2020年11月27日金曜日

【読書感想文】誰の心にもあるクズな部分 / 吉田 修一『女たちは二度遊ぶ』

女たちは二度遊ぶ

吉田 修一

内容(e-honより)
電車で遭遇した目を見張るように美しい女。電話ボックスで見かけた甘い香りを残した女。職場で一緒に働く世間に馴染めない女。友人の紹介でなんとなく付き合った怠惰な女。嬉しくても悲しくてもよく泣く女。居酒屋から連れ帰った泥酔する女。バイト先で知り合った芸能界志望の女。そして、中学の時に初めて淡い恋心を抱いた女…。人生の中で繰り返す、出会いと別れ。ときに苦く、哀しい現代の男女をリアルに描く短編集。

 なぜかは自分でもよくわからないのだが、吉田修一さんの小説はすごく心地がいい。

 決して「いい話」じゃない。
『元職員』も『怒り』も『パレード』も『悪人』も、登場人物の大半は悪いやつ、ずるいやつ、怠け者のやつだった(『横道世之介』は例外)。

 読んでてぜんぜんスカッとしないんだよ。むしろ逆で、じわっと嫌な気持ちになる。善人が理不尽に不幸な目に遭って、悪人がこそこそ逃げまわるようなストーリーが多い。
 なんか湿度が高いというか。不快指数の高い小説なんだよね。
 でも、蒸し風呂に病みつきになってしまうように、吉田修一作品もなぜだか無性に読みたくなる。読んでいる間はじわっと嫌な気持ちになって、だから読みおわったときには一種の爽快感がある。はあ、やっとこの不快感から抜けだせた!


 吉田修一作品の「嫌な感じ」がぼくにはちょうどいい。
 出てくる人間が「こんな極悪非道なやつ許せない!」というほどじゃなくて、「どうしようもないクズだけどこいつの気持ちもちょっとわかってしまうな。ぼくも置かれた状況によってはこういうことしちゃうだろうな」っていうレベルの悪人なんだよね。




『女たちは二度遊ぶ』は短篇集だが、やはりダメな男ばかり出てくる(タイトルに『女たちは』とあるが基本的には男の話だ)。

 飲み屋で泥酔した女をホテルに連れていく男、だらだらと借金を重ねてしまう男、彼女が妊娠したときに堕胎してほしいと直接言えずに男友だちに代弁してもらう男……。

 十一の小説が収録されていて十一人の男が出てくるが、ほとんどがダメ男だ。定職についていない男や大学に行かない大学生ばかりだ。
 そして出てくる女たちは、彼らにとって「そんなに大事じゃない女」だ。


 一応言っておくと、ぼくはそこそこ真面目に生きてきた。大学も四年で卒業したし、仕事を無断欠勤したこともないし、退職するときは一ヶ月以上前に伝えたし、行きずりの女と寝たこともないし、それどころかナンパをしたこともない。
 だから「無断欠勤をくりかえす男」や「女をひっかけてヤリ捨てる男」の話を読むと、軽蔑すると同時に一抹のうらやましさも感じる。ぼくができないことをやっているから。

 一応まじめに生きてきたとはいえ、嘘をついてバイトを辞めたり、不実な態度で女性を傷つけたりしたことがある。だから「そっち側」の男の気持ちもよくわかる。ちょっと環境が違えば自分も「そっち側」で生きていたとおもう。


 特に印象に残ったのは『泣かない女』。

 ここに出てくる男はなかなかのクズ野郎だ。彼女を妊娠させてしまった男友だちの代わりに彼女に「中絶してほしい」と電話し、自分が彼女を妊娠させたときはやはり男友だちに代弁を頼む。
 責任感ゼロ。男のぼくから見ても最低のやつだとおもう。さすがのぼくでも、もし同じ境遇に立たされたらちゃんと頭を下げるぐらいのことはする。

