2015年11月12日木曜日

【エッセイ】チェスとエロス

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小学生5年生のとき。
大人向けの本のおもしろさに目覚めつつあったぼくは、母の本棚をあさり、タイトルがおもしろそうだったのでジェフリー・アーチャーの短篇集『十二の意外な結末』を手に取った。

タイトルのとおり、十二の短篇が収められた作品。そのうち十一の作品についてはまったく記憶に残っていない。
だが『チェックメイト』だけは、鮮明に覚えている。何度も読み返した作品だからだ。

短篇小説として優れているわけではない。感動するような話ではないし、意外なオチもない。見聞が広げられたり、考えこまされたりするような小説でもない。
ではこの短篇のいったい何が10歳のぼくを惹きつけたのかというと、すごくエロかったからだ。


『チェックメイト』はこんな話だ。
ある男が、チェスクラブで美女と出会う。
ふたりは男の自宅でチェスをすることになった。
そこで男は美女からこう持ちかけられる。
私が勝ったらあなたからお金をもらう、ただしあなたが勝ったら私は一枚ずつ服を脱ぐ、と。
そして男は連勝し、約束通り美女は身にまとっているものを脱いでいくのだが、あと一回勝てばいよいよ下着を脱がせられるというところから連敗を喫し、男は大金を巻き上げられてしまう。
じつは美女はチェスのチャンピオンで、その強さを隠していたのだった……。

というお話。


大人にとってはちっともエロいストーリーではない。
だが10歳のぼくにとっては、美女が服を一枚ずつ脱いでいく描写がものすごく刺激的だった。
まだエロ本も読んだことのなかったぼくにとって、はじめて触れたエロいメディアが『チェックメイト』だったのだ。何度も読み返し、そのたびに興奮した。

日本の文学、漫画、映画、テレビにチェスの描写が出てくることはめったにない。小川洋子の『猫を抱いて象と泳ぐ』ぐらいしかぼくは知らない。
また、チェスの対局をしたこともない。

だから、ぼくにとってチェスといえば、エロい美女の服を脱がすための手段であり、将棋やバックギャモンのようなテーブルゲームというより、どちらかというと“前戯”に分類されるものなのである。


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