2023年7月31日月曜日

【読書感想文】東野 圭吾『レイクサイド』 / すっきりしない良作ミステリ

レイクサイド

東野 圭吾

内容(e-honより)
妻は言った。「あたしが殺したのよ」―湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件。親たちは子供を守るため自らの手で犯行を隠蔽しようとする。が、事件の周囲には不自然な影が。真相はどこに?そして事件は思わぬ方向に動き出す。傑作ミステリー。


 舞台は湖畔の別荘。中学受験の合宿で、四人の子ども、その両親、塾講師が泊まっている。そこに主人公の愛人が訪ねてくる。

 その夜、出かけていた主人公が別荘に帰ってくると、愛人の死体があった。妻が言う。「あたしが殺したのよ」と。受験前に騒がれることを嫌った保護者たちは、死体を隠して事件を隠蔽しようとする……。



 ミステリを読んでいると「そううまくはいかんやろ」とおもう作品によく出くわす。

 そんな万事計画通りに話が運ばんやろ、そうかんたんに人を殺さんやろ、そううまく目撃者が現れんやろ、そんなにたやすく本心を吐露せんやろ、そうかんたんに犯人がべらべらと犯行について語らんやろ。

『レイクサイド』がよくできているのは、中盤まではその「そううまくはいかんやろ」レベルのミステリなんだよね。

 そこにいあわせた人が死体遺棄に手を貸すのは不自然じゃないかな。いくら仲が良いといっても、他人のためにそうかんたんに犯罪に手を染めるか……? 死体隠蔽工作も順調に進む。目撃者が現れるが、それもうまく仲間に引き込むことができる。

 できすぎじゃない?

 ……という違和感は、ちゃんと後半で解消される。なるほどなるほど、ちゃんと読者の「そううまくはいかんやろ」を想定して、それすらも謎解きに利用している。さすが東野圭吾氏だなあ。押しも押されぬ大人気ミステリ作家に対して今さらこんなこと言うのもなんだけど、上手だなあ。


 また、単なる謎解きに終始させず、夫婦、親子などの関係が生み出す愛憎入り混じった感情もストーリーに盛り込んでいる。

 登場人物が多い(現場にいるのは14人)のにそれほどややこしさも感じさせないし、つくづくうまい小説だった。




 ちなみに、後味は悪い。登場人物は主人公を筆頭にみんな身勝手だし、保身ばかり考えていて行動もまったく道徳的でない。また、犯人の動機については最後まで明らかにされないし、犯行の結末も不明。つまり、まったくもってすっきりしない。

 でも個人的にはこういうのがけっこう好きなのよね。読んだ後にもやもやが残る小説は嫌いじゃない。

 悪い犯人が捕まりましたメデタシメデタシ、っていうわかりやすい物語が好きな人にはおすすめしません。


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2023年7月28日金曜日

牧場のここがヤバい

 某牧場について調べていると、「〇〇牧場のここがヤバい!3つのヤバいこと」という記事が見つかった。

 読んでみると、「1.広すぎてヤバい!」「2.動物との距離が近すぎてヤバい!」と書かれており、あーなるほど、悪口を言っているように見せて耳目を集めて実は褒めたたえるタイプの記事ね、とおもいながら読んでいたら「3.元経営者が大麻栽培で逮捕されていてヤバい!」とあった。

 急転直下でほんまにヤバいネタくるんかい!



2023年7月27日木曜日

道の訊き方訊かれ方

 歩いていたら、若い女性から「○○駅はあっちであってますか」と尋ねられた。

 若い女性から声をかけられるなんて何かの勧誘以外に経験がないのでとっさに勧誘かとおもって無視しようしてしまい、その後「あっ、道訊かれてる、ちゃんと答えないと、わっ、なんていおう」とすっかりあわててしまい、結局「あ、はい、あっちであってます!」と相手の言葉をオウム返しにしただけだった。


 ぼくはふだん道を訊かれない。訊かれることもあるが、変なタイミングのときだけだ。

 中国に行ったときはなぜか中国人からよく道を訊かれた。なんで外国人に訊くねん! Tシャツにサンダルとかで歩いてたから現地の人っぽかったのかなあ。

 旅先で訊かれることも多い。逆に、見知った道ではほとんど訊かれない。知ってる道では歩くのが速いからかもしれない。旅先だときょろきょろしながらゆっくり歩くので、隙が多くて声をかけやすいんだろう。

 数年前、はじめて行く土地だったのでスマホのアプリで地図を見ながら歩いていたら若い男性から「すみません、〇〇って店知ってますか?」と尋ねられた。なんで地図見ながら歩いてるやつが土地勘あるとおもうんだよ!


