いろんな組織に所属したことがあるけど、どこにいっても
「うちのサークルは個性派ぞろいだ」とか
「ここの業界は特別だから」とか
「この会社は変な人ばっかりだ」とか言う人がいる。
みんな自分のいる場所が特別だと思いたいのだ。
もし「うちは個性的だ」と言う人がひとりもいない組織があれば、それこそ真に個性的な組織にちがいない。
2015年8月23日日曜日
2015年8月21日金曜日
ロボットフェンシングコンテスト
あたしは思う。
いちばんかっこわるいスポーツはフェンシングよね。
たしかに剣士たちは優雅さと強さの両方を兼ね揃えていて、その動きは美しくさえある。
でもさ。
あの人たち、コード出てるでしょ。お尻のあたりから。
なんなのあれ。
いや、わかってる。
剣先が身体に触れたかどうかを判定するためのセンサーでしょ。
それはわかった上で言うんだけど、なんなのあれ。
なに線でつながれてんの。
これだけWi-Fiが飛び交ってる時代に、なにゆえ有線?
あたしには剣士たちが操縦されてるようにしかみえない。
テレビつけてフェンシングやってたら、あれ、ロボコンやってんの? これNHK?
って思う。
剣士の後ろをコントローラー持ちながらついてくる高専のメガネ男子の姿を探してしまう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「優勝は近畿ブロック代表、舞鶴高専!」
アナウンサーが高らかに叫び、会場いっぱいに鳴りわたる拍手にあわせるように紙吹雪が舞った。
優勝を決めた舞鶴高専のメンバーは抱きあって涙を浮かべ、惜しくも準優勝に終わった都城高専の三人は笑顔で敵チームに惜しみない拍手を送った。
勝者が泣きじゃくり、敗者が清々しい笑顔を見せるその光景が、いかに厳しい戦いだったかを物語っていた。
敗れた都城高専のロボット剣士『ロビンfoot』の完成度は群を抜いていた。バランスよく二足歩行をしながらエアシューターの力で突きだされる剣は、スローカメラでやっととらえられるほどの速さだった。準決勝で受けた剣の影響で左アームが操作不能になるというハプニングさえなければ優勝してもおかしくなかった。
だがロビンの隙を逃さず、ガードが甘くなった左胸に剣をつきつけた舞鶴高専のロボット『ミヤモト634号』の技術はそれ以上に目を見張るものがあった。1秒間に600回以上の振動を与えられた腕からくり出される鋭い攻撃は、ハチドリの羽ばたきから着想を得て、プログラムに改良に改良を加えたという必殺の剣だった。
戦いは終わった。
舞鶴高専の三人は、いまや四人目のメンバーともいえるロボット剣士にも抱擁をおこなった。そして、おつかれさまと労をねぎらうように電源ボタンをオフにしてからロボ剣士の尻のボタンを押した。
尻から伸びた操縦コードは、しゅるしゅるしゅると音を立ててコード入れに吸いこまれてゆき、コントローラーがボディにぶつかってかたんと音を立てた。
掃除機の電源コードから着想を得て、改良に改良を加えたという高い技術が、そこにも活きていた。
いちばんかっこわるいスポーツはフェンシングよね。
たしかに剣士たちは優雅さと強さの両方を兼ね揃えていて、その動きは美しくさえある。
でもさ。
あの人たち、コード出てるでしょ。お尻のあたりから。
なんなのあれ。
いや、わかってる。
剣先が身体に触れたかどうかを判定するためのセンサーでしょ。
それはわかった上で言うんだけど、なんなのあれ。
なに線でつながれてんの。
これだけWi-Fiが飛び交ってる時代に、なにゆえ有線?
あたしには剣士たちが操縦されてるようにしかみえない。
テレビつけてフェンシングやってたら、あれ、ロボコンやってんの? これNHK?
