ぼくの髪を切っていた美容師が小さな声で「あれ?」って言ったことについてなんだけど。
正直、不安になりましたよ。
まあね。
少々カットをミスっちゃったぐらいならぜんぜんいいですよ。
人間誰しもまちがいはあるしね。
ぼくは嵐のメンバーじゃないから(そう嵐のメンバーじゃないんです)、誰もぼくの髪型なんか気にしてないしね。
職場で女性社員たちから陰で『金正恩』または『総書記』なんてあだ名を付けられない程度であればとるに足らないことです。
問題なのは、美容師の「あれ?」が
「あれ? この人髪切ってみたらこんなにハゲてたんだ」
の「あれ?」なんじゃないかってこと。
ぼくもいい歳ですからね。
戦々恐々としながら毎日を過ごしているんです。
ハゲんじゃないかって。
やっぱりね。
男はみんな震えているわけです。
次にハゲるのは自分じゃないかって。ハゲ軍から赤紙が届くんじゃないかって。
ハゲないためなら悪魔に魂を売ってもいいも思っているわけです。
はっきりいってハゲはガンより怖い。
ハゲがかっこわるいとは言わないけれど、でも無いよりはあったほうがいいよね。
このへんのことを女の人はあんまりわかってないみたいで、うちの妻なんか平気で「ハゲろ!」とか云ってくるわけ。
たとえ冗談でもめったなことを云うもんじゃないよ、ほんとに。
それ、妙齢の女性に「子どもつくらないの?」っていうぐらいのセクハラだからね。
ハゲることの何がおそろしいって、自分に責任がないことだよね。
たいていのデブは自分に責任があるわけじゃない。
でも、髪を染めたりパーマあてたりもせず、海藻類なんかもそこそこ口にしてるのに。
なのにぼくの髪の毛は日々頭皮に別れを告げていってるからね。
こんな理不尽なことがありますかっての。
身に覚えがないのにいきなり逮捕されるようなもんですよ。
それでも僕はやってないってのに。
理不尽といえば。
子どもの頃にぼくが持っていた『ようかいだいずかん 世界のようかい編』に、パックという西洋の妖怪が載っていた。
妖怪ってさ、こどもをしつけるために生み出されたものだから、早く寝ない子を脅かしにくるとか、嘘をついた人を食べてしまうとか、ちょっと教訓めいた特徴を持ってるんだよね。
ところが。
妖怪パックの解説文にはこう書いてあった。
「おやにかおが似ていないこどもがいると、やってきてこどもをつれさってしまう」
ええええぇ!?
なんでー!?
妖怪に理屈を求めるべきじゃないけれど、それでもこども心にこれは理不尽だと思った。
そして理不尽だからこそ底知れぬ恐怖を感じて震えあがった。
やっぱり人間、得体の知れないものがいちばん怖い。
だからね。
さっきの「あれ?」は何の「あれ?」なのか説明しなさいっての!
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