 そんなわけで、家の近所では道を訊かれることがめったにない。だから道を訊かれて動転してしまった。

 たぶんぼくが妻子と歩いてたからだろう。「妻子と歩いているからそこそこまともな人」と判断されたにちがいない。ありがたいかぎりだ。逆にいうと、一人で歩いているときは不審者だということだ。

 あわてて「あ、はい、あっちであってます!」と答えた後、ああしまったなあ、もっと上手に説明できたなあ、と後悔した。

「この道をまっすぐ行くと、信号を二つほど超えたあたりでファミリーマートが見えますので、そこを右手に入ったらすぐ駅ですよ」と言ってあげればよかったなあ。落ち着いたらうまく説明できるんだけどなあ。でもとっさに訊かれたからなあ。


 自分の答え方が悪かったと反省すると同時に、道を訊いてきたあの女性の訊き方も悪かったんじゃないか? とおもう。

 開口一番「○○駅はあっちであってますか」だぜ。

 こっちは見知らぬ人に話しかけられただけでびっくりしてるのに、いきなり本題に入らないでほしい。

 ちゃんと「あのすみません」「ちょっと道を訊きたいんですけど」とクッションを置いてほしい。そしたらこっちも「今から道を訊かれるんだな」と心の準備ができるから。

 理想を言えば、話しかける前に、「きょろきょろする」「困った顔でこちらを見て目をあわせる」というステップもほしい。

 きょろきょろして、困った顔でこちらを見て目を合わせて、「あのすみません」と声をかけて、「ちょっと道を訊きたいんですけど」とこれから話すことのテーマを提示して、しかるべきのちに「○○駅はあっちであってますか」と訊いてほしい。

 それが道尋ね道というものだ。


2023年7月26日水曜日

【読書感想文】鴻上 尚史『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』 / 死ななかった優秀な特攻兵

不死身の特攻兵

軍神はなぜ上官に反抗したか

鴻上 尚史

内容(e-honより)
1944年11月の第一回の特攻作戦から、9回の出撃。陸軍参謀に「必ず死んでこい!」と言われながら、命令に背き、生還を果たした特攻兵がいた。

「世紀の犬死に」「ばかが考えた自軍の戦力を減らすだけの愚策」でおなじみの日本軍の特攻隊(あれをちょっとでも美化することのないようにきつめの言葉で表現しています)。

 そんな「死ぬまで還ってくるな」の特攻隊員として9回出撃命令を受けながら、くりかえし生還し、終戦を迎え、2016年まで生きた兵士がいた。それが佐々木友次さん。すごい。

 佐々木友次さんは何を考え出陣したのか、そしてどうやって生き残ったのかに迫ったルポルタージュ。



 まず知っておかないといけないのは、特攻(爆弾を積んだ飛行機での体当たり)は人命を軽視しているだけでなく、もっとシンプルな理由で効率の悪い作戦だったということだ。

 体当たりだと甲板しか攻撃できなくて戦艦の心臓部にはダメージを与えられない、爆弾を落とすよりも飛行機で突っ込むほうがスピードが落ちるので衝突時のエネルギーが小さくなる、チャンスが一回しかないので敵艦への接近が難しくても無理してつっこまなくてはならない、などの理由だ。

