下川 裕治(編・著) 仲村 清司(編・著)
かつて沖縄を「心温かい人たちのいる南の楽園」として紹介する雑誌や本の出版に携わり、“沖縄ブーム”に一役買った著者たち。
だがあたりまえだが実際の沖縄は楽園ではない。良いところと同じぐらい、あるいはそれ以上に、悪い部分もある。
そんな沖縄の様々な面(主にネガティブな面)について、沖縄事情に明るいライターたちがつづった本。
正直、いろんな人がいろんなテーマで書いているので散漫な印象だ。「あまり語られない沖縄の抱える問題」について書いてあるのかとおもいきや、沖縄の老舗ホテルがつぶれたとか、沖縄は野球熱が高いとか、琉球人を象った像がタイにあるとか、それがどうしたと言いたくなるような章もある。
「沖縄には鉄器が足りなかったから大規模農業ができず近くの人と助け合わなければならないので沖縄の人たちは温和な人柄になった」なんて話(司馬遼太郎が唱えた説)はおもしろかったが、ちょっと根拠があやふやすぎる。酒の場の話としてはいいんだけど。
もうちょっとテーマを絞ってくれたほうが読みやすかったな。
かつて「日本一長寿な都道府県」だった沖縄だが、県民の健康状況はどんどん悪くなっているそうだ。都道府県別肥満率はワースト1位に。
原因のひとつが食文化のアメリカ化。かつては海藻などを豊富にとっていたことが健康につながっていたが、ファストフードやスパムなどを多く食べるようになり、健康状況は悪化の一途をたどっている。背景にはもちろん米軍基地の存在がある。
それだけではない、経済的要因も大きい。
沖縄県民は心身ともに不健康になっているわけだ。
沖縄と本土の経済格差は拡大しているので、今後もこの傾向は続くのだろう。肥満率はともかく、自殺が多いのは「楽園」とは真逆だよなあ。
このあたりの話は興味深かったので「沖縄のたどってきた歴史と健康度、幸福度」といったテーマで一冊にした本のほうが読みたかったな。
宮古島の近くにあるため「離島の離島」とも呼ばれる伊良部島の話。
2015年に宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋が完成し、島民はそれまでより便利な生活を送れるようになった。
ストロー効果ってやつだね。
高速道路や橋ができて都市に行きやすくなることで地方の生活が便利になるかとおもったら、若者や働き手が都市に出ていってしまい、かえって地方の過疎化が進む現象。隔絶されているからこそ守られる生活もあるんだけど、失うまでなかなか気づけないよね。
昔より交通網が発達したり情報伝達速度が上がったから「日本中どこに住んでも似たような生活を送れるようになった」はずなのに、現実には昔よりも東京一極集中が進んでいる。
かんたんに帰ってこられるとおもうと出ていきやすくなってしまうんだね。
戦前、人口過剰や土地不足を背景に、沖縄からブラジルなどへの移民が相次いだ。その傾向は戦後になっても変わらず、1954年からは南米・ボリビアへ集団移住する人たちがいた。
たいていの移民がそうであるように、ボリビア開拓団は大きな苦労を強いられたようだ。政府から「海外に行ってがんばって働けばいい暮らしができる」と言われていったのに、裏切られた気になった人も多かったという。
ボリビアに渡った沖縄移民たちは明るかった。だがその明るさは本来の気質によるものだけでなく、「そもそも日本という国に期待をしていなかった」という背景によるものなのかもしれない。
琉球処分によって琉球が日本のものになり沖縄県ができたのが1879年。1950年代の沖縄の人にとっては「我々は日本人だ」という意識は薄かったのかもしれない。アメリカ占領下だし。
沖縄移民の明るさは、楽観から来るものではなく、むしろ諦観だったのかもしれない。そしてその感覚は現代では完全になくなったものなんだろうか。
その他の読書感想文は
こちら
0 件のコメント:
コメントを投稿