2016年2月23日火曜日

【ふまじめな考察】頭脳明晰1回転

ニュース番組を観ていたら、アメリカでスノーモービルのフリースタイルっていう大会が開かれたニュースを伝えていた。

スノーモービルっちゅうのはあれです。
でっかい電動そり。
ビッグスクーターみたいなやつですね。
その大会。

あー、雪道を走ってタイムを競うわけねー。
と思って見てたら、どうもちがうわけ。
なんかジャンプしてんの。

雪上にジャンプ台が作ってあって、スノーモービルでそこに突進して、勢いよくジャンプするわけ。

のみならず。
あろうことか。
あにはからんや。

ジャンプしながら、空中でスノーモービルにつかまりながら逆立ちしたり後ろ向きに座ったりするわけ。
そんで、誰がいちばん難易度の高い跳びかたができたかを競うわけです。

もちろん、たいへん危険です。
何百キロもあるスノーモービルごと、10メートルは跳ぶわけですからね。
着地に失敗すれば、いくら雪の上とはいえただではすまないし、スノーモービルにぶつかったりしたら命にもかかわるわけです。

しかし危険と紙一重なところこそがフリースタイル競技の魅力であるようでして、若干二十歳ぐらいの男たちは果敢にもスノーモービルでジャンプして宙返りをしたりするわけです。

それを見て、ぼくは思いました。
この競技やってるやつの平均偏差値、30届かないぐらいだろうな、と。

だってそうでしょう。
電動そりに乗ってジャンプしながらぐるぐる回って後ろ向きに座るとか、どう見ても、頭脳明晰な人間のやる競技じゃないでしょう。

だってそうでしょう。
何の必要性もないのにスノーモービルで逆立ちしようとして転倒して半身不随になるとか、どう考えても、ハイスクールの弁論大会で西海岸代表に選ばれるタイプの青年のやることじゃないでしょう。

しかし。
うらやましいのもまた事実。
なにしろ、齢二十歳ぐらいにして、スノーモービルのジャンプの大会に出られるぐらいの技術を持ってるわけです。

たいへんな金持ちですよね。

スノーモービルを買ったことがないので知りませんが、でっかいバイクみたいなスノーモービル、原付買うぐらいのお金では買えないでしょうね。

しかもふつうのスキー場ではスノーモービルのジャンプの練習はさせてくれないでしょうから、貸し切るか、自分専用のコースを所有するか、人里離れた雪山に行くかしないといけない。

これ、相当な金持ちのボンボン息子か、あるいはアラスカで熊狩りしてる猟師の息子かじゃないとできないことですよ。

なんてうらやましいバカたちだ……!

2016年2月22日月曜日

【エッセイ】くすむ!日本レコード大賞

妻が云う。

お父さんと一緒に映画『阪急電車』のビデオを観たの。
そしたらお父さんが
『こないだ観た汽車の映画が……』っていうの。
汽車なんかずっと前になくなってんのに、いまだに電車っていう癖が抜けないのよ。
どうして年寄りってああなのかしらね。

と語っていたので、

「君も今、DVDのことをビデオっていってたよ」

と指摘した。

「うわー!
 そういうことかー!」

と妻は頭を抱えていた。


2016年2月20日土曜日

【読書感想】ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』

ライマン・フランク・ボーム (著),毛利孝夫 (翻訳)『オズの魔法使い』 

内容紹介(Amazonより)
フランク・ボームによるオズの物語全14作中、第1作にあたる名作「オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)」を、ルビ付きの完全新訳、縦書き表示でお届けします!
竜巻でオズの国へ飛ばされた少女ドロシーが、かかし男、ブリキの木こり、臆病ライオンたちと繰り広げる冒険の世界!
初版で掲載されたW.W.デンスローの美しいカラーの挿絵を76点収録!

みんな大まかには知りながら、じつはよく知らない物語。それがオズの魔法使い。

かくいうぼくもよく知りませんでした。
「ええっと……。竜巻でぶっ飛ばされたオズ? が、かかしとかライオンたちと旅をして、次々に襲いかかってくる敵を知恵と勇気と魔法でやっつけて、最終的にまた竜巻に飛ばされておうちに帰ってくる話、かな……?」
ぐらいの認識でした。

いまさら児童文学を読むのもなあということで一生『オズの魔法使い』をうろ覚えのまま生きていくつもりだったんですが、もう版権が切れているのでKindleで安く買えるというので、読んでみました。
(電子書籍の最大の魅力はこういうところですね。著作権なんてのは作者が死ぬと同時に切れてしまえばいいのに。大半の創作者にとっては、子孫に小金が入るよりも自分の死後も作品が読まれつづけることのほうが大事でしょう)

