藤井 一至
どうやって地球上に土ができたのか、土は菌・ウイルス・植物・動物とどう関わっているのか、人類の科学進歩によって土はどのような影響を受けているのか、そして土と共存していくためにはどうすればいいのか。
タイトルの通り、土と生命の関わりについての46億年史をぎゅっと濃縮した本。すごく密度が濃い。おもしろかった。大地讃頌を歌いたくなる。
まず文章がおもしろい。文章のおもしろさはこの手の本にとってすごく大事なことだ。専門家が素人に向けて書いた本って、書き手と読み手の知識の差が大きいから、往々にしてついていけなくなるんだよね。そんなとき、文章がおもしろければ、内容がいまいちわからなくてもとりあえず読む気にはなる。なんとか振り落とされずに済む。なんとか食らいついていけば、ちょっとずつわかるようになってくる。
「砂の中の石英砂と火山灰の結晶は光を反射する。土に含まれる炭素はダイヤモンドと同じ元素から成るが光を反射しない」だとぜんぜんおもしろくないけど、こう書いてくれるとがぜん興味が湧く。
ひとりでも多くの人に土に興味を持ってもらおう! という著者の熱意がひしひしと伝わってくる。その想い、しかと受け取ったぜ! 土に関する記述も全部ではないけどなんとなく理解できたぜ!
地学の話って鉱物の名前とか元素の名前がいっぱい出てくるのでかなりとっつきづらいんだけど、この本では少しでもイメージしやすいように、身近なものを使って説明してくれる。
いい文章だなあ。理想的な教科書だ。この文章を読むだけで、我々の生活がどれだけ地層に依存しているかがよくわかる。土地ごとに名物があるけど、名物それぞれに自然環境要因があるんだねえ。大地を誉めよ頌えよ土を。
土とは、鉱物が細かくなったものにくわえて、動植物の糞や死骸が分解されたもの(腐植)が混ざったものをいうのだそうだ。生物がいなければ土はできない。でも陸上生物は土がなければ生きていけない。鶏が先か卵が先か、みたいな話だ。生物が先か土が先か。
うーん、おもしろいミステリだ。このスケールのでかい謎を、この本では見事に解き明かしてくれる。
生物が次々に進化しているのと同じように、土もどんどん変化しているのだ。土が変化することで植物や動物が入れ替わり、動植物の行動が変わることでさらに土も変化する。このダイナミックな動きを紹介してくれるのだが、わくわくするほどおもしろい。
土が変われば空気中の酸素が増え、節足動物が巨大化する。土が変わればまた別の生物たちが台頭する。『風の谷のナウシカ』で「土から離れて生きられないのよ」という台詞があるが、まさにその通り。土が変わったからあんな世界になったのだ。
正直に言って、この本の内容をすべて理解できたわけではない。むずかしいので流し読みしたところもある。
それでもおもしろい。文章がいいので断片的に読んでもおもしろいし、だいたいの流れを追っているだけでも地球のダイナミズムを感じられる。読めば読むほど、土と生命の違いってなんだろうという気になってくる。ほとんど生命と変わらないよな。
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