2017年5月4日木曜日
ぼくの考えた地獄
鋭いかぎ爪のついた大きな金棒を持った鬼が背後から追いかけてくる。
人がすれちがえるかどうかという細い道を走って逃げる。
道の脇には煮えたぎった血の池。
逃げた先には扉があるが、扉の前には多くの亡者たちが立ち並んでいるので通れない。
ぐんぐん背後にせまってくる鬼。
もうだめだと思った瞬間、目の前に突如として階段が現れる。
あわてて階段をかけあがる。
息が苦しい。ぜえぜえ言いながら階段を走ってのぼる。
もう限界に近いが、この階段の先には安全な場所がある。そこへは鬼はやってこない。
やっとのことで階段をのぼりきった。
安全な場所へと駆けこもうとするが、そこにも亡者たちが立ちふさがっていて通れない。
あなたはついに鬼に追いつかれてしまい、身を引き裂かれる苦しみを味わうことになる……。
これが、駅の階段のすぐ先やドアの前など、人通りの多いところで立ち止まる人が落ちると言われている
「大叫喚混雑地獄」です。
説教をするのが苦手だ
説教をするのはすごく苦手だ。
自分ができの悪い人間であることを知っているから、とても他人に偉そうなことなんて云えない。
先週、本格的に説教を施した。
ふだん叱らないぶん説教するときのぼくはとてもしつこい。
叱った相手は同僚のAさん(30代女性)。
「考えられないっ!」
と長々と説教をしていると、上司から
「犬犬くん、長くなるようならその話は仕事終わってからにして。それとあんまり仕事中にアイスクリーム食べないように」
と叱られた。
叱っていたはずがいつのまにかぼくが叱られている……。
やっぱり、説教は苦手だ。
自分ができの悪い人間であることを知っているから、とても他人に偉そうなことなんて云えない。
先週、本格的に説教を施した。
ふだん叱らないぶん説教するときのぼくはとてもしつこい。
叱った相手は同僚のAさん(30代女性)。
「考えられないっ!」
「すみません」「そういうことしますか。社会人、いや人間としてぜったいにやっちゃいけないことでしょう」
「すみません。つい……」「ついで済まされることじゃないですよ、会社の冷凍庫のアイスクリームを勝手に食べるなんて!」
「犬犬さんのって知らなかったから……」「だとしても食べちゃだめでしょ。自分以外の人が買ったアイスは」
「はい、反省してます」「ぼくだって、ただのアイスクリームならここまで云いませんよ。でもハーゲンダッツですよ、ハーゲンダッツ。ハーゲンダッツっていったら税法上は固定資産ですよ」
「いやそれは……」「言い訳しない!」
「でも、冷凍庫の奥の方にあったから、誰かがずっと前に買って忘れてるのかと思ったんですよ」「ピノとかスイカバーならそういうこともあるかもしれません。でもハーゲンダッツ忘れますか? 結婚記念日忘れても、ハーゲンダッツの存在は片時も忘れないでしょ」
「結婚記念日も覚えといたほうがいいですよ」「今はそんな話してるんじゃないんです。まだね、百歩譲ってですよ、バニラ味とかストロベリー味なら忘れることもあるかもしれません。『ミニカップ・マルチパック 6個入』を買って1個忘れるってことはありえます。でもあなたが食べたのはマカデミアンナッツ味ですよ! マルチパックにマカデミアンナッツ味が入ってないことぐらい常識じゃないですか。つまりこれはマカデミアンナッツ味を食べたくてわざわざ買ってきたものだってことぐらい、ちょっと考えればすぐわかるでしょうよ!」
「たかがアイスの1個なのにすごく理屈っぽいな……」「たかがとはなんですか。これ、夫婦間でやったらまちがいなく離婚事由になりますよ!」
「すみません、買って返しますんで」「そういうことじゃないんですよ! 見てください、この紅茶。たった今淹れた紅茶です。さあ今からティータイムだと思って紅茶を用意して、うきうきしながら冷凍庫を開けたらからっぽ。この絶望感、わかりますか!? ぼくがなんのために仕事をしてると思って……」
と長々と説教をしていると、上司から
「犬犬くん、長くなるようならその話は仕事終わってからにして。それとあんまり仕事中にアイスクリーム食べないように」
と叱られた。
叱っていたはずがいつのまにかぼくが叱られている……。
やっぱり、説教は苦手だ。
読書感想を書きつづけてたら少しだけ見えてきた景色
読んだ 本ほぼすべての感想をブログに書くようになって、1年ちょっと。
書いた感想は70冊くらい。
継続的に書いているうちに、自分の中にいろいろと変化があった。
感想を書くのにも慣れてきたし、同時に本の読み方も変わってきた。
