死刑にいたる病
櫛木理宇
かつては優等生で自信に満ちあふれていたが、自信を失い卑屈になっていった大学生の主人公。彼のもとに、連続殺人犯として収監されている死刑囚・榛村大和から手紙が届く。
刑務所に面会に行くと、榛村大和は語る。たしかに自分は罪のない少年少女八人を己の快楽のために殺した。それは認める。だが裁判で自分がやったとされた九件目の罪だけは冤罪だ。やってもいない罪で裁かれたくはない。真犯人は他にいる。君に見つけてほしい――。
はたして榛村大和が語っている内容はどこまで本当なのか。九人目を殺した真犯人がいるとしたら誰なのか。そして榛村はなぜ、さほど接点のあったわけでもない自分を指名して手紙を送ってきたのか――。
よくできたミステリだった。というより、ミステリだとおもって読んでいたらサスペンスというかホラーというか。
冤罪をテーマにしたミステリでいうと高野 和明『13階段』が有名だ。とある死刑囚の冤罪を晴らすために調査をする話。
冤罪ということになれば、「犯人とおもわれていた人物が犯人でない」と同時に「真犯人が別にいる」という真相があることになる。両面からドラマを作れるので、気の抜けない展開になる。
『死刑にいたる病』も中盤までは『13階段』と似ている。ああこういうパターンね、ということはきっと主人公は少しずつ真相に迫り、真相に迫ったところで真犯人に……という展開になるんだろうな、とおもいながら読んでいた。
が、ぼくの予想はまんまと裏切られた。なるほどね。ミステリとしてのおもしろさよりもシリアルキラーの不気味さを掘るほうに持っていったわけか。
これはこれでありだね。ミステリとしてはこうなるだろう、という予想を裏切るのが逆説的にミステリっぽい。
きれいに謎が解けてすっきり終わる話じゃないからこそ、いい意味でもやもや感が残る。個人的には鮮やかな謎解きよりも「なんかしっくりこないものが残る」この展開のほうが好きだな。
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