そりゃ泣くよ。
あいつが結婚したんだもん。
元カレ? じゃない。
ずっと恋い焦がれてた人でもない。
学生時代の友達。
裏鈴木キミコって女。
あたし、裏鈴木キミコは結婚しないと思ってた。
だって裏鈴木キミコって、2年くらい前、ひとりで国技館に相撲みにいってたのよ。
しかも初日。千秋楽だったらまだわかるけど初日。
ひとりで大相撲の初日をみにいくような女が結婚できるわけないってのは日本の国技はじまって以来の常識じゃない。
なのに結婚することになったの。これもう国技の危機よね。
話がそれたわ。
あたし、裏鈴木キミコが結婚するって聞いて、急いで裏鈴木キミコに電話したの。
夜中の2時だったけどしったこっちゃないわ。
ことは一刻を争うもの。
そして問いただしたわ。結婚したら苗字はどうするのって。
答えを聞いて愕然とした。
「加藤」ですって。
「裏鈴木っていう名前、嫌いだったからよかったわ。めずらしいから名乗ったときに必ず聞き返されるし。やっぱり平凡な苗字がいいわよ」なんて平然と言うのよ。
信じられない。なんて無神経なのかしら。
電話じゃなかったら、あたし、ごぼうで裏鈴木キミコの頭をひっぱたいてるとこだったわ。
電話線がごぼうを通さなかったことに感謝してほしいわよね。
あたしは「裏鈴木にしなさいよ」って説得したけど無駄だった。
「もうお互いの家で話はついてるから」って、聞く耳持たずよ。
悔しくって悔しくって、泣いたわ。
男女同権とか言うつもりはないよ。
「裏鈴木」っていうめずらしい苗字が消えゆくことに思いを馳せて泣いたのよ。
裏鈴木キミコって、お姉ちゃんと二人姉妹なの。
でもお姉ちゃんも結婚して、今は別の苗字。
だからその家の「裏鈴木」の苗字を受け継ぐ人はいなくなるの。
もしかしたら日本で最後の裏鈴木家かもしれない。
裏鈴木キミコのお父さんとお母さんが死ぬとき、「裏鈴木」の苗字は消えてなくなっちゃうかもしれない。
こんな悲しいことってある?
トキが絶滅するかもしれないってニュースで言ってるけど、すごい勢いで地球上から森が消失してるって新聞には書いてあるけど、こうしている間にも、日本中でめずらしい苗字が絶滅していってるのよ。
めずらしい苗字は絶滅の危機に瀕している。
子どもが生まれなかったり、生まれた子どもが結婚して相手の苗字に変えちゃったりしたら、その苗字は消える。
あと何千年か、何万年かしたら、日本は「佐藤」「鈴木」「田中」「山田」「山本」「高橋」なんかの平凡な苗字で埋めつくされている。
珍名さんがひとりもいなくなったら、この世の中は0.2%ほどつまらなくなるよ。
だからあたし、25歳になったら選挙に出ようと思うの。
国会で法案を通すために。
あたしの法案はこう。
「結婚後の苗字は、夫と妻の苗字のうちめずらしい方を名乗らなくてはいけない」
山田さんと長万部さんが結婚したら、どっちが男であっても、長万部さんの苗字を名乗らなくてはならないの。
こうすれば、めずらしい苗字が絶滅する危険性はぐっと減るはず。
いいと思わない?
2015年6月16日火曜日
2015年6月15日月曜日
嘘つき村人の独白
出身地ですか……。いちばん答えにくい質問なんですけどね。
いや、いいんです。
そういうのじゃないんで。
私の出身は「嘘つき村」です。
あなたも、一度は耳にしたことがあるでしょう?
「必ず本当のことを言う正直村の村人と、嘘しか言わない嘘つき村の村人を、一度の質問で見破ってください」
とかいうやつ。論理パズルっていうんですか?
そのパズルでおなじみの「嘘つき村」です。
そうなんですよ。みなさんびっくりするんですけどね。実在するんですよ。
というより、みんなが作ったといったほうがいいかもしれませんね……。
誰があのパズルを考え出したのかは知りません。
でもあのパズルは人口に膾炙して、私立を受験するような子なら小学生でも知っている。
みんなの頭の中に「嘘つき村」はたしかに存在する。イメージってのはエネルギーですからね。そのエネルギーがあまりにも大きくなったとき、概念としての存在でしかなかった「嘘つき村」はたしかな実体となって生まれたのです。私たち村人と一緒に……。
私は「嘘つき村」で生まれ育ったわけですが、そりゃあ嫌なものですよ。
誰もが嘘しか言わないんだから。
何を信じていいのかわからなくなりますよね。
でももっとつらかったのは、村の外に出るときです。
「嘘つき村の村人」というレッテルを貼られ、誰もまともに話なんか聞いてくれません。
仕方ないですよね、村人全員嘘つきなんだから。
近くに「正直村」があって、そこの村人が誰からも愛されていたのとは大違いです。「正直村」はもうすぐ世界文化遺産に登録されるんだとか。
でもね。最近ふと思うんです。
私たち「嘘つき村」の村人と、「正直村」の村人にいったいどれほどの違いがあるんだろうって。
必ず嘘をつくって、考え方を変えれば、こんな正直な話はないですよね。
全部嘘なんですから。ひっくり返せば、思っていることは全部わかっちゃうわけです。
私たちからすれば、正直と嘘を巧みに使い分けるあなたがたのほうが、よっぽど嘘つきだと思います。
あ、すみません。
愚痴っぽくなっちゃいましたね。
こんなこと言うつもりはなかったんですが。
今言ったことは全部忘れてください。
全部嘘なんです。
だって私、「嘘つき村」の村人なんですから。
……本当ですよ。
いや、いいんです。
そういうのじゃないんで。
私の出身は「嘘つき村」です。
あなたも、一度は耳にしたことがあるでしょう?