どういう 文体で書けばいいかよくわからなかった。
「~だ」「~である」で書いていると、すごく硬派な文章になった。
それで学術的に価値のあることを書けるんだったらいいけど、学術論文みたいな文体のわりに中身は薄っぺらい。
これはすぐにやめた。
誰かに語りかけるように書こうと思って、しばらくは「~です」「~ます」で書いていた。
これは書きやすかった。
すらすら書ける。
ところがしばらくして、あたりさわりのないことしか書けないことに気がついた。
丁寧語はよそいきの言葉だ。本音を語るのには向いていない。
くだけた言葉で書くようにした。
「親しすぎない友人」に語りかけるようなイメージ(親しい友人だとくだけすぎる)。
わざと乱暴な言葉遣いもまじえた。
「知らんがな」
「あほとちゃうか」
ぞんざいな語り口調を出すのにはたまに方言を混ぜるといいことを発見した。ぼくは関西で生まれ育ったので関西弁。
これがちょうどよかった。
筆が進むし、思いきったこともずばずば書ける。
書く前は思いもよらなかったことがぽんぽん湧いてくる。
「見た目を変えると中身もついてくる」という言葉がある。
真実だと思う。
正座して背筋を伸ばしてエロいことを考えるのは難しい。だらしなく寝そべっているときは自然にエロい妄想が浮かんでくるのに。
文章も同じだ。
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エロいことを考えるのに適したポーズ |
何にも 書くことねえなあ、ということがはじめのうちはあった。
それでもむりやり感想文を書いているうちに、「あまり書くことがないときの書き方」が見つかってきた。
本に書いてあることに、かならずしも真正面からぶつからなくていいということに気づいた。
ほんの1行でも引っかかるところがあれば、それをフックに話を広げていけばいい。
褒めるところのないおっさんに対して
「メガネかけてるんですね。あたしメガネの男性好きなんですよ~」
と言っておけば、おっさんのことは一言も褒めてないのに相手は好意を持たれたような気になる。
あえていうならこんな感じかな。ちがうかな。
本の読み方も 変わってきた。
読書感想を書くようになって気づいたんだけど、本を読んでいるときって70%くらいしか集中してない。
本の内容を理解しようとしながらもけっこう発想が飛躍している。
よしなしごとが心に浮かんでは消えてゆく。
そういうとりとものないことって読み終わったときには忘れていた。
読書感想を書くようになって、そういう「あれやこれや」を捉えてメモをとるようした。
これまではすぐに消えてなくなっていた思念の燃えかすが、残るようになった。
たいして読者の多くない感想文だけど、書きつづけることで、少なくとも自分ひとりは楽しませることができるようになった。
たいして読者の多くない感想文だけど、書きつづけることで、少なくとも自分ひとりは楽しませることができるようになった。
強制されずに 書く読書感想文は、読書をもっと楽しいものにしてくれるね。
昭和18年の地図帳ってこんなんでした
今の地図と見比べてみるとおもしろかったので、画像を載せてみる。
(ぼくのコメントには誤った知識もあるかもしれません。お気づきの方はコメント欄でご訂正いただけるとありがたいです)
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表紙。『新選大地圖 外國篇』 |
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奥付 |
昭和18年7月発行。
太平洋戦争まっただなかの、戦局が悪くなってきた頃だね。
この頃は国境がめまぐるしく変わってたはずだから、地図帳を作る会社はたいへんだったろうね。
刊行は中等學校教科書株式會社。
旧制中等学校ということは、今の高等学校に相当。
ただし中等学校への進学率は10%前後だったそうなので(Wikipedia)、今でいうと大学院を出ている人ぐらいの高学歴といっていいでしょう。
定価は1円30銭。
岩瀬 彰 『「月給100円サラリーマン」の時代』 によると、昭和10年前後の物価は2,000倍して考えるとよいとのことなので、1円30銭は今の2,600円ぐらい。
けっこう高いね。
でも今でも大学のテキストは数千円するのがふつうだから、そんなもんかな。
国旗と帝国支配図
国旗。
表紙はぼろぼろになってるけど、中はカラーできれい。
まだ物資不足がそこまでひどくなかったのかな。
おお、ナチスの鉤十字!
