2026年8月7日金曜日

【読書感想文】伊藤 公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』 / 世にはびこるデータ分析されると困る人たち

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データ分析の力

因果関係に迫る思考法

伊藤 公一朗

内容(e-honより)
ビッグデータが存在するだけでは、「因果関係」の見極めはできない。データの扱い、分析、解釈においては、人間の判断が重要な役割を担う―。本書では「広告が売り上げに影響したのか?」「ある政策を行ったことが本当に良い影響をもたらしたのか?」といった、因果関係分析に焦点を当てたデータ分析の入門を展開していきます。序章では、なぜ因果関係を見極めることがビジネスや政策の成功の鍵を握るのか、様々な実例を使いながら解説します。第2章以降では、ランダム化比較試験、RDデザイン、パネル・データ分析など、因果関係に迫る最先端のデータ分析手法について、数式を使わず、具体例とビジュアルな描写を用いて解説していきます。

 データ分析の効用、手法、事例、課題点などについて概説した本。数式が出てこないので入門者向けでありながら、「こういったケースではうまくいかない」「このような実験は設計方法に誤りがある」といった実践的なあ説明も多く、かなり実用的な内容だ。

 ぼくは十年以上マーケティングやデータ解析の仕事をしているのでわりと今さらな内容が多かったけど、それでも明確に言語化しているなと感心する。よくできた解説書だ。



 ただ、いざデータ分析をやろうとなったときに課題になるのって、たいていの場合「データ分析のやり方がわからない」とか「どういった実験を設計するのがいいか」ということよりも、「そもそもデータにアクセスできない」といったことのほうが多いんだよね。

 データ分析よりも、データを収集する、または誰かが収集したデータにアクセスする、ということのほうがよっぽどむずかしい。


 成功の鍵として挙げられる2点目は、データへのアクセスを可能な限り開かれた形にすることです。先述したアメリカ連邦政府のエビデンスに基づく政策のための評議会では、RCTなどの科学的データ分析を進めるという目的と同時に、政府が持つ詳細な行政データを分析者に利用させる体制を整えるという目的を掲げていました。政府内の公的なデータにしても、企業内のデータにしても、データセキュリティを確保した上で分析者にアクセスを開放することが重要です。なぜなら、そもそもデータアクセスへの準備がない限り、成功の鍵1で述べた専門家と政府・企業との協力関係が生まれないからです。

 政府などの公的機関でも企業でも、基本的に「自分たちが集めたデータは秘密にして、ごくごく一部の情報だけ公開する」というやり方をとっている。

 もちろんライバル会社に盗まれたら困るようなデータもあるけど、そうじゃないものまで必要以上に囲い込もうとするんだよね、みんな。「せっかくうちが集めたんだから(ライバルでなくても)他の会社に得をさせたくない」という意識。で、誰も使うことなくデータが腐敗してゆく。

 まあ私企業の場合はしょうがないとしても、政府だとか行政機関は「基本的に公開、よほど問題のあるものだけ非公開」とすべきだとおもうんだけどね。いちばんデータを持っているくせにしっかり抱えこむ。

 安全保障関連以外は全公開ぐらいでいいんじゃないのかね。官房機密費なんてもってのほか。

 行政機関が正当な理由なくデータを公開しないのは罪、ぐらいにしてもらいたいものだ。不正防止にもなるし(不正が明るみに出ると困るから公開したくないのかもしれないが)。



 データを公開した成功事例。 

 ウーバーやタクシーに限らず、消費者にサービスを提供する企業にとって非常に重要になるのが、消費者の需要曲線の形状です。需要曲線とは「価格の上げ下げによって利用者の数がどれだけ変わるのか?」という情報を提供してくれるものです。需要曲線を知ることは、企業にとっては利益を最大化するための戦略に不可欠です。シカゴ大学の研究者らとウーバーは、データ分析によって需要曲線を推定するプロジェクトを立ち上げました。ここでの鍵は、ウーバーを利用する消費者の需要曲線を知ることは、ウーバーにとっても研究者にとっても興味深い問いであったことです。

 タクシー配送アプリのウーバーは積極的にデータを公開して、大学などの研究機関に分析をしてもらっているらしい。その結果、どういった料金プランにするのが利益を最大化するかという考察ができているらしい。

 研究機関からしても、現実のデータが扱える、データ収集を代わりにやってもらえるなどのメリットがあるので、双方にとって得があるわけだ。


 昔に比べればコンピュータの発達によってデータの蓄積や分析は格段に楽になり、オンラインでの行動分析とかだとデータ収集のコストもすごく低い。

 ずっと大規模かつ効率的にデータ分析ができるようになったにもかかわらず、「なんか公開したくない」といった理由で解析は進まない。

 どれだけ道具が発達しても結局ネックになるのは人間なんだよな。データ分析の結果、自分がやってきた仕事は無駄だったと突きつけられるのはイヤだもんね。


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