2015年10月22日木曜日

【エッセイ】しょせんはキヨシ

のどが痛いのでドラッグストアへ。
のどの痛みを抑える薬を持ってレジに並んでいると、おじいちゃん店員に声をかけられた。
「うがい薬はありますか?」

急に声をかけられたのでびっくりして、言葉が出てこず無言で首をふった。

「うがい薬がないなら塩水でうがいするといいですよ」

セットでうがい薬を売りつけようとする営業トークかと思ったが、どうも親切心でアドバイスしてくれているようだ。
塩水など勧めても金にはならないもんな。

「塩水が苦手ならお茶でうがいするのもいいよ。お茶でうがいして、最後に飲みこむんです。私はお茶でやってます」

おじいちゃんの話は止まらない。

 「へえ。飲み込んじゃっていいんですか」

「そう。あとは四つ折りにしたタオルね」

 「タオル?」

「タオルを四つ折りにして、のどに巻くんです。こうやって寝るとのどが楽になります」

 「そうなんですか。じゃあやってみます」

とは言ったものの、しょせんここはマツモト○ヨシ。
調剤薬局で薬剤師さんに云われたらすなおにいいことを聞いたと思えるのに、マツモト○ヨシだといまいち信憑性に欠けるというかなんというか……。

所属や肩書きで人を判断するのはよくないんだけど、やっぱり疑わしいんだよなー。
アドバイスの内容も、医療従事者の指示ってよりも、おじいちゃんの知恵袋ってかんじだしな……。

2015年10月21日水曜日

【写真エッセイ】ダセえのはオレじゃない


これは負け惜しみで言うわけじゃないんスけど、
21世紀にもなってまだ木片でフタをしてるなんてすげえダセえと思うんスよね、オレ。

2015年10月20日火曜日

【読書感想】 みうらじゅん・宮藤官九郎 『どうして人はキスをしたくなるんだろう?』


「BOOK」データベースより
男と女、人生、趣味と仕事…くだらなすぎて今さら人に聞くのは恥ずかしい“素朴な疑問”に永遠の中2たちが真っ向から挑む!ロマンチックで下世話な哲学問答集。

『ゆるキャラ』の名付け親と『あまちゃん』の原作者の対談、と書かれている書評があったが、それはまちがってないけどまちがってるぞ!
 いや、たしかにそれはみうらじゅんと宮藤官九郎のことなんだが、その説明では彼らのことを1パーセントも言い表していない。1パーセントどころかマイナス50パーセントの説明だ。

 だって「ゆるキャラとあまちゃんの産みの親による対談」って云っちゃったら、老若男女が楽しめる話だと思われてしまう。まさかまさかチンポとクンニと親孝行の話ばかりだとは思わないだろう(ただの下ネタではなく親孝行の話も並ぶのがさすがみうらじゅんだ)。

 それにしても内容がない。いや、褒め言葉ね。
 酒の席の世迷い言にふさわしく、根拠もとりとめも正確さもない話ばかりがくりだされる。仮にも編集者がきちんとまとめて活字になったものを読んでいるわけだから、元の対談はほんとに支離滅裂だったにちがいない。
 読んでいるときは楽しいが、読み終えてみると見事に何も残らない。まさに酒の肴のような対談。
 気のおけない友人とだらだらくっちゃべるみたいなものなので、そういうのが好きでない(すなわち人生における無駄を愛せない)人からするとまったくおもしろくない本だろう。まあそういう人がこの本を手に取るとは思えないが。

 とまあ、何の役にも立たないすばらしい本なのだが、惜しむらくは宮藤官九郎のトークがやや弱いところ。
 いや、クドカンの話もそれだけ見ると十分おもしろいのだが、みうらじゅんと渡り合うほどの異常性は感じられないんだよなあ。
 みうらじゅんといえば、いとうせいこうだったり伊集院光だったりリリー・フランキーだったりと組んでクレイジーな対談をくりひろげてきたわけだけど、そういったタッグに比べると、クドカンは見劣りする。
 もう少し、演劇の話とかクドカン寄りの話題があってもよかったな。ほとんどエロバカ話で、みうらじゅんの十八番だからなあ。
 いつものみうらじゅんと聞き役、という感じでした。
 

2015年10月19日月曜日

【エッセイ】無駄を避けるという無駄


快速電車が停車しない駅に行くとき。
調べたところ、快速に乗って目的地のひとつ先の駅まで行き、そこから普通電車で引き返すのがいちばん早い行き方だとわかる。

いやだ。

行った路線を引き返すなんて、そんな無駄なことしたくない。
余計に時間がかかると知っていても、はじめから鈍行で行く。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ラーメンを食べたい。
店の前にふたりほど並んでいる。
10分ほど待てば店に入れそう。

でもいやだ。

何をするでもなくただ並ぶなんて、そんな無駄なことしたくない。
10分並ぶぐらいだったら、10分歩いて別の店に行く。
その分余計にカロリーを消費してしまうとしても、10分間を移動という有意義なことに使いたい。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「無駄なことが嫌いなあまり、無駄なことをしてしまう」
 この感覚、他人にしゃべっても理解してもらえないんだよな……。

