だます技術
ラック金融犯罪対策センター
様々な詐欺被害の手口を紹介する本。
タイトルは『だます技術』だが、もちろん詐欺グループ向けの本ではなく、詐欺にだまされないようにするための本。
数々の詐欺の手口を紹介しているのだが(ほとんどが振り込め詐欺やカード情報を引き出すフィッシング詐欺)、あたりまえだが過去にあった手口しか紹介されていない。ほとんどがニュースなどで見たことのあるやり口だった。
なのでニュースや情報番組などを見ていたら得られる知識がほとんどだった。ただし知識があることと詐欺に引っかからないことはまた別なのでわかっていても冷静さを失って引っかかってしまうことはあるのだろう。
当然ながら、いくらこういった本を読んだところで「これから登場する新しい手口」はわからない。まったく新しい手口で詐欺を仕掛けられたら、そして複数の人間が大規模に仕掛けてきたら、詐欺だと気づいて逃れることはむずかしいだろう。
たとえばぼくはコンビニで買い物をするときにクレジットカードで支払いをするけど、もしそのコンビニ自体が詐欺のためにつくられた建物で、商品も店員も本物のチェーン店そっくりに配置していたら、何の疑いもなくレジでカードをかざしてしまうだろう。さすがの詐欺グループもそこまではやらんだろうけど(割に合わないだろうから)、でもこういう「そこまではやらんだろう」という思い込みこそが足元をすくわれる要因になるのだろう。
たとえばこんな手口が紹介されている。投資セミナーなどから株式投資アプリをインストールさせるやり方。
本物の投資アプリそっくりのアプリまでつくって入金させ、さらには(最初だけ)出金もちゃんとできるようにしているのだ。ここまでされたらアプリが偽物だと疑うことはほぼ不可能だろう。
この本には詐欺に遭わないための心構えも書いてあるが、結局「すべてを疑ってかかれ」しかないんだよね。
よくわからない人に近づくな、信頼できないサイトを見るな、余計なアプリは入れるな、あまり自分のことを話すな。
つきつめていえば「何もしないのがいちばん」ということになる。
うーん、まあそりゃそうなんだけど。でもそれって新しいものから得られるメリットも放棄することになるわけで。
結局、どれが詐欺でどれがそうじゃないかなんて判断するのはむずかしいので(情報に精通した人でも引っかかることがあるので)、リスク覚悟で信じるか、リスクを重く評価してすべて疑ってかかるかのどっちかしかないことになる。
詐欺だけを遠ざける方法なんてないということが改めてわかった。じゃあこの本の意義ってなんだったんだろう。
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