2015年4月20日月曜日

小籠包2倍熱い説

小籠包(ショウロンポー)を食べるたびに思うのだが、小籠包の熱さは常軌を逸している。

小籠包を口に運ぶ前に
「熱いから気を付けなくちゃ」
と思うのだが、それでも毎回「はふっ(熱っ)」となる。
ほとんど地獄の熱さだ。

小籠包をはじめて食べる人は、百人が百人とも肉汁で舌を火傷する。
「こちらたいへんお熱いのでお気をつけください」
と言われても絶対に「はふっ」となる。

熱いから気をつけろと言われると、我々はアツアツの餃子ぐらいの熱さを想定する。
でも小籠包の熱さはそんなもんじゃない。
なにしろやつらは地獄出身だ(食べ物をできたてのうちに食べないと死後に小籠包を口に詰め込まれる『肉汁地獄』に落とされる。小籠包はそこの出身だ)。
「これぐらい熱いだろうな」と思っている、その2倍小籠包は熱い。

私はここに「小籠包2倍熱い説」を唱えたい。

はじめて小籠包を食べる人が「お熱いのでお気をつけください」と言われて想定する、その2倍熱い。
二度目に食べる人は小籠包の熱さを知っているから警戒するが、それでもその想定の2倍熱い。
何度食べても、小籠包はこちらがイメージしている熱さを2倍上回る。
これが「小籠包2倍熱い説」である。

だから小籠包を提供するお店はこう言わなくてはならない。
「こちら、お客様が思っている2倍熱いのでお気をつけください」と。

そう言われて2倍の熱さを覚悟した場合、もちろん小籠包は4倍熱い。

2015年4月19日日曜日

生きているんですよ

1歳の娘をだっこして電車に乗っていたときのこと。
娘が泣きだした。
声をかけたり、揺らしたり、ヘンな顔をしたりするのだが、いっこうに泣きやまない。泣き声は大きくなるばかり。
周りも迷惑だろうと思うが、どうすることもできない。
肩身の狭い思いをしていると、隣のおっちゃんに声をかけられた。

それが「うるさいから静かにさせろよ」とかだったら、こっちとしても謝るなり、「しょうがないじゃないか」と反論するなり、対処のしようがある。
ところがおっちゃんはこう言ったのだ。

「赤ちゃん泣いてますよ」


いやわかってるし!
この車両の乗客全員がわかってるし、なによりだっこしているぼくがいちばんわかってるわ!

予想外の一言に返す言葉もなく呆然としていたら、伝わっていないと思われたのか、もう一度言われた。

「赤ちゃん泣いてますよ」


 結局、あぁ、はぁ、みたいなあいまいな返事しかできなかったのだが、なんと返すのが正解だったのか今もってわからない。

「ぼくもあなたも生きているんですよ」
とかわかりきった言葉を返すべきだったのだろうか。

2015年4月18日土曜日

布団屋というビジネス

 近くのさびれた商店街に布団屋があるんだけど、ほんとにいつもひまそうだ。

 数多ある職業の中でもっともひまなんじゃないかと思う。
 同じ商店街には、オバハン養成所としか思えない洋品店とか、形や色がちょっときれいなだけの石を売っている石ころ屋とか、サッカーのユニフォーム専門店とか、流行ってない店がいっぱいあるんだけど、それでもたまに客の姿は確認される(売れてるかは不明だが)。
 しかし、布団屋には冷やかし客も来ないだろう。

「ひまだし買うつもりないけどちょっと布団でも見ていくか」

「よっ大将、新しい布団入った?」

みたいな軽い気持ちで人は布団屋に入らない。
 今日布団を買うと決意したとき、それ以外に布団屋に足を踏み入れることは決してない。
 めったに客は来ない(1日に1人来たら多いほうだと思う)が、来た客は必ず買っていく。それが布団屋なのだ。布団屋のことはなにも知らないが断言しよう。


 それにしても布団っていったいいつ売れるのだろう。
 布団屋の繁忙期について考えてみよう。

 まず3月4月はよく売れそうだ。
 新生活スタートにあたって布団を買う人は多いだろう。

 5月6月は、そろそろ暑くて寝苦しくなってくるから薄手の布団に変える人も多いんじゃなかろうか。

 梅雨時は布団が湿気で傷みやすいから、梅雨の明けた7月には敷き布団がよく売れそうだ。

 8月はお盆がある。息子夫婦や孫が里帰りしてくるから客布団を用意しとかなくちゃ、という老夫婦のニーズが多いにちがいない。

 9月10月11月は日に日に寒くなってゆくから、厚手の布団や毛布がよく売れる。

 12月にはこたつ布団が恋しくなるし、年末年始も忙しい。お盆と同様に里帰りがあるし、大掃除のついでに布団を買い換えたり、新しい布団で新しい1年をスタートさせる、なんて人もいるだろう。

 あれ……?
 3月から1月まで、ずっと布団屋は繁忙期だ。
 実は布団って、1年を通してよく売れる商材なのでは……?