 でも、ここまでのクズではなくても、たいていの男は「まあなんとかなるっしょ」ぐらいの気持ちでセックスしちゃってるんだよね。というかなんも考えてない。性欲で頭いっぱいで、一ヶ月先、一年先のことなんかまったく考えてない。
 みんなクズなんだよね。
「誰の心の中にもあるクズの部分」を書くのが、吉田修一さんはほんとにうまい。


 ところでこの『泣かない女』に出てくる「赤ちゃんをパチンコ屋の駐車場に置き去りにしたせいで死なせてしまった母親が、少し後にとった行動」のエピソード、めちゃくちゃ怖い。
 なんだろう。まったく理解不能な行動なのに、フィクションとはおもえないリアリティがあるんだよな。
 これ実話に基づいた話じゃないよね? 実話でないことを願うが……。


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2020年11月26日木曜日

ツイートまとめ 2020年3月



長寿

ほらふき

沈みゆく船

クリーニング

広辞苑

あばれる

隣県

おやつ

飲めるけど

村上春樹

ボランティア

ニューオータニ

比喩

本来の用途1

本来の用途2

生存権

曲乗り

そこそこ

コロナで延期

質量

疫病

読書感想文ブログ

結婚式場

よだれ

トイレットペーパー買い占め

コロナ封鎖

社交辞令

反ワクチン

964円

目線

選別



2020年11月25日水曜日

【読書感想文】何でも食う人が苦手な料理 / 高野 秀行『辺境メシ ~ヤバそうだから食べてみた~』

辺境メシ

ヤバそうだから食べてみた

高野 秀行

内容(e-honより)
人類最後の秘境は食卓だった!食のワンダーランドへようこそ―辺境探検家がありとあらゆる奇食珍食に挑んだ、驚嘆のノンフィクション・エッセイ!

 食に関しては好奇心旺盛なほうだとおもう。めずらしいものがあれば食べてみたい。
 とはいえインドア派でめんどくさがり屋なので、「居酒屋で聞きなれないメニューがあったら頼んでみる」とか「スーパーでよくわからない野菜や果物があれば買ってみる」レベルだ。
 一度、機会があって虫も食べてみた。特にどうってことのない味だった。


 しかし世の中には食に保守的な人が多い。
 以前中国に滞在していたとき、ぼくは屋台で売っている謎の肉とか、レストランで名前からは想像もつかない料理とかをばくばく食べていた(「猫耳朶」という料理があったので猫の耳を食わせるのかとおもって頼んでみたがただのパスタでがっかりした。形状が猫の耳に似ているかららしい)。
 ところが周囲の日本人から「よくそんなもん食えるね」とか「怖くないの?」とか聞かれたものだ。彼ら彼女らは炒飯や水餃子ばかり頼んでいる。そんなもの日本でも食えるのに。
 日本人数人でレストランに行ったとき、入口のバケツで醜悪な見た目の謎の巨大魚が泳いでいたから「これ頼んでみようよ」と行ったら全員から猛反対された(ひとりで食い切れる量ではなかったので泣く泣く断念した)。
 たった一ヶ月ほどの滞在なのに日本食が恋しくなって「日本食レストランに行かない?」と言ってくる人もいた。なんて保守的なんだろう。

 ぼくからすると、高い上にうまくないに決まってる外国の日本食レストランに行くほうが正気の沙汰ではない。何しに外国に来てるんだ。
 謎の肉とはいえ、お店が出していて現地の人がお金出して食っているものなんだから食えるに決まっている。
 せっかく外国に来てるんだから食ってみたらいいじゃないか。うまければラッキーだしまずければそれはそれで話のタネになる。タニシやカエルを中国で食ったが悪くない味だった。