映画や漫画でしか見たことなかったから、こうやって地図帳で見ると「ほんとにあったんだなあ」と思ってしまう。
あったんだなあ。あたりまえなんだけど。
イタリアも今とはちがうね。
今は共和国だけどこのころは王国だったんだね。ムッソリーニ!
80年代生まれのぼくにとっては、ソ連の旗はぎりぎり見覚えがある。
日本は日本帝國なんだね。
中華民国の旗はすごいね。「和平 反共建國」って書いてある。
国旗にこんなに思想の強いメッセージを書いていいんだ。
残念ながら「反共」の夢はかなわず、この後中国共産党に敗れるんですが。
アメリカの国旗も今とは微妙に違うね。星の配置が。
このころはアラスカやハワイがなくて、48州だったそう。
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国々が「どの帝国の植民地か」を色分けした地図。 |
特に東南アジアやアフリカの植民地化されっぷりがすごいね。
これだけ帝国主義の世の中だったら、日本が「うちも植民地持たないと!」って気持ちになっちゃうのも無理ないような気もするなあ。
「みんなが株で儲けてる」って聞いたら「よくわかんないけど株買ったほうがいいかも!」ってなるような感じかな。
東アジア
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アジアの地図。 |
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(拡大)極東 |
朝鮮半島や台湾は日本領だし、中国は中華人民共和国じゃなくて中華民国。
満州国もけっこうな大きさを占めてる。
中国とモンゴルの間に「蒙古聯合」ってのがあるね。
中華民国の傀儡政権があったらしいんだけど、学校で習った記憶がないなあ……。
今の東アジア(Google Mapより) |
東南アジア
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(拡大)東南アジア |
ベトナム・ラオス・カンボジアは、フランス領インド支那。
インドネシアは、オランダ領東インド。
マレーシアは、イギリス領(この頃は日本占領下かな?)
バングラデシュ・パキスタンも存在しないね。インドの一部みたい。
これだけ帝国主義の嵐が吹き荒れているのに、小国のブータンやネパールは独立国なんですね。
内陸部だったから狙われにくかったのかな?
今の東南アジア(Google Mapより) |
中東
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中東 |
レバノン、ヨルダン、そしてイスラエルの独立前だね。
シリアはあるけどフランス領みたいです。
アラブ首長国連邦もないんだね。トルシァル オーマンって書いてある。
エルサレム付近は、この地図だとどこの領地になってるのかよくわからないね。
「イギリスの三枚舌外交」とやらのせいでややこしくなってたところだったからかな。
今の中東(Google Mapより) |
ヨーロッパ
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ヨーロッパの地図 |
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(拡大)中央ヨーロッパ |
チェコとオーストリアはドイツの一部、ポーランドも「独ソ分割線」によって分断されてる。
あとは東欧がソ連の一部なのと、ユーゴスラヴィアが分裂前なのを除けば、意外と国境線は今と変わらないね。
もっとドイツが大きくなってるのかと思った。
昭和18年だと、もうアメリカも参戦していてドイツの勢いが弱まっていた時期なんだね。
今のヨーロッパ(Google Mapより) |
アフリカ
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アフリカ |
最後にアフリカだけど、このころのアフリカ大陸はほぼ全土がヨーロッパの帝国の植民地化にある状況だね。
独立国だったのは(赤字で書いているところ)はエジプトとリベリアだけかな?
今のアフリカ(Google Mapより) |
北米、南米、オセアニア、南極
今とあんまり変わってないので割愛。
気が向いたら第2回やるかもしれない(『日本篇』の地図帳もあるし)。
地図って大事
理由のひとつに、位置関係がよくわからなかったということがある。
「ナポレオンはスペインからポーランドまで支配下においた」
「チグリス川とユーフラテス川の流域に栄えたメソポタミア文明」
なんて記述を読んでも、地理も苦手だったのでどのぐらいの広さなのかぴんとこなかった。
ポーランドがどこかわからないし(いまだにときどきポルトガルとごっちゃになる)。
たまに教科書に地図も載ってたけど、ごく一部の、それも昔の地図を見ても、結局位置関係はうまくつかむことができなかった。
歴史の教科書には年表がついているけど、年表よりも地図があったほうが理解の助けになるんじゃないかな。
各年代ごとの地図を用意しようと思ったら地図帳が何百冊も必要になるけど、今ならパソコンでかんたんに見ることができる( GeaCron とか)。
右モニターに教科書、左モニターに地図、みたいな歴史の授業をやったらすごく理解が進みそうだなあ。
2017年5月2日火曜日
ヒジはどうしてあるの?