 そのため特攻をやめるよう進言していた人たちもいた。命が惜しいからではない(それもあっただろうが)。戦術的に無駄だからだ。

 鉾田飛行師団の研究部の岩本大尉と福島大尉は、効果的な爆弾、つまり海軍のような徹甲爆弾を作るようにと再三、陸軍の航空本部と三航研(第三陸軍航空技術研究所)に求め続けた。けれど、三航研は効果的な爆弾を作る代わりに体当たり攻撃を主張し始めた。福島大尉は激しい怒りと共に、三度、航空本部と三航研に対して、「体当たり攻撃がいかに無意味で効果がないか」という理論的な反論の公文書を提出した。
 だが、三航研は、理論的に都合が悪くなると、「崇高な精神力は、科学を超越して奇跡をあらわす」と技術研究所なのに精神論で体当たりを主張した。福島大尉は三航研はずるいと憤った。効果のある爆弾が作れないから、体当たりをやるよりしかたがないと言っている。それはつまり、技術研究所の職務放棄だと。

 特攻はコストだけ大きくてほとんどリターンのない作戦だったのだ。まさにばかが考えた作戦。

 しかし、最初のばかが考えた作戦を正当化するため、初回の特攻の戦果は捏造されて実際よりもずっと大きく報告された。そのせいで「特攻は有効だ」という誤った評価が定着してしまった。

 また、ばかはえてして手段と目的をまちがえる。「勝つためには死ぬこともおそれない」だったのが「死ぬためなら勝たなくてもいい」になってしまう。特攻はその典型だ。

 これは現代でも同じだけどね。「売上を上げるために元気を出せ」が「元気を出していれば売上を上げてなくてもいいし、あいつは売上を上げていても元気がないからダメだ」になってしまうし、「試合で勝つために声を出せ」が「プレーに悪影響が出てもいいから声を出せ」になってしまう。

 陸軍参謀本部は、なにがなんでも一回目の体当たり攻撃を成功させる必要があった。
 そのために、技術優秀なパイロットを『万朶隊』に選んだ。
 けれど、有能なパイロット達は優秀だからこそ、パイロットとしてのプライドがあった。爆弾を落としてアメリカ艦船を沈めるという目的のために、まさに血の出るような訓練を積んだ。「急降下爆撃」や「跳飛爆撃」の訓練中、事故で殉職する仲間を何人も見てきた。鉾田飛行師団では、毎月訓練中に最低でも二人の殉職者を出していた。
 技術を磨くことが、自分を支え、国のために尽くすことだと信じてきた。だが、「体当たり攻撃」は、そのすべての努力と技術の否定だった。
 なおかつ、与えられた飛行機は、爆弾が機体に縛りつけられていた。参謀本部は、もし、操縦者が卑怯未練な気持ちになっても、爆弾を落とせず、体当たりするしかないように改装したのだ。

 参謀本部にとって、特攻は何としても成功させる必要があった。勝利のためではない。自分たちが提案した戦術が有効だったと示すため。つまりは保身のために。

 だから経験豊富で優秀なパイロットを特攻兵に選んだ。優秀だから、特攻なんかしなくても爆撃に成功できるようなパイロットを。



「特攻なんかしなけりゃよかったのに」と今いうのはかんたんだ。誰だってそう言うだろう。

 だが、次々に兵士が死んでゆき、誰もが命を投げうって戦い、死を恐れるのはなによりもみっともないことだとずっと教育され、上官の命令は絶対だという軍隊の中にあって、「特攻は愚策だ」と言うのはとんでもなくむずかしいことだったろう。仮に言ったとしても何も変えられなかっただろう(変えられたのは昭和天皇ぐらいだろう)。


