団が1セットになっていて618円(本体価格600円。当時は消費税3%)。
1セットに、30枚ほどの選手カードが入っていた。
カードの表は、選手の写真と昨年の成績。
じつはここはほとんど意味がない。
大事なのは裏面だが、それについては後ほど説明する。
ぼくが持っていたのは、1993年版の西武、阪神、巨人、ヤクルト、中日、広島。
なぜこの6球団だったのかというと、
・マンガ『かっとばせキヨハラくん』の影響で西武ファンだった
・当時はほんとにセ・パの格差がひどく、パ・リーグにスター選手はほとんどいなかった(イチローが活躍する少し前だ。せいぜい清原、野茂、伊良部ぐらい)
・セ・リーグの中でも横浜は特に不人気だった
というような理由が挙げられる。
その中でもやはり西武ライオンズはお気に入りだった。
93年の西武といえば、黄金期の呼び名にふさわしく、圧倒的な強さを誇っていた。
なにしろその前年、パ・リーグのベストナインは10人中8人が西武の選手、ゴールデングラブ賞も9人中8人は西武だった。
渡辺久、工藤、伊藤勤、秋山、石毛、田辺と後に監督になるほどの選手を6人も抱えており、さらに走攻守三拍子そろった名手辻(1塁走者だったのにシングルヒット一本で本塁生還しちゃうんだぜ)、バントの達人・平野、鈴木健など、いい脇役もそろっていた。
そこにくわえて4番に清原、中継ぎと抑えに潮崎と鹿取。それを智将・森監督が率いているわけだから、ほんとに隙のないチームだった。
話がそれた。あの頃の西武の強さについて語ると止まらなくなるので、このへんでプロ野球カードゲームの説明に戻る。
ゲームの進めかたはこうだ。
プロ野球カードゲームはふたりで対戦する。
守備側と攻撃側がサイコロ(別売)をそれぞれ1個ずつ振る。
出目の合計が7ならファール、6以下の偶数ならストライク、5以下の奇数ならボール(ちなみにこれは何も見ずに書いている。最後に遊んだのは20年ほど前なのにまだ細かいルールまで覚えていることに自分でも驚いた)。
そして2つのサイコロの合計が8以上ならヒッティングとなる。今度は攻撃側が2個のサイコロを振る。
ここではじめて打者カードの裏を使うときがきた。
そこには、出目の組み合わせによるヒッティングの結果が書いてある。
2・6→レフト線2塁打
4・5→サードゴロ
6・6→ホームラン
など。
1・2と2・1は同じものとして扱うため、サイコロの組み合わせは全部で21通り。つまり21通りのヒッティング結果があるわけだが、その内訳は選手によって異なる。
打率の高い選手だと安打になる組み合わせが多い、長距離打者は本塁打の組み合わせが多い、三塁打が発生するのは足の速い選手だけ、など。
さらに選手には走塁のパラメータもあり、「二盗」「犠飛で本塁生還」「一塁からツーベースヒットで生還」などが成功するかどうかもサイコロの組み合わせで決まる。もちろん足の速い選手ほど成功の確率は高まる。
とにかくカードとサイコロだけですべてが決まる、シンプルながらじつに奥深いゲーム。それがプロ野球カードゲームだ。
このゲームにぼくは夢中になった。
友人と対戦することもあったが、ひとりでやることのほうが圧倒的に多かった。
サイコロでほとんどすべてが決まる(意志が入るのは送りバントをするかどうかとか代打を出すかなどの采配の部分だけだ)。だからひとりでやったとしても、どちらが勝つかはわからない。
ぼくは、ひとりで毎日チンチロチンチロとサイコロを振り、6球団によるリーグ戦をおこなった。
各チーム50試合ずつのペナントレースを戦わせ、スコアブックもつけて、首位打者や最優秀防御率などのタイトル争いもおこなった。
スコアを記録したノートは数冊にのぼった。
だが、どんな遊びもいつかは飽きる。
いつしかプロ野球カードゲームにも飽きて、ひとりでサイコロを振ることもなくなった。
そして数年後。
高校数学で『確率』の分野を学んだぼくは、こうつぶやかずにはいられなかった。
「えっ、かんたんすぎる……」
なにしろ毎日毎日サイコロを振っていたのだ。
2つのサイコロの出目の合計が10になる確率が1/12であること、ゾロ目が出る確率が1/6であることなんかは、数多の経験からとっくに導き出していたのだ。
さらに打率や防御率も算出していたので、計算も得意になっていた。
『確率』の分野においては当然テストも満点だった。
楽しく遊べて確率の勉強もできるプロ野球カードゲーム、今では販売していないようだ。
残念でならない。
もしぼくの子どもが将来野球を好きになったら、手作りでプロ野球カードゲームを作ってやろうと思う。
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