2026年2月5日木曜日

【読書感想文】浅倉 秋成『失恋覚悟のラウンドアバウト』 / いい意味であほらしい

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失恋覚悟のラウンドアバウト

浅倉 秋成

内容(e-honより)
「あなたとはお付き合いできません―わたし実は、魔法使いだから」告白を断るため、魔法使いだと嘘をついてしまった女子高生。しかし彼は、人間界と魔法界を超える愛を誓ってくれてしまい…?フリたい私とめげない彼。恋と嘘とが絡みあい、やがて大きな渦となる!ぐるぐる回る、伏線だらけの恋物語!

 SF恋愛コメディ連作短篇集。

 天才科学者、完全に透明な物質、精巧なウソ発見器、すぐにものを盗んでしまう少女、出会う異性すべてを惹きつける特異体質、鉄腕アトムのようなロボット……。ある街を舞台に、奇想天外な人間や発明にふりまわされる人々の姿を描く。まるで『ドラえもん』のような味わい。


「すべて、ラウンドアバウトだったんだよ」
「ラウンドアバウト? ラウンドアバウトって、あの、交差点のラウンドアバウト?」
「そう。あのラウンドアバウト」俺は言う。「あの交差点と同じだったのさ。曲がりたい方向は決まっているのに、敢えて反対の方向に走り出さなきゃならなかったり、あるいは飛び出すタイミングがわからずに、いつまでもぐるぐると周回してしまったり。そんなふうに複雑に、だけれども極めて秩序的にすべてが進行していく。信号もなく、ノンストップで、同時並行的に車が動かされていく。それが「ラウンドアバウト」。俺たちもそんなラウンドアバウトをぐるぐると回らされたメンバーの一員だったんだよ」
「……どういう意味なの?」
 俺は笑った。「この「日の下町」で、おそらくはいくつもの恋模様が展開されたんだ。いくつもの「恋」が、まるでラウンドアバウトみたいに、一緒くたになってぐるぐると展開されていった―――そして俺たちも巻き込まれた。結果、ある者は円滑に結ばれたかもしれない。ある者は、苦難の末に別れる道を選んだかもしれない。いずれにしても、そんな中で俺たちはこうやって回り回って再び結ばれることができた。いわば勝ち組だってことだよ」

 この文章の通り、ラストの短篇ではすべての話の登場人物が集結し、それぞれの話がからみあい、すべてしかるべき結末に着地する。ほどよく伏線も散りばめられ、よくできている……のだが、そもそも設定が荒唐無稽なのでどこまでいってもばかばかしい。

 いい意味であほらしい小説だった。


 浅倉秋成氏の本を読むのは『六人の嘘つきな大学生』『九度目の十八歳を迎えた君と』 『教室が、ひとりになるまで』に次いで4作目だが、これまで読んだ3作がわりとシリアスな話だったので、こんなのも書くのかとちょっと面食らってしまった。

 個人的には、巻末に載っているおまけ4コマ漫画(著者が原作)がいちばんおもしろかった。


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