2016年2月5日金曜日

【ふまじめな考察】女性が速球派投手になる日

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女の人が髪を切ったことには、まあ気がつかない。

そもそも女の散髪前後の変化率ときたらマジカル頭脳パワーのまちがいさがし頭脳指数200の問題かってぐらい些細なもんだから、ストーカーでもないかぎり気がつくわけがない。
そんな類い希なる注意力持ってたらとっくに青山剛昌にマンガ化してもらっとるわ!

そんなわけだから、女が髪を切ろうが彼氏との縁を切ろうが、さっぱりわからない。
でも世の中には女性の微妙な変化にいともカンタンに気づく男がいる。
すぐ「化粧品変えた?」とか「新しいカバンだね」とか言っちゃう男。

あーやだやだ。

まあだいたいいけ好かない男ですよ、そういう手合いは。
そんでうらやましいわけですよ、正味な話。
だってね。モテるもん、細かいところに目がいくマメな男は。

そりゃそうだよね。
自分に興味をもたれて悪い気はしないよね。

ぼくなんか、自慢じゃないけど会社で毎日顔をあわせている人がパーマあてたことにも気がつかなかったからね。
ある日帰宅したら妻がスプーンおばさんみたいに縮んじゃってたとしてもしばらく気づかない可能性あるよね。あれそんなサイズだったっけ、まいっか先に寝るわ、なんつって。



そんなぼくだけど、女性を見ていて唯一気づく変化がある。
それは「太った」ということ。
よく会う人だろうと、久しぶりに会った人だろうと、なぜかこれだけはわかる。
「あ、あの人太ったな」

どうして太ったことだけわかるんだろう。
はじめは、ぼくが女の人の身体ばかりエロい眼で見ているからかなと思った。
でも、不思議なことに痩せたことはわからない。
人間だから太ることもあれば痩せることもあるだろうに、ぼくが気づくのは太ったときだけ。
どうして痩せたことには気がつかないんだろう。あんなにエロい眼で身体を見ているのに。

太ったことに気づくのだってひとつの才能だけど、問題はそれを披露する場がないってこと。
なぜなら、聡明なぼくは知っているから。
「最近太ったでしょ」は、言わないほうがいいやつだってことを。

そんなわけで、女性の膨張に気づいても口には出さないことにしている。
胸の内でそっと「あ、太ったな」と思うだけ。

だけど。

言いたい。
せっかく気がついたんだもの。
“細かいところに目がいくマメな男”になってみたい。

言ったらどうなるんだろ。
やっぱり嫌われちゃうんだろうな。
だけど案外「気づいた?よく見てくれてんのねー」なんて喜ばれたりして。

言っちゃまずい。でも言いたい。
ずっと葛藤していたのだが、最近ひょんなことから答えが見つかった。



同僚のマナベくんが、隣の席のミサトさんにこう云ったのだ。
「こないだ1年くらい前の写真見てたんですけど、ミサトさん痩せてましたねー!」

横で聞いていたぼくは、思わずあっと声をあげそうになった。

これはやばいのでは……。

そっとミサトさんの顔色を伺うと、案の定顔がひきつっている。
一方のマナベくんはというと、まったく悪びれる様子がない。
むしろ、良いこと言った!ぐらいの表情だ。
どうやら彼は褒め言葉のつもりで「痩せてましたね」と発したらしい。

ぼくは叫びたかった。

マナベくんっ!
それたぶんあかんやつやで!
褒めてるようで実は今のミサトさんを貶めてるで!


 
ぼくには、マナベくんの発言を嗤うことができない。
だってぼくも、状況によっては同じような失言をしてしまいそうだから。

そしてマナベくんの貴い犠牲により、ぼくは学んだ。
やはり、女性に対して体重のことをあれこれ言うべきではない。
そういうのは、ジローラモか光源氏に任せておくべきことで、ぼくやマナベくんみたいな気の利かない男が体重の話題に触れるのは、イスラム国に行ってコーランについての見解を述べるぐらい危なっかしいことなのだ。

やはり「太ったね」と口にするのはやめて、「速球派投手っぽくなってきましたね」ぐらいの言い回しにとどめておくことにしよう。


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