って思う。
剣士の後ろをコントローラー持ちながらついてくる高専のメガネ男子の姿を探してしまう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「優勝は近畿ブロック代表、舞鶴高専!」
アナウンサーが高らかに叫び、会場いっぱいに鳴りわたる拍手にあわせるように紙吹雪が舞った。
優勝を決めた舞鶴高専のメンバーは抱きあって涙を浮かべ、惜しくも準優勝に終わった都城高専の三人は笑顔で敵チームに惜しみない拍手を送った。
勝者が泣きじゃくり、敗者が清々しい笑顔を見せるその光景が、いかに厳しい戦いだったかを物語っていた。
敗れた都城高専のロボット剣士『ロビンfoot』の完成度は群を抜いていた。バランスよく二足歩行をしながらエアシューターの力で突きだされる剣は、スローカメラでやっととらえられるほどの速さだった。準決勝で受けた剣の影響で左アームが操作不能になるというハプニングさえなければ優勝してもおかしくなかった。
だがロビンの隙を逃さず、ガードが甘くなった左胸に剣をつきつけた舞鶴高専のロボット『ミヤモト634号』の技術はそれ以上に目を見張るものがあった。1秒間に600回以上の振動を与えられた腕からくり出される鋭い攻撃は、ハチドリの羽ばたきから着想を得て、プログラムに改良に改良を加えたという必殺の剣だった。
戦いは終わった。
舞鶴高専の三人は、いまや四人目のメンバーともいえるロボット剣士にも抱擁をおこなった。そして、おつかれさまと労をねぎらうように電源ボタンをオフにしてからロボ剣士の尻のボタンを押した。
尻から伸びた操縦コードは、しゅるしゅるしゅると音を立ててコード入れに吸いこまれてゆき、コントローラーがボディにぶつかってかたんと音を立てた。
掃除機の電源コードから着想を得て、改良に改良を加えたという高い技術が、そこにも活きていた。
2015年8月20日木曜日
ハンカチにアイロンをあてるなんて
同僚にA田さんという未婚女性がいる。
そこそこの美人なのだが、常に「彼氏が欲しい」と嘆いている。
「誰か紹介して。収入があって借金と前科がない人」と。
そんなA田女史と話していたときのこと。
ぼくが自分でハンカチにアイロンをあてるという話をすると「えー!キモい」と云われた。
「マメすぎる。女の子みたい」だというのだ。
これには驚いた。マメなんて云われたのははじめただ。
自慢じゃないが、ぼくほどガサツな人間はいないと思っている。
嘘だと思うなら、ぼくを自宅に招待してデニッシュを食べさせてみるといい。足下にこぼれまくったデニッシュにうんざりしてカーペットを買い替えるだろうから。
「じゃあA田さんはハンカチにアイロンあてないんですか」
「あたし? あたしはハンカチ持ってない」
「えー!? じゃあトイレに行ったときはどうしてるんですか」
「ジェットの力で吹き飛ばしてもらう」
「ハンドドライヤーがないトイレもあるでしょ」
「そういうときは服でごしごしするしかないよね」
「男子小学生か」
「だってね。女の人の服にはポケットがないの。だからカバンにハンカチを入れるでしょ。手を洗ったあとに濡れた手でカバンの中をあちこちさぐるでしょ。カバンの中がびしょびしょになっちゃうでしょ。ほら」
「ほら、じゃないですよ。あちこちさぐらなくてもハンカチくらいすぐ出せるでしょ」
「あたしのカバンの中はものがぐちゃぐちゃに入ってるからすぐに出てこないの!」
「……」
ここでA田さん、ひらめいた。
「あ、そっか! ものが多いわりにカバンが小さいからぐちゃぐちゃになるのか! 大きなカバンを買えばいいんだな」
「いやたぶんそういう問題じゃな……」
「あー解決したー!」
「……」
ぼくは自分のことを相当ガサツな人間だと思っていたが、まだまだひよっこだということを思い知らされた。
ちなみにA田女史の最近の悩みは
「食べ物じゃない物もついつい冷蔵庫に入れてしまうので、食べ物の入るスペースがなくなってきた」ことだそうだ。
そこそこの美人なのだが、常に「彼氏が欲しい」と嘆いている。
「誰か紹介して。収入があって借金と前科がない人」と。
そんなA田女史と話していたときのこと。
ぼくが自分でハンカチにアイロンをあてるという話をすると「えー!キモい」と云われた。
「マメすぎる。女の子みたい」だというのだ。