 だが、そんな時代にあってもちゃんと自分でものを考え、ばかな命令よりも道理を優先させた兵士もいた。

「もうひとつ、改装をした部分がある。それは爆弾を投下できないようになっていたのを、投下できるようにしたことだ」
 佐々木達は、思わず息を飲んだ。そして、お互いに顔を見合わせた。信じられない言葉だった。
「投下すると言っても、投下装置をつけることはできないので、手動の鋼索(ワイヤーロープ)を取り付けた。それを座席で引っ張れば、電磁器を動かして爆弾を落とすことができる。それならば、1本にしたツノは、なんのために残したかといえば、実際には、なんの役にも立たない。これも切り落としてしまえばよいのだが、それはしない方がよい。というのは、今度の改装は、岩本が独断でやったことだ。分廠としても、四航軍(第四航空軍)の許可がなければ、このような改装はできない。しかし、分廠長に話をして、よく頼み込んだら、分かってくれた。
 分廠長も、体当たり機を作るのは、ばかげた話だと言うのだ。これは当然のことで、操縦者も飛行機も足りないという時に、特攻だといって、一度だけの攻撃でおしまいというのは、余計に損耗を大きくすることだ。要は、爆弾を命中させることで、体当たりで死ぬことが目的ではない」
 岩本隊長は次第に興奮し、語調が熱くなった。
「念のため、言っておく。このような改装を、しかも四航軍の許可を得ないでしたのは、この岩本が命が惜しくてしたのではない。自分の生命と技術を、最も有意義に使い生かし、できるだけ多くの敵艦を沈めたいからだ。
 体当たり機は、操縦者を無駄に殺すだけではない。体当たりで、撃沈できる公算は少ないのだ。こんな飛行機や戦術を考えたやつは、航空本部か参謀本部か知らんが、航空の実際を知らないか、よくよく思慮の足らんやつだ」

 なんて勇敢で、なんて理性的で、なんとかっこいい人だろう。

 軍の上層部にいるのがこんな人ばかりだったなら、日本もあそこまで手痛くやられることはなかったんだろうな。

 残念ながら、軍の許可を得ずに特攻機から爆弾を切り離せるよう命じた岩本益臣大尉は、この後すぐに戦死してしまう。戦闘で、ではない。「司令官が宴席に岩本を呼びつけたのでそこに向かう途中で敵機に撃たれて死亡」である。司令官が戦地での宴席に招いたせいで優秀な隊長を失ったのだ。なんとも日本軍らしい話だ。



 この岩本隊長の機転や、整備兵や他隊員のサポート、本人の飛行技術、そして幸運にめぐまれて佐々木友次さんは何度も出撃しながらそのたびに生還した。

 敵艦の爆撃に成功するなど戦果をあげたが、佐々木友次さんの軍での立場はどんどん悪くなる。生還したからだ。

 戦果を挙げなくても命を落とした兵士が英霊としてたたえられ、戦果をあげても生きて還ってきた兵士はなじられる。

 どこかで聞いたことのある話だ。そう、だらだら仕事をして残業する社員のほうが、早く仕事をこなして定時に帰る社員よりも評価される現代日本の会社だ。

  第四航空軍から特別に来ていた佐藤勝雄作戦参謀が話を続けた。「佐々木伍長に期待するのは、敵艦撃沈の大戦果を、爆撃でなく、体当たり攻撃によってあげることである。佐々木伍長は、ただ敵艦を撃沈すればよいと考えているが、それは考え違いである。爆撃で敵艦を沈めることは困難だから、体当たりをするのだ。体当たりならば、確実に撃沈できる。この点、佐々木伍長にも、多少誤解があったようだ。今度の攻撃には、必ず体当たりで確実に戦果を上げてもらいたい」
 天皇に上聞した以上、佐々木は生きていては困る。後からでも、佐々木が特攻で死ねば、結果として嘘をついたことにならない。そのまま、佐々木は二階級特進することになる。上層部の意図ははっきりしていた。
 佐々木は答えた。
「私は必中攻撃でも死ななくてもいいと思います。その代わり、死ぬまで何度でも行って、爆弾を命中させます」
 伍長が大佐や中佐に向かって反論するのは、軍隊ではあり得なかった。軍法会議の処分が当然のことだった。

 完全に手段と目的が入れ替わっている。戦果をあげることではなく死ぬことが目的になっている。

 特攻で死んだと天皇に報告した以上、生きていられては困る。上官の面子のために優秀な兵士を殺そうとする。終戦間際にはなんとこっそりと佐々木さんを銃殺する計画まで立てられていたという。

「戦果をあげて無事で帰還する兵士」ってふつうならもっとも優秀な兵士なのに、それを殺そうとする軍。負けて当然だよな。



 佐々木さんはもちろんだが、この本を読むといろんな兵士がいたんだなということを知ることができる。あたりまえなんだけど。

 命令をこっそり無視する兵士、特攻命令に逆らった兵士、嘘をついて引き返した兵士、そして「自分も後に続く」と部下たちを出撃させながら自分だけ台湾に逃げた司令官……。

 小説なんかで「国や大切な人を守るためにと胸を張ってすがすがしい顔で出撃してゆく特攻兵」のイメージがあるが、当然ながらあれはフィクションだ。みんな生にしがみついていたのだ。死んでいった人たちももっと生きたかったと強い無念を抱きながら死んでいったのだ。

