マイケル・サンデル『それをお金で買いますか』
「金で買えないものはない」
という人がいる。
もちろん、そんなことはない。
お金で買えないものはある。
たとえば「お釣り」とか。もらうことはできても買うことはできない。
はい、利かせてみましたよ。とんちを。
「世の中お金じゃない」
という人がいる。
これもうそだ。
お金なしで生きていくのは不可能。
田舎で畑をつくって自給自足の生活をしている人はいるだろうが、大気や安全も誰かのお金によって守られていると考えると、その人もお金の恩恵を受けて生きている。
畑泥棒が跋扈する世の中では自給自足の生活は送れないからね。
大概のものはお金で取引可能だけど、そうではないものもある。
じゃあその境界線ってどこにあるの?
いや、どこに境界線を引くのが正しいの?
という問いに対してじっくり考察したのが『それをお金で買いますか』だ。
たとえば、こんな例。
絶滅の危機に瀕しているアフリカのクロサイ。絶滅危惧種なのでもちろん猟は禁じられているが、なんと15万ドルを払えばクロサイを撃ち殺す権利が買える。
と聞くと、動物の命も金次第か、とイヤな気持ちになるでしょう。
ところが、ことはそう単純な話ではない。
クロサイを撃つ権利をハンターに販売できることで、民間の牧場主はクロサイを保護して繁殖させるインセンティブが得られる。
結果として、クロサイの数は回復しはじめている。
クロサイを殺す権利を金で売ることができるようになったことで、種全体としてはクロサイは守られている。
それでも、快楽のためにクロサイを殺す権利を売ることはいけないのか?
難しいところだよね……。
お金の扱いは難しいと、『それをお金で買いますか』を読んでつくづく思う。
こんな例。
これはよくわかる。
ぼくも、友人に「引っ越しするから手伝いにきてよ」と言われたら「しょうがないな」と云いながらも手伝いにいく。
でも「1,000円あげるから引っ越し手伝いにきてよ」と言われたら、「1,000円ぐらいで来ると思うなよ」と行きたくなくなる。
お金はたくさん欲しいけど、いついかなるときでも欲しいかというと、そうでもないんだよね……。
べつにきれいごとをいうわけじゃないですけど、お金で売り買いしてほしくない領域というのはある。
最後に、なるほどそのとおり! と思わず膝を打った文章をご紹介。
そうなんだよね、すべてが商品になるって、しんどいことなんだよね……。
0 件のコメント:
コメントを投稿