これには驚いた。マメなんて云われたのははじめただ。
自慢じゃないが、ぼくほどガサツな人間はいないと思っている。
嘘だと思うなら、ぼくを自宅に招待してデニッシュを食べさせてみるといい。足下にこぼれまくったデニッシュにうんざりしてカーペットを買い替えるだろうから。
「じゃあA田さんはハンカチにアイロンあてないんですか」
「あたし? あたしはハンカチ持ってない」
「えー!? じゃあトイレに行ったときはどうしてるんですか」
「ジェットの力で吹き飛ばしてもらう」
「ハンドドライヤーがないトイレもあるでしょ」
「そういうときは服でごしごしするしかないよね」
「男子小学生か」
「だってね。女の人の服にはポケットがないの。だからカバンにハンカチを入れるでしょ。手を洗ったあとに濡れた手でカバンの中をあちこちさぐるでしょ。カバンの中がびしょびしょになっちゃうでしょ。ほら」
「ほら、じゃないですよ。あちこちさぐらなくてもハンカチくらいすぐ出せるでしょ」
「あたしのカバンの中はものがぐちゃぐちゃに入ってるからすぐに出てこないの!」
「……」
ここでA田さん、ひらめいた。
「あ、そっか! ものが多いわりにカバンが小さいからぐちゃぐちゃになるのか! 大きなカバンを買えばいいんだな」
「いやたぶんそういう問題じゃな……」
「あー解決したー!」
「……」
ぼくは自分のことを相当ガサツな人間だと思っていたが、まだまだひよっこだということを思い知らされた。
ちなみにA田女史の最近の悩みは
「食べ物じゃない物もついつい冷蔵庫に入れてしまうので、食べ物の入るスペースがなくなってきた」ことだそうだ。
2015年8月19日水曜日
彼氏と彼女の問題
友人に彼女ができた。
「どうなん? うまくいってるの?」
と聞くと、
「うーん……。まあいろいろたいへんやな……」
と、微妙な反応。
「どうしたん?」
「彼女、ちょっと難しいところがあるっていうかさ……」
「たとえば?」
「潔癖症気味でさ、手をつなぐのも抵抗があるみたいなんだよね……」
「そっか。それはたいへんやなー」
「あとすごい猫舌なんだよね……」
「それはべつにええやろ」
「どうなん? うまくいってるの?」
と聞くと、
「うーん……。まあいろいろたいへんやな……」
と、微妙な反応。
「どうしたん?」
「彼女、ちょっと難しいところがあるっていうかさ……」
「たとえば?」
「潔癖症気味でさ、手をつなぐのも抵抗があるみたいなんだよね……」
「そっか。それはたいへんやなー」
「あとすごい猫舌なんだよね……」
「それはべつにええやろ」
2015年8月18日火曜日
【読書感想】首藤 瓜於『脳男』
『脳男』
首藤 瓜於
この“心を持たない男”、何かに似ているなと思ったら『羊たちの沈黙』のレクター博士だ。図抜けた知能、常軌を逸した行動、法の枠を軽々と飛び越える独自の倫理観、そして悪人(凡人の価値観に照らせば)なのになぜか憎めない存在。
まちがいなくレクター博士の影響を大きく受けているに違いない。実際、この脳男というキャラクターは魅力的だ。
にもかかわらず『脳男』が『羊たち』に比べて小粒な印象を受けるのは、 キャラクターの造形にページをかけすぎた結果、肝心の脳男の活躍が少なすぎるからだ。
前半は脳男の説明に終始してしまい、 いよいよその能力を発揮するのは物語が八割すぎてから。やっと脳男に魅力を感じたころには物語が終わっている。おまけに説明に時間をかけすぎたことで、脳男の“得体の知れなさ”は薄れてしまっている。人が誰かに興味を持つのは「わからないから」なのに、脳男は説明されすぎている。
とはいえ、“心を持たない男”という存在はすばらしい発明で、現実味のない会話、やたらと凝りすぎたために読みづらくなってしまっている固有名詞などの欠点をさしひいても十分に読む人を惹きつける。
同じキャラクターが出てくる『指し手の顔』という続編があるらしいが、どうもこの『脳男』はその作品のためのプロローグになってしまったという印象。
謎解きの妙やカタルシスは得られないが、もやっとした不快な読後感はクセになりそう。
ま、説明が長くて疲れてしまったので当分続編は読まんけど。
その他の読書感想文はこちら
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