 じゃあなぜ「胸を張って出撃していった特攻兵」というイメージがでっちあげられたかというと、生き残った者たちの罪悪感をやわらげるためだろう。他人を犠牲にして生きていることに耐えられなかった者たちが「あいつらは誇り高く死んでいった」とおもいこむことにしたんだろう。今でもそういう小説がウケるからね。

  第四航空軍から特別に来ていた佐藤勝雄作戦参謀が話を続けた。「佐々木伍長に期待するのは、敵艦撃沈の大戦果を、爆撃でなく、体当たり攻撃によってあげることである。佐々木伍長は、ただ敵艦を撃沈すればよいと考えているが、それは考え違いである。爆撃で敵艦を沈めることは困難だから、体当たりをするのだ。体当たりならば、確実に撃沈できる。この点、佐々木伍長にも、多少誤解があったようだ。今度の攻撃には、必ず体当たりで確実に戦果を上げてもらいたい」
 天皇に上聞した以上、佐々木は生きていては困る。後からでも、佐々木が特攻で死ねば、結果として嘘をついたことにならない。そのまま、佐々木は二階級特進することになる。上層部の意図ははっきりしていた。
 佐々木は答えた。
「私は必中攻撃でも死ななくてもいいと思います。その代わり、死ぬまで何度でも行って、爆弾を命中させます」
 伍長が大佐や中佐に向かって反論するのは、軍隊ではあり得なかった。軍法会議の処分が当然のことだった。


 ぼくは、特攻兵が犬死にしたがるバカばっかりじゃなかったと知ってちょっと安心した。ちゃんと、生き残るため方法を考え、生き残るために自分ができるかぎりのことをしていたのだ。日本軍は組織としては大バカだったし参謀や司令官には大バカが多かったけど、命を捨てない賢人たちもちゃんといたのだ。

 佐々木友次さんや岩本益臣大尉のような人が多ければ、組織も社会もずっといいものになるんだろう。

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2023年7月24日月曜日

将来なりたい職業は公務員

「小学生が将来なりたい職業」あるいは「親が子どもになってほしい職業」ってあるじゃない。

 定番だと野球選手とか、最近だとYouTuberとか。

 あれを見るたびに気になるのが、職業の分類がめちゃくちゃなこと。


「野球選手」「医師」「警察官」「保育士」みたいなのに混ざって「公務員」「会社員」「社長」みたいなのがある。

 いやそれ職業なのか? [職業]というより、[雇用形態]じゃないか?


 さらに気になるのが、ランキングのうちかなりの職業が重複していること。かなりの職業が「公務員」や「会社員」に含まれている。

「警察官」や「消防士」はもちろん公務員だし、「教師」「保育士」「看護師」も「公務員」が多い。

 項目に「公務員」があるのに「看護師」を選んでいる人は、私立病院の看護師を希望しているってことだよね。それだったら「公務員」に対するものとして「団体職員」のほうがふさわしくない?

 それとも自営? 自営の看護師? なにそれ、ブラックジャックみたいにモグリで採血するフリーの凄腕看護師?


「パイロット」「パティシエ」「薬剤師」なんかも会社員や団体職員が多い。

 いやおれは組織に属さない孤高の薬剤師として生きていくんだ、って人も中にはいるかもしれませんね。食っていけるといいですね。ぼくだったらそんな人に薬を処方してもらいたくないですけど。


 ってわけで、「公務員」「会社員」にあわせてランキングを作り直したら、

1位:会社員(正社員)

2位:自営業

3位:公務員(正規)

4位:会社役員

5位:団体職員

6位:契約社員

7位:パート・アルバイト

8位:派遣社員

9位:公務員(非正規・嘱託)

10位:無職(扶養)


 みたいなランキングになるんじゃないかな。いやあ、夢があるねえ。