同僚のMさんが、息子(4歳)から「ヒジはどうしてあるの?」と訊かれて答えに窮したそうだ。
ヒジはなぜ存在するのか。
今まで考えたことがなかった。
なるほど、これはなかなかの難問だ。
「で、なんて答えたんですか」
Mさん「ヒジがないと曲げられなくて困るでしょ、って」
「それは結果であって理由じゃないですね。回答として不正確だと思いますよ」
「それ、そばで聞いてた旦那にも同じこと云われた。うちの旦那も犬犬さんと同じぐらい理屈っぽいから」
「ほめ言葉として受け取っておきます」
「犬犬さんだったらなんて答えるんですか」
「遺伝子情報にヒジを作ることが組み込まれているから……」
「4歳児にそんなこと云ってもわかるわけないじゃない」
「じゃあ物語を作って聞かせたらどうですか。よくあるじゃないですか、塩の出る臼が海底に沈んで海の水はしょっぱくなりましたとさ、みたいなこどもだましの昔話」
「嫌な言い方だねえ。たとえばどんなの?」
「えーっとそうですね。
むかしむかし、人間の手にはヒジがありませんでした。
その頃の人は食べ物をつかんでも口に運ぶことができず、不便な生活を強いられていたのです」
「あ、なんかそれっぽい」
「あるときその様子を見ていた神様が不憫に思い、人間にヒジを授けたのです」
「うんうん」
「人間たちは大喜びしました。
これで自分の口に手が届くぞ!
それまで人間たちは、ペアを組んでお互いの口まで食べ物を運んであげていました。
ヒジができてからというもの、人々の暮らしは格段に便利になりましたが、同時に助け合いの精神が希薄になり、人心はどんどん荒廃してゆき、やがては曲がるようになった腕で弓矢や銃を持って互いの命を……」
「ちょっとちょっと! ほのぼのした昔話だったのに途中から急に殺伐としてる!」
「便利さと引き替えに精神的な豊かさが失われるという教訓のこもったいい話だと思うんですけどねー」
「却下」
いったいどう答えるのが正解なんだろう?
うちの妻にも訊いてみたところ、
「ヒジが何かの目的を持って作られたわけじゃなくて、曲がる部分がヒジと名付けられただけ。だからその質問自体がナンセンス」
というお答えが返ってきました。
うーん、科学の子。
ヒジはなぜ存在するのか。
今まで考えたことがなかった。
なるほど、これはなかなかの難問だ。
「で、なんて答えたんですか」
Mさん「ヒジがないと曲げられなくて困るでしょ、って」
「それは結果であって理由じゃないですね。回答として不正確だと思いますよ」
「それ、そばで聞いてた旦那にも同じこと云われた。うちの旦那も犬犬さんと同じぐらい理屈っぽいから」
「ほめ言葉として受け取っておきます」
「犬犬さんだったらなんて答えるんですか」
「遺伝子情報にヒジを作ることが組み込まれているから……」
「4歳児にそんなこと云ってもわかるわけないじゃない」
「じゃあ物語を作って聞かせたらどうですか。よくあるじゃないですか、塩の出る臼が海底に沈んで海の水はしょっぱくなりましたとさ、みたいなこどもだましの昔話」
「嫌な言い方だねえ。たとえばどんなの?」
「えーっとそうですね。
むかしむかし、人間の手にはヒジがありませんでした。
その頃の人は食べ物をつかんでも口に運ぶことができず、不便な生活を強いられていたのです」
「あ、なんかそれっぽい」
「あるときその様子を見ていた神様が不憫に思い、人間にヒジを授けたのです」
「うんうん」
「人間たちは大喜びしました。
これで自分の口に手が届くぞ!
それまで人間たちは、ペアを組んでお互いの口まで食べ物を運んであげていました。
ヒジができてからというもの、人々の暮らしは格段に便利になりましたが、同時に助け合いの精神が希薄になり、人心はどんどん荒廃してゆき、やがては曲がるようになった腕で弓矢や銃を持って互いの命を……」
「ちょっとちょっと! ほのぼのした昔話だったのに途中から急に殺伐としてる!」
「便利さと引き替えに精神的な豊かさが失われるという教訓のこもったいい話だと思うんですけどねー」
「却下」
いったいどう答えるのが正解なんだろう?
うちの妻にも訊いてみたところ、
「ヒジが何かの目的を持って作られたわけじゃなくて、曲がる部分がヒジと名付けられただけ。だからその質問自体がナンセンス」
というお答えが返ってきました。
うーん、科学の子。
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