2015年10月17日土曜日

【エッセイ】胃袋管理制度

 ゆとりっていうか。
 言われるまで動こうとしない指示待ちっていうか。
 まあ要するに無能なんだよね。

 あっ。
 最近の若者じゃなくて。
 ぼくの満腹中枢の話。

 いやー。
 前々からね、こいつ怪しいなとは思ってたんだよね。
 こいつ働いてないときあんなーって。
 どうもちょくちょくサボってるときあんなーって。
 それでもね。
 あの厳しい就職戦線を勝ち抜いてぼくの脳内に内定を決めたやつだからね。
 それなりにはね、仕事のできるやつだと思ってたよ。
 やるときはやるはずだ、と。
 ところがよ。
 最近じっくり観察してみたのね。
 人事考課の目になって。
 そしたらこいつ、ぜんぜん仕事してないのね。

 たとえばさ、朝めし抜くじゃん。
 昼めしもめんどくさいから食べないじゃん。
 それなのにね。
 うちの満腹中枢ときたら何の警告も発さないの。
 腹へったーとか、ぐぅーきゅるるるーとか、そういうの一切なし。
 一分前に玉音放送あった?
 ってぐらい、見事な沈黙を保ってんの。
 いやこれだめでしょ。
 飯食わないってのは生命の存続に関わる危機だからね。
 うるせえよ会議中に早鐘の如く腹鳴らしてるの誰だ!
って言われるぐらい自己主張してほしいわけ、こっちとしては。
 つまりぐーぐー腹鳴らしてかまわんよ、と。
 それなのにね。うちの満腹中枢ときたら。
 あれかな。引っ込み思案なのかな? ぼくに似て。
 まあねー。
 わからんでもないよ。
 ぼくも十数年前までは矢沢あい作品の主人公ばりに、強気に振る舞っていても実は傷つきやすい繊細なアタシだったからね。
 でもさあ。
 ぼくももう三十歳すぎてるわけ。もうおじさん。
 だからね。
 よしんば美しい女性の前で腹がぐーぐーいったとしてもね、
「はっはっはっ。腹の虫までもが美しいおなごに恋い焦がれて泣いとるわ!」
って云ってぽーんと腹を叩いてみせる、そんぐらいの図太さは身につけてきたつもり。
 だからね、満腹中枢がどんなに激しく主張してきたとしてもね、
寂しい夜はわけもなく泣きわめいたとしてもね、
そんなところも全部ひっくるめておまえの魅力だっていって、ありのままを受け止めるぐらいの覚悟がぼくにはある。
 ぜんぜんある。

 ほんとは引っ張っていってほしい。
 満腹中枢に。
 よっしゃ腹ヘってきたからそろそろメシにしようぜ! とか。
 どかんとカツ丼でもいこうぜ! とかって。
 常にリードしてくれて、でもあたしの希望を最優先してくれる人であってほしいー☆
 なんて世の中なめた女子大生みたいなセリフも口にしてみたい。
 やっぱ満腹中枢ってのは生命維持を司るポジションだからね。
 四番でキャッチャーで三年生で主将、ぐらいの安心感は漂わせててほしい。
 しまっていこー!
ってアルプススタンドまで届くぐらいのバリトンヴォイスで叫んでほしい。
 あるいはオリバー・カーンぐらいの絶対的守護神であってほしい。
 なのにうちの満腹中枢ときたら、デブだからキーパーやらされてますって程度の頼もしさしかない。
 へたしたらルールもよくわかってないままキーパーやってんじゃない? って思うことさえある。
 もうとっくに空腹のオフサイドライン超えちゃってるよーって。

 まあまあ。
 そうはいってもね。
 空腹のサインを出さないだけならぼくだってそんなに文句はたれませんよ。
 単に旧社会主義国の自動車製造ライン並みに安全基準が甘いだけなのかなーって思うだけ。
 ところがこいつ(満腹中枢)ときたら、空腹だけじゃなく満腹のサインも出さない。
 ノーサイン。ノールック。ノーアイコンタクト。
 だからぼくは食べだしたら止まらない。食べすぎる。
 満腹を感じないから許容量を超えて食べる。
 で、吐く。
 うちの実家で飼っている、元野良犬の雑種犬がまさにそんなかんじ。
 若き日のジャン・ヴァルジャンかよってぐらいにがっついてて、あればあっただけ食べる。
 で、食べすぎて吐く。
 で、吐いてまた食う。

 そんなんだからね。
 ちゃんと教えてほしいわけ。
 ほら、いるじゃん、ダムの水量管理員みたいな人が。
 ああいう作業着の公務員のおじさんがね、
日がな一日ぼくの横についてね、
ぼくの胃袋の内容量を管理して、
そろそろ腹へってるはずだから飯にしたらどうだとか、
これ以上食うと吐くぞとか。
 そういう指示を出してほしい。
 世代的に指示がないと動けない。

 それなのに小さな政府とかいって、どんどん公務員の削減が進められてるからね。ぼく専属の胃袋管理員制度の導入はどんどん遅くなるばかり。
 どうしたもんかね、これ。