安藤優一郎
「間取り」という切り口で、江戸の人々の暮らしをひも解く本。江戸城、武家、寺社などが中心。ぼくは落語は好きだけど時代小説も時代劇もほとんど見ないので、個人的には名もなき人々の暮らしぶりを知りたかった。でも紙も文字も一般的でない時代なので、一般人の暮らしぶりをわざわざ書き残したりはしない。間取り図を残すのは名のある家や金持ちだけだよね。当然だけど残念。
改めて、市井の人々の暮らしって残りにくいものだと感じる。
今の我々の暮らしも百年後の人々にとっては興味深い「歴史資料」になっているんだろうけど、わざわざ不動産広告のチラシを百年後に残したりしないもんな。子孫に残すなら貴重な金銀財宝よりも、「ごみとしかおもえないどうでもいい紙切れ」とかのほうがおもしろいかもしれない。いや、金銀財宝も欲しいけど。
おもしろかったのが、江戸に多くあった大名屋敷について。
各藩の大名たちが住む屋敷は、幕府から与えられた土地に建てられた。ただし与えられたのは土地だけで、建物はそれぞれで建てなければならなかったそうだ。
だからだろうか、それぞれ趣向を凝らしてけっこう好き勝手に建てていたのだそうだ。
人口の滝をつくって客に見せたり、宿場町のレプリカを作ったり。
これはあれだな。ドラえもんの道具を使ってのび太がやるやつだな。
江戸に住む大名というと何かと不自由なイメージがあったんだけど、こんなふうにあんな夢こんな夢かなえているのを見ると、けっこう江戸生活を楽しんでいた大名も多かったのかもしれない。単身赴任で羽を伸ばすみたいな。
さらに屋敷内の土地を貸したり農地にしたりして、生活の足しにしていたという。
武士は武士としてふるまっていたようにおもってしまうけど、武士は武士でけっこう商売をやっていたのだ。
江戸時代の人々はつつましい生活をしていたようなイメージを持っていたけど、我々と同じように経済活動をしたり、趣味にお金を使ったりしていたことがわかる。ガーデニングをしたりペットを飼ったり。歴史の教科書には書かれないし時代劇にもあんまり出てこないけどさ。
ひょっとすると江戸の町人のほうがぼくらより贅沢な生活を送っていたのかもね。
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