 とはいえ火の通っていないものだけは手を出さなかった。やっぱり衛生的に不安だったので。




「食への好奇心は強いけど出不精」のぼくとはちがい、高野秀行さんは食への好奇心も強い上に世界の辺境をあちこち旅している人なので、当然妙ちきりんなものもいっぱい食べている。
 なにしろ反政府ゲリラの支配区に滞在してアヘン中毒になったことのある人だ。『辺境メシ』では、ゴリラ、昆虫、ムカデ、水牛の脊髄、密造酒、麻薬成分のある草などいろんなものが紹介されている。

 コンゴで食べたチンパンジーの話。

 さっそく村の男たちが解体をはじめた。ゴリラのときはあまりにヒトに似ていたため、山刀で切り刻む様子が凄惨で目をそむけた。が、さらに飢餓が進み、なおかつ解体にも慣れてしまったせいか、このとき私は目をそむけるどころか生唾を飲んでしまった。「赤身の旨そうな肉じゃん!」と思ったのだ。
 いつものようにぶつ切りにされた肉は塩と唐辛子だけで煮込まれた。一口食べて驚いた。
「これ、ゴリラの肉そっくりだ!」
 ゴリラ同様チンパンジーも筋肉の発達が著しく、ひたすら固いが、意外に臭みはない。よく嚙むとコクも感じられる。ちなみに、一般的なサルの肉とは全然ちがう。サル肉は、独特の臭みがあるが味自体はあっさりしている。
 閉口したのは、体毛。一応解体の際に取り除いてあるのだが、仕事が雑なため、女性の髪そっくりの長く黒い毛が肉のあちこちにからみついている。私たちの舌や喉にもひっかかるので、しばしば口に指を突っ込んで毛をとらなければならない。野趣あふれすぎだ。
 でも、今となっては思う。ゴリラとチンパンジーの肉は臭みもないしコクのある肉である。もしちゃんと毛の処理をして、ハーブや種々の調味料を使い、じっくりコトコト煮込んで柔らかくしたら意外にいけるんじゃないだろうか。チンパンジー肉のトマトシチュー南仏風とか。もはや試す機会はないし、そんな機会はあってはいけないとも思うのだが。

 チンパンジーの肉なんてぜんぜんうまくなさそう……というイメージだったのだが、意外にいけるらしい。あくまで「世界中どんな料理でもほぼ何でも食べる」高野さんの感想なので、万人に当てはまるかは謎だが。
 とはいえサル族はやっぱり抵抗があるな……。顔が人間の赤ちゃんみたいだもんな。まして「女性の髪そっくりの長く黒い毛」がからみついていたら無理かもしれない……。


 チベットの「水牛の脊髄」とかミャンマーの「納豆バーニャカウダ」とかタイの「豚生肉を発酵させた料理」とか、見ただけで「食いたくない!」とおもう料理でも、高野さんの文章を読んでいるとおいしそうな気がしてくるからふしぎだ。

 まあ現地の人が金を出して食うものだから、そこそこうまいのだろう。
 しかし豚生肉を発酵させたものは、いくらうまくても食いたくないな……。命は惜しい。

 命知らずな料理といえば、日本の料理もたいがいだ。

 フグの中でも卵巣は最も危険な部位で、一匹分で三十人を殺せるほどの毒があるそうだ。そんなものをどうやって食べるのかというと、まず卵巣を三~五カ月ほど塩漬けにしたあと、糠味噌樽の中に漬けておく。すると、糠味噌の乳酸菌による分解で毒が少しずつ減り、三年後にはすっかり無毒かつ美味しい卵巣漬けになっているという(「塩が毒素を希釈する」という説もあるらしい)。
 こんな異常に高度な技術が江戸時代から培われていたというから、日本人の食い物に関する貪欲さは恐ろしい。だって、技術が確立するまでに何人が犠牲になったかわからないじゃないか。ほんの少しでも毒が残っていればアウトなのだ。他にも食べ物がたくさんあるわけだし、どうしてそこまでしてフグの卵巣に執念を燃やしたものかわからない。

