角田光代・穂村弘 『異性』
歌人・穂村弘と小説家・角田光代が、それぞれ男と女の立場から恋愛についてつづったエッセイ。
交互に連載していたらしいので、お互いの書いたものにコメントしつつ「いや私はこう思うよ」「ぼくはこう思うんだけどあなたはどう?」といったやりとりも見られる。
往復書簡のような形が新鮮。
この形式を考案したのは編集者かな。内容にもあってるし、すばらしい発明。
書いている人たちも楽しかったんじゃないかな。
学生時代に好きな女の子と交換日記のやりとりをしていたんだけど、そのときの愉しさを思い出した。
えー内容だけど、ぼくは穂村弘さんのエッセイが大好きなので穂村パートは楽しく読めた。でもふだんのエッセイより腰が引けているというか、マトモなことを書いているのが残念。
妄想が暴走して、読んでいる側がなんだそりゃもうついていけねえ、ってなるのが穂村弘さんのエッセイのおもしろさだ。
でもこの連載では、半分は角田さんに語りかけるように書いているので、あまりにとっぴなことは書かれていない。
女同士の会話って「意見」とか「思いつき」よりも「共感」のほうが重視されることが多いけど、まさにそんな会話を聞いてるみたい。
「あーあるある」って話に終始しているのがもったいなかったなあ。もっと勝手な”決めつけ”を読みたかった。
角田パートのほうは、うーん......。
ぼくが男性だからなのかもしれないけど、共感もできないし、かといって「この感情をそんなふうにとらえるのか!」っていうような切れ味もなく、穂村パートへの前振りになってしまっているような感じ。
角田「男ってこうだよね」
穂村「いや、それはそうじゃなくて、こうなんだよ」
角田「なるほど、そうだったのか!」
ってな流れが多かったなあ。
ぼくが穂村弘びいきになっているだけかもしれないけど。
いちばん大きくうなずいたのはこんな話(穂村パート)。
そうそう!
これ、ずっと思ってた。
マナーにうるさい人ってなんか卑しいし、ファッションについてあれこれ語る人って微妙にかっこよくない(「すごく」じゃなくて「なんか」「微妙に」だめなんだよね)。
たぶん、王室に生まれ育った人ってマナーに無頓着だと思うんだよね。
その人にとってはそれが自然に身に付いているもので、意識するようなことではないから。
同じように、自然にかっこいい人(顔立ちがいいとかじゃなくて身のこなしが優雅だとか内面の魅力があふれているような人)は、お洒落についてあれこれ語らない。
うるさいのはむしろ、自分を実物以上に良く見せようと必死な″おしゃれ成金″の人たち。
ちょっと高級めのスーツ屋なんかに行くと、店員がみんな「なんか惜しい」。
いいスーツを着こなしているし髪型もキマっているのに、どうもかっこよくない。
素敵だな、と思えるような店員を見たことがない。
「ほら、ばっちりキマっているおれってかっこいいでしょ」ってな心持ちが透けて見えてしまう。
そうかあ、あの人たちはみんな″主電源″が落ちていたのかあ。
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