2016年10月2日日曜日

【エッセイ】心に傷を持った老ニワトリ


大阪・天王寺動物園の情報紙を見たら、「幸せを呼ぶニワトリ・マサヒロ」という記事が乗っていた。

記事によると、マサヒロは肉食動物の生き餌として入荷したが、カモに餌の食べ方を教える「先生役」に抜擢されたために命拾いし、その後は野生のイタチを捕獲するための「おとり餌」にされたがイタチが現れなかったために九死に一生を得て、また餌になるところだったが偶然需要がなかったために、現在は動物園で飼われているとのこと。



「今や、マサヒロは動物園の一員として、命の大切さを伝える大切な役目を担っているのです」

と締めくくられてるけど、いやあ......。
この話から読み取れるのは「命の大切さ」なんて、そんな単純な美談じゃないでしょ......。

「人間が動物の生殺与奪の権利を握っているんだな」ってことでしょうよ......。


命の大切を教えるなら、このニワトリが過酷な戦地から帰還した傷痍軍人のように、

「仲間たちはみんな死んだ。腕っぷしが立つやつも、頭のいいやつも、みんなから好かれてたやつも、家族思いだったやつも、みんな死んだ。私が生き残ったのはただ運がよかっただけだ。だから二度とあんな悲惨な入荷がおこなわれないことを願う」

って、未来を担うヒヨコたちに語りついでいくしかないのでは。

2016年9月30日金曜日

【考察】憎い3歳児

3歳の娘がいる。

もちろん我が子なのでかわいいけれど、腹の立つことも多い。
ぜんぜん言うことを聞いてくれなかったり、時間がないときにかぎってだだをこねたり、よくわからない理由で不機嫌になったり。

聞いた話では、親が子に手をあげてしまうのは、3~5歳くらいのときが多いらしい。

ぼく自身のことを考えてみても、子どもが1歳2歳のときよりも、3歳になってからのほうが憎らしさが増したように思う(かわいさも増してるけど)。


よく考えるとふしぎなことだ。

1歳や2歳のときだって、親の言うことなんて聞いてくれなかった。
時間がないときにぐずったり、急に怒りだしたりしていた。

同じことなのに、なんで1歳2歳に対しては「しょうがないな」と思えて、3歳に対してのほうが腹が立つのだろうか。
これは、「こちらの意図が伝わる」からだと思う。

3歳になると、かなりしっかりとコミュニケーションがとれる。
「遊んでないで早くごはん食べてね」という言葉の意味も正確に伝わっているはずだ。
なのに、いつまでも遊んでいてぜんぜんごはんを食べてくれない。

「言葉が伝わらないから言うことを聞いてくれない」よりも
「言葉が伝わるのに言うことを聞いてくれない」のほうが、ずっと大きなストレスなのだ。

ま、そりゃそうだよね。
まったく日本語がわからない外国人にこちらの意図が伝わらなくても腹は立たないけど、50年日本人をやっていて日本語が理解できるにもかかわらず他人の話にまったく耳を貸そうとしないおっさんには腹が立つもんね。


だから3歳の子どもに対しては、手を上げてしまいそうになるぐらい腹が立つんだろうね。


でもよく考えたら、それは子どもにとっても同じはず。

1歳のときは言葉がしゃべれなかった。
2歳になっても、感情をうまく言語化することができなかった。
3歳になって、ちゃんと言葉で気持ちを伝えられることができるようになった。

「まだあそぶ!」とか「いや! おふろはいらない!」とか。

言葉の意味は正確に伝わっているはず。
なのに大人たちはぜんぜん言うことを聞いてくれない!


もどかしさと腹立たしさはお互い様でしょうな。



2016年9月29日木曜日

【エッセイ】100万人のヘビ使い

『世界史を変えた50の動物』(エリック・シャリーン/原書房)という本を読んでいると、
「今でもインドには100万人のヘビ使いがいる」という記述に出会った。

100万人のヘビ使い……!
さすがはインドだ(インドのこと何も知らないけど)。

懐の深さがすごい。

日本にも、ヘビ使いに似た職業としてサル回しがいる。
でも日本にサル回しは100人もいないだろう。
日本には、100人のサル回しが食っていけるだけの余裕がない。


以前、十二星座にへびつかい座が加わって十三星座になると聞いたときに
「なんだよへびつかい座って」と思った。
でも、インドで100万人が従事するぐらいメジャーな職業だったのだ。
インドだけで100万人ってことは、世界には100万とんで50人くらいのヘビ使いがいるにちがいない。