「必ず本当のことを言う正直村の村人と、嘘しか言わない嘘つき村の村人を、一度の質問で見破ってください」
とかいうやつ。論理パズルっていうんですか?
そのパズルでおなじみの「嘘つき村」です。
そうなんですよ。みなさんびっくりするんですけどね。実在するんですよ。
というより、みんなが作ったといったほうがいいかもしれませんね……。
誰があのパズルを考え出したのかは知りません。
でもあのパズルは人口に膾炙して、私立を受験するような子なら小学生でも知っている。
みんなの頭の中に「嘘つき村」はたしかに存在する。イメージってのはエネルギーですからね。そのエネルギーがあまりにも大きくなったとき、概念としての存在でしかなかった「嘘つき村」はたしかな実体となって生まれたのです。私たち村人と一緒に……。
私は「嘘つき村」で生まれ育ったわけですが、そりゃあ嫌なものですよ。
誰もが嘘しか言わないんだから。
何を信じていいのかわからなくなりますよね。
でももっとつらかったのは、村の外に出るときです。
「嘘つき村の村人」というレッテルを貼られ、誰もまともに話なんか聞いてくれません。
仕方ないですよね、村人全員嘘つきなんだから。
近くに「正直村」があって、そこの村人が誰からも愛されていたのとは大違いです。「正直村」はもうすぐ世界文化遺産に登録されるんだとか。
でもね。最近ふと思うんです。
私たち「嘘つき村」の村人と、「正直村」の村人にいったいどれほどの違いがあるんだろうって。
必ず嘘をつくって、考え方を変えれば、こんな正直な話はないですよね。
全部嘘なんですから。ひっくり返せば、思っていることは全部わかっちゃうわけです。
私たちからすれば、正直と嘘を巧みに使い分けるあなたがたのほうが、よっぽど嘘つきだと思います。
あ、すみません。
愚痴っぽくなっちゃいましたね。
こんなこと言うつもりはなかったんですが。
今言ったことは全部忘れてください。
全部嘘なんです。
だって私、「嘘つき村」の村人なんですから。
……本当ですよ。
2015年6月14日日曜日
古今東西おすもうアンドロイド
オリンピックを見るたびにあたしは思う。
なんでおすもうがオリンピック競技じゃないのよって。
声を大にして言いたい。
いや、もう大にして言ってる。
さっき隣人から「うるせえぞ!」と苦情が飛び込んできたところだ。
柔道はうまいことやってる。
世界競技になっちゃって。
なのにおすもうはいまだオリンピック競技になっていない。
アジア大会すら開かれていない。
北青森ちびっこ相撲大会しか開かれていない。
あたしはおすもうが大好きだ。
あたしだけじゃない。
世界中誰もがおすもうを好きだと思う。
古今東西問わずだ。
古代エジプトのクフ王だって、中世ヨーロッパの奴隷だって、23XX年の未来都市TOKIOに生きるアンドロイドだって、きっとおすもうを見たら手に汗を握るはずだ。横綱が負けたら思わず座布団を投げてしまうはずだ。
おすもうは日本だけのものだと思っている人は多いみたいだけど、それはまちがい。
細かいルールはちがうけど、モンゴルにだって韓国にだっておすもうはある。
よく知らないけど、ヨーロッパにだってアフリカにだって北極にだってあると思う。
[お互いがぶつかって相手を陣地から追い出す]
どんな文化にだって、こんなシンプルな競技が誕生しないはずがない。
自然発生的に誕生するにきまってる。
飛行機に乗ると、隣の人とひじかけの所有権を争って抗争(ひじの押し合い)がくりひろげられたりする。
そう、あれだっておすもうの一種だ。
専務と常務の仲が悪くて、策略をめぐらして相手を会社から追放しようとしたりする。
そう、これもおすもうの一種だ。
フリーキックのとき、フォワードと相手ディフェンスがいい場所をとりあって体をぶつけたりする。
そう、いうまでもなく、これはサッカーだ。
[地面に手をついたら負け]
これもおすもうのルールだけど、これだって世界共通のルールだ。
裁判でも戦争でも、地面に手をついて謝るのは敗者のほうだ。
改めて説明するまでもない。
水泳、レスリング、野球、ラグビー。どんな競技でもいい。決着のついた直後の選手を見てごらんなさい。
勝った方は天に拳を突き上げて喜んでいる。
負けた方は地に手をついて悔しがっている。
二足歩行をはじめたときから人類が共通して持っているルールだ。
こんなわかりやすいルールのおすもうが、世界に受け入れられないはずがない。
なのにどうして国際種目になれないのよ。
こう云うと、わけ知り顔でこんなことを云うやつがいる。
「おすもうが世界競技にならないのはね。あのまわしスタイルが理由なんだよ。
おすもうさんは尻を出してるだろう?