そんなわけで、30歳を過ぎてはじめてまともに読んだ『オズの魔法使い』。
感想はというと、
「少年時代に読んでおけばよかった!」

奇想天外なキャラクター、荒唐無稽なようでじつはしっかりと組み立てられたプロット、次々に試練が襲いかかるスリリングな展開。
児童文学としては最高傑作といってもいいほどの出来映え。


なによりすばらしいのは、説教くささをまったく感じさせないところ。

人々を困らせていた東の魔女と西の魔女をドロシーがやっつけるわけですが、その決め手となるのは力でも策略でも勇気でも友情でもありません。
“まったくの偶然”によってドロシーは魔女を打ちたおすのです。
オズの正体を暴くのも偶然。さまざまな困難を切り抜けるのもほぼ偶然。
「家に帰る」という最大の目的だって、最後にはあっけないほどかんたんに達成されてしまいます。
(なにしろ「もしその力を知っていたなら、この国に来たその日に、あなたはエムおばさんのところに帰れたのですよ」と言われてしまうぐらい)

“努力と根性で道を切り開く主人公”に食傷している身からすると、運命に身を任せて「このままじゃおうちに帰れないわ」と困っているだけのドロシーの存在はかえって痛快でさえあります。


さらに、もうひとつの目的である「知恵の足りないかかし」「ハートを持たないブリキの木こり」「勇気のないライオン」が、それぞれ自分に欠けているものを手に入れるまでのいきさつについても、まったく教訓的ではありません。
彼らは、旅をすることで知恵と優しさと勇気を手に入れるわけではありません。また、はじめからそれらを持っていたことに気づくわけでもありません。
「だまされて、知恵と優しさと勇気を与えられたと思いこまされる」ことによって、彼らは心の底から満足するのです。

知恵も優しさも勇気も、そして幸せも、手に入れるものではないのです。
持っていることに気づくものでもない。
そんなものは、あるといえばあるし、ないといえばない。
それらを持っている人と持っていない人の違いは、「持っていると思いこんでいる」かどうかだけ。
そこに努力は要らないのです。


……とまあ、教訓的でないお話から教訓を導きだしてしまうのは野暮というもの。

そのへんのくだらない意味など忘れて、100パーセント純粋なエンタテイメントとして楽しめる『オズの魔法使い』。
とりあえず我が子には必ず読ませようと思います。



2016年2月19日金曜日

【思いつき】Democratic

今夜はみんな、ライブに来てくれてサンキューな!

ここで、チーム民主主義のイカれたメンバーを紹介するぜ!


まずは立法担当、国会!
法律をクリエイトするのはお手のもんだ!

続いてのメンバーは、内閣!
担当は、行政!
国会が作った法を見事なテクニックで演奏してみせるぜ!

最後はこのおれ、裁判所!
司法は任せろ!
法の番人って呼んでくれよな!


今日はみんな、盛りあがっていこうぜ!

サイコーにデモクラティックな夜にしようぜ! イエーイ!


2016年2月18日木曜日

【エッセイ】オオオオオオオペラ

妻のお父さん(つまり義父)から誘われた。
「今度オペラを観にいこうと思うんだけど、よかったら一緒にどう?」


オオオオオオオペラ!?

オペラとミュージカルとバレエと能と歌舞伎の区別もついてないぼくが、オペラ……!?


そういやお義父さん、クラシック観賞が趣味だといっていたな。
そうか、そういう人はオペラを楽しむのか。
「今度、近くのホールに桂米朝が来るってよ! チケットとっといたから! その日は平日だからあんた学校休みなさい」と、息子に小学校をサボらせて半ば強引に落語に連れていったうちの家とは大違いだな。

クラシックも聴かないしオペラといえば怪人が出没するらしいという知識しかないぼくだけど(その知識もまちがってる気がする)、義父母とは良好な関係を築いておきたいし、何事も食わず嫌いはよくない。
一度行ってみたら意外と楽しめるかもしれない。

「へえ、オペラですか。いつやるんですか?」

 「8月だよ」

「けっこう先ですね」

 「そう。ドイツの田舎町にいいオペラハウスがあるんだけどね。そこを作った作曲家が8月に生誕100年を迎えるんだ。その記念公演があるから……」

「ちょっと待ってください。ドイツの田舎町に行くんですか……!?」

 「そう。ほんとに何もない町だけどね。でもいいホールだってオペラ界では有名なとこなんだよ」

「ってことはドイツ語でやるんですよね……?」

 「そりゃオペラだからね。日本公演でも日本語ではやらないよ」


クラシックも聴かないのに、ドイツで、田舎町で、オペラ界で有名なホールで、ドイツ語で、しかもお義父さんと……。
初心者にはハードルが高すぎるっ……!


「すみません、8月はちょっと仕事が忙しい時期なので。せっかくですけど……」

 「そうか。残念だけど、仕事ならしょうがないな」

「ええ、ぼくも残念です。また誘ってください。できたら落語かストリップとかのときに……」