同僚のA田さんは、美人なのに結婚できないまま30歳を迎えた。
彼女がハンカチを持たずに衣服で濡れた手を拭くことや、食品以外のものをなんでもかんでも冷蔵庫に入れてしまうことは、以前にここで書いた。
そんなA田さん、最近はナッツ類にはまっている。
きっかけは、ぼくがうっかり
「ぼくんちの近くに豆屋さんがあって、いろんなナッツを1袋100円で売ってるんですよ」
と云ってしまったことだった。
ナッツ好きのA田さんは
「お金渡すから買ってきて!
くるみと、カシューナッツと、マカデミアンナッツと、あとピスタチオでいいや」
と、ぼくに300円を握らせて命じた。
あの、A田さん。
100円足りないんですけど。
そんなわけで最近のA田さんは仕事中にずっとナッツをぽりぽりやっている。
ハンカチを持ち歩かないぐらいがさつな人だから、もちろん彼女のデスクの下はピスタチオの殻だらけだ。
「A田さん、ほんとナッツ好きですね」
「そうなのよ。あと、かりんとうも好き。やっぱおやつは自然な食品がいいよね。チョコやスナックと違って食べすぎても太らないし」
「いやいや。ナッツはすっごく高カロリーですよ。脂肪も多いですし。種子ですからね」
「そうなの!? 知らんかったー。ただでさえ、最近腹出てきたのになー」
ナッツが高カロリーだと知ったA田さんは、しかし大好きなナッツを控えることもできず、斬新な対策を打ち出した。
それは「ナッツをかじらずに舐めつづける」という方策だった。
「ほら、かじるからついつい食べすぎちゃうのよね。舐めてたら溶けるまでに時間かかるから、食べる量を抑えられるでしょ」
「いや、そうかもしれないですけど……。ナッツって、あの食感がおいしいんじゃないですか。舐めてもおいしくないでしょ」
「いいの! どんな食べ方してもあたしの自由でしょ!」
とはいうもののA田さん、ほお袋にくるみを溜めこむのはやめてください。
仕事の話をしてるときに、口から溶けかけのくるみが飛び出すんで。
あと、お皿がないからってお菓子をティッシュに乗せて机に置いとくのも、ほんとやめてください。
近くの席の人たちが、ティッシュに乗ったかりんとうを見てぎょっとした顔してますから。
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