あのまわし姿が、他の国の人にはハレンチととられるんだ」
そんなやつには声を大にして反論したい。
いや、もう大にしてる。さっき隣のやつに「何度注意したら静かにするんだ」と云われたところだ。
だからもう静かにするけど、これもまたどっちが陣地(アパート)から追い出されるかを競ってるわけだから、おすもうだと思わない?
なんでおすもうがオリンピック競技じゃないのよって。
声を大にして言いたい。
いや、もう大にして言ってる。
さっき隣人から「うるせえぞ!」と苦情が飛び込んできたところだ。
柔道はうまいことやってる。
世界競技になっちゃって。
なのにおすもうはいまだオリンピック競技になっていない。
アジア大会すら開かれていない。
北青森ちびっこ相撲大会しか開かれていない。
あたしはおすもうが大好きだ。
あたしだけじゃない。
世界中誰もがおすもうを好きだと思う。
古今東西問わずだ。
古代エジプトのクフ王だって、中世ヨーロッパの奴隷だって、23XX年の未来都市TOKIOに生きるアンドロイドだって、きっとおすもうを見たら手に汗を握るはずだ。横綱が負けたら思わず座布団を投げてしまうはずだ。
おすもうは日本だけのものだと思っている人は多いみたいだけど、それはまちがい。
細かいルールはちがうけど、モンゴルにだって韓国にだっておすもうはある。
よく知らないけど、ヨーロッパにだってアフリカにだって北極にだってあると思う。
[お互いがぶつかって相手を陣地から追い出す]
どんな文化にだって、こんなシンプルな競技が誕生しないはずがない。
自然発生的に誕生するにきまってる。
飛行機に乗ると、隣の人とひじかけの所有権を争って抗争(ひじの押し合い)がくりひろげられたりする。
そう、あれだっておすもうの一種だ。
専務と常務の仲が悪くて、策略をめぐらして相手を会社から追放しようとしたりする。
そう、これもおすもうの一種だ。
フリーキックのとき、フォワードと相手ディフェンスがいい場所をとりあって体をぶつけたりする。
そう、いうまでもなく、これはサッカーだ。
[地面に手をついたら負け]
これもおすもうのルールだけど、これだって世界共通のルールだ。
裁判でも戦争でも、地面に手をついて謝るのは敗者のほうだ。
改めて説明するまでもない。
水泳、レスリング、野球、ラグビー。どんな競技でもいい。決着のついた直後の選手を見てごらんなさい。
勝った方は天に拳を突き上げて喜んでいる。
負けた方は地に手をついて悔しがっている。
二足歩行をはじめたときから人類が共通して持っているルールだ。
こんなわかりやすいルールのおすもうが、世界に受け入れられないはずがない。
なのにどうして国際種目になれないのよ。
こう云うと、わけ知り顔でこんなことを云うやつがいる。
「おすもうが世界競技にならないのはね。あのまわしスタイルが理由なんだよ。
おすもうさんは尻を出してるだろう?
あのまわし姿が、他の国の人にはハレンチととられるんだ」
そんなやつには声を大にして反論したい。
いや、もう大にしてる。さっき隣のやつに「何度注意したら静かにするんだ」と云われたところだ。
だからもう静かにするけど、これもまたどっちが陣地(アパート)から追い出されるかを競ってるわけだから、おすもうだと思わない?
2015年6月13日土曜日
模倣ならではの下品さ
大通りを、ごてごてした装飾の宣伝カーが走っていた。
「一攫千金の夢の楽園『マカオ』にお越しください……」
ってスピーカーで流しながら走っていたので、パチンコ屋の宣伝うるせえなあと思って目をやったら、旅行代理店とマカオ観光局のタイアップ企画だった。
ほんまもんとは思えない品の無さだった。
「一攫千金の夢の楽園『マカオ』にお越しください……」
ってスピーカーで流しながら走っていたので、パチンコ屋の宣伝うるせえなあと思って目をやったら、旅行代理店とマカオ観光局のタイアップ企画だった。
ほんまもんとは思えない品の無さだった。
2015年6月12日金曜日
登録:
投稿 (Atom)