神様からひと言
荻原 浩
2002年刊行。
社内政治に明け暮れる会社のやり方になじめずトラブルを起こしたことがきっかけで閑職にまわされた主人公。そこは社内の問題児だらけのひどい部署だったが、徐々に仕事のおもしろさを感じられるようになり、仕事に励んでいたら周囲からも認められるようになり、最後は不正をしていたやつらを成敗してめでたしめでたし……とサラリーマン小説のお手本のようなお話。
正直、似たような話を何度も読んだことがある。古くは源氏鶏太(昭和のサラリーマン小説の第一人者)から連綿と続く王道パターンだ。
最近は女性作家、女性主人公が多いよね。この手の“ザ・お仕事小説”。ほどほどに業界知識も散りばめられていて、適度なユーモアがあって、それなりの爽快感もあって、すべてが“ほどよい”。
豚の生姜焼き定食みたいなもの。どこで食べてもいつ食べてもそこそこおいしい。安心感がある。
ただやっぱり感覚が古いというか、いや20年以上前の小説を今読んで古いというのもおかしいんだけど、でも今の感覚で読むと「会社に属しすぎ」とおもってしまう。嫌な職場なら辞めればいいじゃん、とおもっちゃうんだよねえ。当時の会社員の大半は「会社を辞めてはいけない」がまず前提にあって、そこから考えてるんだよなあ。
ぼくも大人なので、納得いかないとおもいながら謝罪をしたことも幾度かあるけど、何度やっても慣れない。ついつい顔に出ちゃうんだよね、「なんで俺が」感が。
そこで謝罪のプロのセリフ。
なるほどね。ぼくだったら自分の子どもかな。子どもがよその人に迷惑をかけたとおもえば、自分が悪くなくてもすんなり謝れる。これは使えるテクニックかもしれない。
ただ問題は、自分が部下の代わりに頭下げるような状況ならともかく、上司の代わりに謝らなくちゃいけないような場面で「子どもの代わりに謝ってるんだ」とおもえるかってことだよな……。
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