 フグって冷静に考えたら世界でもトップクラスのゲテモノだよなあ。一歩間違えれば死ぬんだもん。
 もし外国に行って「このヘビおいしいんですけど、猛毒を持ってて食べたら死ぬんですよ。まあ腕のいい料理人が毒の部分だけ取り除いてるからほぼ大丈夫ですよ」と言われてもぜったいに手を出さない。それなのにフグはおいしくいただくんだから、慣れとはおそろしい。

 ここで紹介されているフグの卵巣なんて、誰がどうやって食べ方を発明したんだろうな。今だったら化学的な解析をできるのかもしれないけど、江戸時代だったらじっさいに食ってみるまでわからなかっただろうに。
「三年放置すれば無毒になる」ことに気づくまでにどれだけの命が失われたのだろう。




 韓国でホンオ(世界で二番目にくさい食べ物とされる、エイを発酵させた料理)を食べたときの顛末。

 だがまだ終わりではない。というか、これからが本番だった。締めにホンオのチム(蒸し料理)を頼んだ。大皿に、ネギ、ニンジン、ニラが入っており、遠目にはふつうの魚の蒸し料理に見える。だが、スプーン一杯分の塊をとって口に入れると強烈。湯気と一緒にアンモニア・スパークリングがジュワーッと口から喉、鼻と呼吸器に充満するのだ。飲み込んでも胃から臭気が逆流してくるので、急いでマッコルリを流し込む。
「なんじゃこりゃ!?」こんな食べ物、あるのか? どうしてこんなものを食べようと思うのか?
 俄然おもしろくなり、二回目は思い切ってガバッと大量にすくって口に放り込んだ。すると、大変なことが起きた。舌と口腔内へビリビリと電気が走り、直後、それは塩酸でもぶっかけられたような全面的な衝撃となって口全体が焼けただれていくような感覚に陥った。
「うわっ!」
 火傷したときの習性で、新鮮な空気を入れるべく口を開いたら……ドカーン! ときた。入ってきたのは空気じゃなくて毒ガスだった。そう、ホンオを口に入れたまま呼吸するのはタブーなのだ。目に星が飛んだ。ちょっと貧血っぽくなって焦ったが、口を開けるともっと悲惨なことになるので、必死でこらえてなんとか飲み込んだ。

 こんなもん毒じゃん。危険物じゃん。おっそろしい。

 虫は食べられるぼくでも、生肉発酵系の食べ物は食べたくない。やっぱり本能が「危険!」って叫んでるもん。納豆は好きだけどさ。

 でも生肉を発酵させた料理は世界中にある。発酵は貴重な食料を保存するための合理的な知恵なのだ。
 どんな奇妙奇天烈な食べ物でも、人が食べるということはそれなりに理由があるのだ。「エネルギー源がそれしかない」とか「日持ちがする」とか「はじめはきついが慣れると病みつきになる」とか。

 人類がここまで世界中に繁栄できたのは、器用だとか賢いだとかの理由もあるが、「なんでも食う」ってのも大きな要因かもしれないね。
 コアラとかパンダみたいに特定のものしか食べられない生き物だったら、まだアフリカの森から出ていなかっただろう。


 ところで、ほとんど何でも食べている高野さんが、いちばん怖がっているのが「タコの踊り食い」なのがおもしろい。
 とある生物に似ているからというのがその理由だが(詳しくは本書を読まれたし)、ゴリラや生の虫や世界一臭い料理やヤギの胃袋の中身や口噛み酒やカエルのジュースに比べれば、タコの踊り食いなんてぜんぜんたいしたことないとおもうのだが……。

 落語『饅頭こわい』じゃないけど、人間、何を怖がるかわからないもんだねえ。

 

