データ分析の力
因果関係に迫る思考法
伊藤 公一朗
データ分析の効用、手法、事例、課題点などについて概説した本。数式が出てこないので入門者向けでありながら、「こういったケースではうまくいかない」「このような実験は設計方法に誤りがある」といった実践的なあ説明も多く、かなり実用的な内容だ。
ぼくは十年以上マーケティングやデータ解析の仕事をしているのでわりと今さらな内容が多かったけど、それでも明確に言語化しているなと感心する。よくできた解説書だ。
ただ、いざデータ分析をやろうとなったときに課題になるのって、たいていの場合「データ分析のやり方がわからない」とか「どういった実験を設計するのがいいか」ということよりも、「そもそもデータにアクセスできない」といったことのほうが多いんだよね。
データ分析よりも、データを収集する、または誰かが収集したデータにアクセスする、ということのほうがよっぽどむずかしい。
政府などの公的機関でも企業でも、基本的に「自分たちが集めたデータは秘密にして、ごくごく一部の情報だけ公開する」というやり方をとっている。
もちろんライバル会社に盗まれたら困るようなデータもあるけど、そうじゃないものまで必要以上に囲い込もうとするんだよね、みんな。「せっかくうちが集めたんだから(ライバルでなくても)他の会社に得をさせたくない」という意識。で、誰も使うことなくデータが腐敗してゆく。
まあ私企業の場合はしょうがないとしても、政府だとか行政機関は「基本的に公開、よほど問題のあるものだけ非公開」とすべきだとおもうんだけどね。いちばんデータを持っているくせにしっかり抱えこむ。
安全保障関連以外は全公開ぐらいでいいんじゃないのかね。官房機密費なんてもってのほか。
行政機関が正当な理由なくデータを公開しないのは罪、ぐらいにしてもらいたいものだ。不正防止にもなるし(不正が明るみに出ると困るから公開したくないのかもしれないが)。
データを公開した成功事例。
タクシー配送アプリのウーバーは積極的にデータを公開して、大学などの研究機関に分析をしてもらっているらしい。その結果、どういった料金プランにするのが利益を最大化するかという考察ができているらしい。
研究機関からしても、現実のデータが扱える、データ収集を代わりにやってもらえるなどのメリットがあるので、双方にとって得があるわけだ。
昔に比べればコンピュータの発達によってデータの蓄積や分析は格段に楽になり、オンラインでの行動分析とかだとデータ収集のコストもすごく低い。
ずっと大規模かつ効率的にデータ分析ができるようになったにもかかわらず、「なんか公開したくない」といった理由で解析は進まない。
どれだけ道具が発達しても結局ネックになるのは人間なんだよな。データ分析の結果、自分がやってきた仕事は無駄だったと突きつけられるのはイヤだもんね。
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