2025年9月24日水曜日

【読書感想文】ラック金融犯罪対策センター『だます技術』 / 知れば知るほど詐欺を見抜けないことがわかる

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だます技術

ラック金融犯罪対策センター

内容(e-honより)
「自分がひっかかるわけない」そう思ってる人が、なぜカモになるのか?被害者が年々増える一方の特殊詐欺で使われる手口を体系化。・本物と錯覚させる・美味しい話で惹きつける・話術と仕掛けで信用させる・考えられない状況に陥れる 被害例をもとに、だましのテクニックとだまされる心理の仕組みがわかる。あなたを、親を、子どもを、被害から守るための知識を金融犯罪対策のプロ集団が解説。

 様々な詐欺被害の手口を紹介する本。

 タイトルは『だます技術』だが、もちろん詐欺グループ向けの本ではなく、詐欺にだまされないようにするための本。


 数々の詐欺の手口を紹介しているのだが(ほとんどが振り込め詐欺やカード情報を引き出すフィッシング詐欺)、あたりまえだが過去にあった手口しか紹介されていない。ほとんどがニュースなどで見たことのあるやり口だった。

 なのでニュースや情報番組などを見ていたら得られる知識がほとんどだった。ただし知識があることと詐欺に引っかからないことはまた別なのでわかっていても冷静さを失って引っかかってしまうことはあるのだろう。


 当然ながら、いくらこういった本を読んだところで「これから登場する新しい手口」はわからない。まったく新しい手口で詐欺を仕掛けられたら、そして複数の人間が大規模に仕掛けてきたら、詐欺だと気づいて逃れることはむずかしいだろう。

 たとえばぼくはコンビニで買い物をするときにクレジットカードで支払いをするけど、もしそのコンビニ自体が詐欺のためにつくられた建物で、商品も店員も本物のチェーン店そっくりに配置していたら、何の疑いもなくレジでカードをかざしてしまうだろう。さすがの詐欺グループもそこまではやらんだろうけど(割に合わないだろうから)、でもこういう「そこまではやらんだろう」という思い込みこそが足元をすくわれる要因になるのだろう。


 たとえばこんな手口が紹介されている。投資セミナーなどから株式投資アプリをインストールさせるやり方。

 被害者が指定された口座に入金すると、犯罪者はそれを確認して、アプリ側にも反映し、儲けが出ているように見せかけます。
 被害者が投資で得た利益を引き出そうとした場合、犯罪者は引き出し金額を確認して、実際にその金額分を被害者の口座に直接振り込みます。
 犯罪者にとっては、アプリに表示している数字をいじるだけに比べて手間がかかることになりますが、被害者が実際にお金が動くところを目にする効果は非常に大きいです。特に、被害例のように、最初は本当に利益が出ているのか、アプリの画面を見ただけでは疑問を抱く被害者には効果的です。
 資金が引き出せることを確認した被害者は、「この投資にはなにも問題はない」と安堵します。場合によっては、「もっと投資すればさらなる利益が期待できるのではないか」と考えるようになります。犯罪者からすれば、より多くの資金をだましとることができる可能性が高まるわけです。

 本物の投資アプリそっくりのアプリまでつくって入金させ、さらには(最初だけ)出金もちゃんとできるようにしているのだ。ここまでされたらアプリが偽物だと疑うことはほぼ不可能だろう。




 この本には詐欺に遭わないための心構えも書いてあるが、結局「すべてを疑ってかかれ」しかないんだよね。

 電話への対応の基本は、「知らない番号からの電話には出ない」ということです。
 「電話ぐらい出ても大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、犯罪者の会話術は日々進化しており、今後も新しい詐欺の手口が出現する可能性があります。そうした手口に引っかからないためには、犯罪者との接触を極力減らすことが大切です。
 「大事な電話を取り逃してしまうのではないか?」と不安に思われるかもしれませんが、知人や家族の連絡先は登録しておき、留守番電話の設定をしましょう。

 よくわからない人に近づくな、信頼できないサイトを見るな、余計なアプリは入れるな、あまり自分のことを話すな。

 つきつめていえば「何もしないのがいちばん」ということになる。

 うーん、まあそりゃそうなんだけど。でもそれって新しいものから得られるメリットも放棄することになるわけで。

 結局、どれが詐欺でどれがそうじゃないかなんて判断するのはむずかしいので(情報に精通した人でも引っかかることがあるので)、リスク覚悟で信じるか、リスクを重く評価してすべて疑ってかかるかのどっちかしかないことになる。

 詐欺だけを遠ざける方法なんてないということが改めてわかった。じゃあこの本の意義ってなんだったんだろう。


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