世界中にライオンは100万頭もいないだろう。
弓道やアーチェリーや弓を使った猟で食べていっている人は100万人もいないだろう。

そう考えると、獅子座や射手座よりもへびつかい座のほうがよっぽどメジャーな星座といえる(本物の乙女も絶滅危惧種らしいから、乙女座よりもメジャーかも)。


100万人ってどれぐらいの数なんだろうと思って調べてみたら、日本の警察官の人数が約28万人らしい(総務省統計)。
ヘビ使いの4分の1しかいない。

もしも100万人のヘビ使いと、250万匹のヘビ(ヘビ使い1人あたりの平均ヘビ所有数を2.5として算出)が大挙して日本に押し寄せてきたとしたら。
たった28万人の警察官では防ぎきれないだろう。自衛隊や消防を入れたって敵わない。日本はあっというまにヘビだらけになってしまう。


でも心配しなくても大丈夫。
ヘビ使いのヘビはキバを抜かれているので、襲われて命を落とすようなことはほとんどないんだって。

これで安心して眠れますね。

ではみなさま、よい夢を。

2016年9月28日水曜日

【考察】ザリガニの差

厄年の男女を対象にした神社の厄払いと、

「これを買わないと不幸になりますよ」
と言って高い壷を売りつける霊感商法

両者の違いについて考えてみたけれど、
残念ながらぼくには違いが見つけられませんでした。

あえていうなら、壺が手に入るだけ後者のほうが少しマシかな。
壺でザリガニとか飼えるし。

2016年9月27日火曜日

【ふまじめな考察】今年はこれを流行らせます

「今年の流行色」は、日本流行色協会なる団体が毎年制定しているらしい。

流行色を誰かが決めてるってどうなのよ。
流行って自然発生的に起こるもんでしょ。

と思ったのだけれど。
特にカラートレンド情報については、長い歴史の中でカラー設計の指針としてその信頼性と的確性が広く認められています。
(日本流行色協会ホームページより)

という文章を読むと、ファッション業界からするとありがたい指針かもしれないなと思いなおした。

なんの制約もなしにゼロからものをつくるってたいへんだもんね。
自由は創造性を制限する。
「今年はこのテーマに従って服をつくってください」という指針があったほうが、かえってつきぬけた発想も生まれやすいのかもしれない。

どんな色が流行るかあらかじめわかっていたほうが仕入れや在庫の計画も立てやすいだろうし。



「今年の流行」は、色だけじゃなく他の分野でも計画的に制定したらいい。

「来年流行するギャグは、謝罪のギャグです」とか。
で、謝罪ギャグを生みだした芸人を、テレビ番組も積極的に使うようにするの。 

流行りのギャグって、初めて見たときはそんなにおもしろくなくて、何度もくりかえされるうちに 人口に膾炙して広まっていくことが多い。
でも見る人もあらかじめ「今年は謝罪ギャグがくる」ってわかってるから、心の準備ができていて、初見から笑うことができる。

うん、準備ができてるっていいね。



詐欺も年々新しい手口が考え出されては廃れていく。
ある程度知れわたってしまえば詐欺として通用しなくなるから、詐欺師は常に新しい手口を考案しなくてはいけなくてたいへんだよね。

だから日本流行詐欺協会が、
「来年は葬式を利用した詐欺が流行ります」
という指針を示してやるといい。

ある程度の指針があったほうが詐欺師も騙しかたを考えやすいだろう。

流行に敏感な人は特に葬式詐欺には注意するから引っかからない。
そうなると詐欺師たちも食っていけなくなるんじゃないかと心配してしまうよね。

でも大丈夫。
流行にうとい人って決して少なくないから。
もう若者が誰も使わなくなった頃に流行りだったギャグを言い出すおっさんとかいるでしょ。
ああいう人が、ちゃんと後から流行の詐欺にひっかかってくれるから。



日本流行疫病協会は、
「来年は蚊を媒介にした伝染病を流行らせます」
って、ちゃんと流行の指針を示しといてほしい。

流行が事前にわかってたら医療機関も対策できるし、予防接種もできる。
指針があるとほんと助かる。

それに、病死に見せかけた殺人計画も立てやすいしね。