2016年1月2日土曜日

【エッセイ】ハツカネズミの親子

 不思議な光景を見た。

 若い親子が電車に乗っていた。
 父親は赤ちゃんをだっこしていて、母親は妊娠しているらしく、大きなおなかを抱えて大儀そうに歩いていた。
 それだけならどうということのない微笑ましい光景なのだが、問題は父親が抱いている赤ちゃんがどう見ても生後3~4ヵ月の乳児だということだ。
 はじめはなんとも思わなかった。
 でもなんとなく違和感を覚えて、よくよく考えてみると、
あれ? 計算合わなくない?

 一目で妊娠していることがわかるってことは、少なくとも妊娠4ヶ月くらいは経ってるよね。
 だったら生後3~4ヵ月の赤ちゃんがいるはずないよね。
 じつにミステリアス。
 何度見ても、赤ちゃんは生まれたばかり(だってまだ首が据わってないもの)。
 ひょっとしてお母さんが産後太りしてるだけ?と思ったけど、こっちもどうみても妊婦(鞄にマタニティバッヂ付いてるし)。

 ううむ。
 不思議だ。
 仮説を立ててみた。

1.二人は夫婦ではない。
  たとえば兄と妹とか。

2.二人は夫婦だが、妻は赤ちゃんの母親ではない。
  養子だとか、亡くなった兄夫婦の忘れ形見だとか、夫の浮気相手が産んだとか。

3.二人は夫婦で、赤ちゃんもお腹の子も、どちらも夫婦の子。
  ただ双子の片方だけが何ヶ月も先に出てきちゃったとか。

4.じつはぼくが知らないだけで、医学の進歩だかアベノミクス効果だかによって、そうゆうことが可能になっている。

5.あの夫婦はじつは人間ではなく、ハツカネズミ。

2016年1月1日金曜日

【エッセイ】2番目に好きな人

小学3年生のとき。
クラスにMさんという女の子がいた。とびきりかわいくて、快活な子だった。
男子の半分はMさんのことが好きだった。
ぼくもそのひとりだ。

あるとき、Mさんからこう言われた。
「わたし、君のこと、2番目に好きだよ」

1位でないのは残念だったが、喜ばしい気持ちのほうが大きかった。
大人だったら「1位じゃないなら意味がない」と思うかもしれない。でもしょせん小学3年生、1位だったとしてもデートするわじゃないのだ。
「2位じゃだめなんですか!?」という問いを誰が否定できよう。

なにしろ、10人以上の男子が彼女に恋心を抱いていたのだ。その中で2位というのは、モテないぼくからしたら奇跡的な好成績だ。
ぼくは「ひょっとしたら1位浮上ということも十分にありうるぞ」と考え、Mさんへの想いをさらに強固なものにして、あの手この手で彼女の気を惹こうとした。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

人心掌握術について書かれた本を読んでいると、こんな記述を見つけた。

独裁者、軍の司令官、犯罪組織のリーダーらが部下を統治するのに使う方法として「部下たちを順位付けする」というものがある。
部下たちに順位をつけ、さらに順位によって待遇に差をつける。1位は優遇し、最下位には厳しい罰を与えることで、上位を目指すように仕向ける。
さらに順位付けの基準を明確にしないことで、部下たちはトップの顔色だけを窺うようになり、ひとつでも順位を上げようと、上からの指示には絶対に服従し、メンバー間の密告が増えて裏切りも防ぐことができる。特に1位を狙える位置にいる者や、あと少しで最下位に転落しそうなものほどその効果は顕著に表れて、たいへん支配しやすくなるのだとか。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

うわ、Mさんすげえ。
小3にして支配術を使いこなしていたなんて(使いこなしていた証拠に、ぼくは完全に支配されていた)。

魔性の女どころの話ではない。
天地を統べる逸材だ。

2015年12月29日火曜日

【ふまじめな考察】それにひきかえ太陽系では……

「欧米では○○なのに、それにひきかえ日本ときたら……」
という言い回しを用いていいのは、

欧米の人から「アジア人って○○だよね」と言われても、
「日本も中国もミャンマーも一緒にするな!」
とは思わない人だけ。

2015年12月28日月曜日

【エッセイ】ミノムシって絶滅危惧種なんですってよ

ミノムシって絶滅危惧種に指定されているんだって。
20年くらい前から寄生虫のせいで激減してるらしいよ。

そういや昔は秋になるとよく見かけたのに、今ではまったく目にしない。

絶滅危惧種になっているという本を読むまではそんな虫がいることすら忘れていたぐらいだから、あたしはミノムシが絶滅したってまったく困らない。
困らないどころか、ミノムシって成虫になったら蛾になるわけだけど、できることならこの先、蛾と一切関わることのない人生を歩んでいきたいとすら思っている。

でも、ミノムシはおもしろいから生きていてほしい。
アリジゴクとかマイマイカブリとか尺取り虫とか、そういう個性派メンバーの虫たちにも、がんばって種として長生きしてもらいたい。
あたしの人生と関わらなくていいから、この世のどこかで細々と生きていてくれ、って思う。

ヤクザとかギャンブル狂とか露出狂とかの人たちも、絶対に関わりあいにはなりたくない。
でもそういうのがまったくいない社会もつまらなさそうだから、生態系における個性派メンバーとして、どっかでひっそりと息をしていてほしいものです。

2015年12月26日土曜日

【ふまじめな考察】公平なテロ

海外で自爆テロや銃乱射事件があったときにも、

犯人の卒業文集を朗読したり、
近所の人に「ええ、ちゃんと挨拶する子でしたよ」と言わせたりしないと、
報道の中立性・公平性は守られないのではなかろうか。