上原正詩
ユニコーン企業を中心に、今勢いのある(そしてこれから大きくなる可能性の高い)企業やその事業を紹介する本。
ユニコーン企業とは、創業10年以内、評価額10億ドル以上の未上場企業。若くて勢いのある会社ってことだね。ちなみに世界のユニコーン企業はアメリカ、中国に集中しており、その他、インド、シンガポール、イスラエルなどやはり勢いのある国に多い。日本には十社もない。
鮮度が大事なテーマということで、本の内容には深みがない。情報は多いが、あちこちから拾い集めてきた内容をつぎはぎした感じで、独自の解釈や著者の見解といったものは皆無。雑誌記事のよう。
説明もとにかくわかりづらくて、これ著者も理解せずに書いてるんだろうなーってのが伝わってくる。
誰かが書いたものを読んで、自分の中で消化しきれないままとりあえず形だけ要約した文章、って感じ。
さらに誤字も多い。数字の間違いがいくつもあり、「売却」を「買却」、「欲しがる」を「裕しがる」など、どうやったらそんな誤字が生まれるの? というミスも多い。変換してそうなることはないだろ。「欲しがる」が「裕しがる」になるのは、他の本でスキャンした内容をOCRソフトで文字起こしして貼り付けたのかな。
どんな四流出版社が出してるのかとおもったら、ちゃんとした出版社(技術評論社)だった。どうした技術評論社。
TikTokを運営しているバイトダンス(中国企業)のアメリカ展開について。
トランプ陣営の集会を邪魔した連中がTikTokで妨害を呼び掛けていたため、TikTokの米国内での使用禁止が検討……。これ自体が嘘かまことかはわからないが、勢いのある企業というのはとかく政治の影響を受けるものらしい。中国国内でGoogleやFacebookを使えないのは有名な話だし、その意趣返しもあって、アメリカでは中国産のサービスが制限されたりする。EUもよくGAFAと対立しているし、新しい技術やサービスは政治の影響を受けやすい(逆にアラブの春のように政治に影響を与えることも)。
そう考えると、日本国内ではWebサービスが政治にふりまわされる影響が少ない。アメリカ産のツールも、中国産のツールも、たいていのものは使用できる。これはいいことなのか悪いことなのか。一ユーザーとしては便利でいいかもしれないが、国益という面ではマイナスも多そうだ。
テスラ(自動車)、スペースX(ロケット)、そしてTwitterの買収で知られるイーロン・マスク氏だが、それだけでなく鉄道の分野にも食指を伸ばしているそうだ。
リニアの倍以上のスピード! 小型飛行機が300km/hぐらいだから、それよりずっと早い鉄道だ。
地下にはりめぐらされたトンネルの中を無人の乗り物が移動する。手塚治虫とか星新一の描いた未来の世界だなあ。
なぜ日本にはユニコーン企業が少ないのか。人口や経済規模でアメリカ・中国に負けているのはしかたないが、2024年時点で、世界に1,200社以上あるのに日本は6社だけというのはあまりに少ない。
その理由として、起業家が少ないとか、ベンチャーへの投資額が少ないとかも挙げられているが、それ以外にも大きな原因は「移民の少なさ」だと著者は指摘する。
海外から学びに来る人は優秀であることが多い上に、複数の社会を知っているので、社会のニーズや足りないものにも気づきやすいという。まったく新しいことをしなくても「他の国で流行っているものを、なじみやすい形に変えて持ってくる」だけでもイノベーションになるかもしれない。
それに、移民を受け入れるということは、新しい価値観を受け入れるということでもある。いまだ外国人に対する拒否反応の強い日本で、イノベーションが起こりにくいのも当然かもしれないね。
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