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2020年11月24日火曜日

駒は二度取られる

 将棋ってさ、駒を取られたら相手のものになるじゃない。

「寝返りだ、卑怯だ」なんていう人もいるけど、駒にしたらそれがふつうだとおもうんだよね。
 主君に対して忠誠を誓う兵士なんてごく一部で、大半は金とかに釣られてどちらかについてるだけで、もっといい条件を提示されたらそっちに移るのはあたりまえだ。
 同業他社に転職しました、心機一転がんばります、ぐらいの感覚なんじゃないかな。

 だから相手陣営に加わるのはいいんだよ。
 後足で砂かけて、「前の軍の弱点とか教えますよ!」みたいな感じで新天地でがんばればいい。

 問題は、もういっぺん取られたときね。
 古巣に戻るわけじゃん。
 しかも周囲は同業他社にいたことを知ってるわけ。
 みんな口には出さないけど「どのツラ下げて戻ってこれたんだ」っておもってる。

 あれはめちゃくちゃ気恥ずかしいだろうね。
 必要以上に被害者ぶったりするのかな。
「いやー後手に無理やり連れていかれたんすけど、あっちの労働条件最悪でしたわー。やっぱり先手側がいいっすわー。よかったわー戻ってこれて」
とか聞かれてもいないのにべらべらしゃべるんだろうね。


 太平洋戦争の後シベリアで強制労働させられてた人が日本に帰国した後、「あいつはソビエト共産党のスパイなんじゃないか」という目で見られていてなかなかまっとうな仕事につけなかったという話を聞いたことがある。

 二度転籍した将棋の駒も、同じような目で見られているかもしれない。
 どれだけチームに貢献しても「あいつは前に裏切ったやつだ」「どうせまた裏切るんだろ」という評価は拭い去れない。
 どんなにがんばっても外様扱い。

 シベリア抑留者も二度取られた駒も、自分で選んだ道ではないのに、気の毒だ。
 なんなら同胞のために犠牲になったのに。


 そんな「二度転籍した駒」がいちばん輝くのは、なんといってもかつてのボスであった王将に王手をして詰ませるときだろう。
 それまでずっと「結局あいつはどっちにも転ぶやつだから」みたいな目で見ていた同僚たちが「すまなかった、おまえこそがいちばんチームのことを考えていたんだな!」と胴上げしてくれることまちがいなし。


2020年11月20日金曜日

テナガザル向けアダルトビデオが存在しない理由

 ふとおもったんだけど、アダルトビデオに興奮できるのって人間だけなんじゃないかな。

 いや、あたりまえなんだけど。人間向けに作ってるから。

 でもさ。
 アダルトビデオってだいたい他人がセックスしてる映像でしょ。
 それで昂奮するのってよく考えたら変じゃない?

「女の裸を見て昂奮する」のはわかるよ。
 女が自分の前で裸体をさらしているってのはセックスに持ちこむチャンスだからね。
 女性とふたりっきりになって、相手が全裸になってくれたら、まずまちがいなくセックスできるわけじゃない。
 そこで「いやそんなつもりじゃないから」って言われることはまずないでしょ。

 でもさ。
「自分じゃない男」と「自分じゃない女」がセックスしていて、自分がそれを隠し見ているというシチュエーション。
 ふつうに考えればそこから自分がセックスできる可能性はほとんどない。
 だから、本来なら昂奮するどころか消沈する状況なわけ。

 じゃあなんで赤の他人同士が性交しているところを見て昂奮できるのかっていったら、人間には想像力があるから。
 ビデオに写っている男優に自分を投影して、自分が性交している感覚を追体験できるから。


 だからさ。
 たとえばテナガザルに、他のテナガザルが交尾してる映像を見せたとするじゃん。
 それで昂奮するかっていうと、しないんんじゃないかとおもうんだよね。
 テナガザルはそこまでの想像力がないだろうから。


 あ、でもチンパンジーはべつだよ。チンパンジーなら昂奮するかもしれない。
 一夫一妻制のテナガザルとちがって、チンパンジーは乱婚型だから。
 他の個体が交尾していてもチャンスがあるわけだから。