 しかし問題は2月だ。
 もう寒さのピークは越えつつあるから今さら布団を買いたすことはないし、春用の布団にするにはまだ寒い。
 2月は布団屋にとって唯一の閑散期だ。
 なにか布団を売るためのイベントをぼくが企画しなければ!

 ……そうだ!
 2月10日を『ふ(2)とん(10)の日』として、布団を買い換える日とアピールすれば万事解決じゃないか!
もしくは、バレンタインデーの前に好きな相手に布団を贈って「この布団で一夜を共にしましょう」と大胆に誘う日にしたっていい。
なんたる名案!

 と思って調べてみたところ、実際に2月10日が『ふとんの日』だったのだが、日本寝具寝装品協会がなぜか2010年より10月10日に変更しているのだ。
(参考リンク   http://www.jba210.jp/210.html )

 なにをやっとるか日本寝具寝装品協会!
 なんたる機会損失!
 即座に2月10日に戻すべきだ。
 ぼくは日本寝具寝装品協会に対し、強く抗議する!
 完全なる部外者として、強く抗議する!
 2月でも10月でもどっちみち布団を買い換えないけど、強く抗議する!

2015年4月17日金曜日

草をとって喰らう鬼

  角が生えている動物は草食動物だけなんだとか(一部の恐竜をのぞく)。
  角は防御用のもので、攻撃には向かないからだそうだ。

  ふーん。なるほど。
  たしかにシカもキリンもサイも草食だ。カタツムリも。

  ということは鬼は草食動物か……。
  たしかに『桃太郎』にしても『一寸法師』にしても『こぶとりじいさん』にしても、鬼の方から積極的に攻撃を仕掛けたりはしてないな。
  攻撃してきた人間から身を守るために戦っているだけで。

  金銀財宝を奪ったっていうのも、すみかを追われたイノシシやサルがたまに野に下りてきて畑を荒らす程度のもんなんだろうな……。

2015年4月16日木曜日

たいやきの発祥

 たいやきを最初につくった人、すげえな。

 ふざけた形の食べ物はたくさんある。
 タコさんウインナーとか、メロンパンとか、金太郎飴とか、遊び心が入った食べ物。
「こんな形にしたらおもしろいんじゃね?」と誰かが思いついて、実際に作ってみて、好評を博したので定着しました、というパターン。

 でもたいやきの場合は「思いついた」から「ちょっと作ってみました」までの敷居が圧倒的に高い。

 だって鋳型を作らなくちゃいけないんだから。


 はじめて作った人、行動力がありすぎる。
「今川焼を魚の形にしたらウケるんじゃないか?」と思いついて(この時点でけっこう頭いかれてる)、
まずは砂かなんかを固めて「型の型」を作って、
そこに溶かした鉄を流し込んでから冷やして固めて「型」を作って、
そこに小麦粉を水で溶いたものを流し込んで焼いてみたわけでしょ?

 かんっっっぜんに「ちょっと作ってみました」のレベルを超えている。

 ふつうは、もし思いついたとしても「鉄溶かさなきゃいけないんだったらやめとこう」ってなる。
 こういうことを実際にやろうとするのは、面倒なことは誰かに押しつけるつもりの人だけだ。

 だってそうでしょう。
 東京オリンピック開催決定!つって鼻水たらして喜んでた招致委員会のメンバーも、各方面の顔を立てなきゃいけないスケジューリングとか、くそ暑いさなかに強硬日程でおこなわれるスタジアムの建設とか、トラブル処理やらゴミ拾いやら、そういった億千万のしちめんどくさいことは全部自分の仕事じゃないと思っていたから、無邪気に喜べたわけでしょう。
  じゃなかったら「オリンピックやりましょう! ただし100年後に!」ってなるに決まってる。

 だいたい、たいやきを焼くために鉄を溶かそうったって、そうかんたんにできやしない。
 お金もかかるし、鉄を溶かすためにはたいへんな火力がいる。

 いっちょ魚の形の今川焼作ってみるか、なんて思いつきを行動にうつせるのは、お金を持っていて、火力を維持するための十分な燃料があって、人を好きなだけ使える人だけだ。

 ということは。
 論理的に考えて、たいやきを最初に作ったのはアラブの石油王だということになるな……。