2016年9月27日火曜日

【ふまじめな考察】今年はこれを流行らせます

「今年の流行色」は、日本流行色協会なる団体が毎年制定しているらしい。

流行色を誰かが決めてるってどうなのよ。
流行って自然発生的に起こるもんでしょ。

と思ったのだけれど。
特にカラートレンド情報については、長い歴史の中でカラー設計の指針としてその信頼性と的確性が広く認められています。
(日本流行色協会ホームページより)

という文章を読むと、ファッション業界からするとありがたい指針かもしれないなと思いなおした。

なんの制約もなしにゼロからものをつくるってたいへんだもんね。
自由は創造性を制限する。
「今年はこのテーマに従って服をつくってください」という指針があったほうが、かえってつきぬけた発想も生まれやすいのかもしれない。

どんな色が流行るかあらかじめわかっていたほうが仕入れや在庫の計画も立てやすいだろうし。



「今年の流行」は、色だけじゃなく他の分野でも計画的に制定したらいい。

「来年流行するギャグは、謝罪のギャグです」とか。
で、謝罪ギャグを生みだした芸人を、テレビ番組も積極的に使うようにするの。 

流行りのギャグって、初めて見たときはそんなにおもしろくなくて、何度もくりかえされるうちに 人口に膾炙して広まっていくことが多い。
でも見る人もあらかじめ「今年は謝罪ギャグがくる」ってわかってるから、心の準備ができていて、初見から笑うことができる。

うん、準備ができてるっていいね。



詐欺も年々新しい手口が考え出されては廃れていく。
ある程度知れわたってしまえば詐欺として通用しなくなるから、詐欺師は常に新しい手口を考案しなくてはいけなくてたいへんだよね。

だから日本流行詐欺協会が、
「来年は葬式を利用した詐欺が流行ります」
という指針を示してやるといい。

ある程度の指針があったほうが詐欺師も騙しかたを考えやすいだろう。

流行に敏感な人は特に葬式詐欺には注意するから引っかからない。
そうなると詐欺師たちも食っていけなくなるんじゃないかと心配してしまうよね。

でも大丈夫。
流行にうとい人って決して少なくないから。
もう若者が誰も使わなくなった頃に流行りだったギャグを言い出すおっさんとかいるでしょ。
ああいう人が、ちゃんと後から流行の詐欺にひっかかってくれるから。



日本流行疫病協会は、
「来年は蚊を媒介にした伝染病を流行らせます」
って、ちゃんと流行の指針を示しといてほしい。

流行が事前にわかってたら医療機関も対策できるし、予防接種もできる。
指針があるとほんと助かる。

それに、病死に見せかけた殺人計画も立てやすいしね。

2016年9月26日月曜日

【読書感想文】米原 万里 『旅行者の朝食』

内容(「BOOK」データベースより)
さる賢人曰く、人類は以下の二つに分類される。「食べるために生きるのではなく、生きるためにこそ食べる」「生きるために食べるのではなく、食べるためにこそ生きる」さて、あなたはどちらのタイプ?グルメ・エッセイロシア風味。

旅行グルメ本みたいなタイトルですが、旅行の要素はほとんどなく、食べ物エッセイ。

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2016年9月25日日曜日

【エッセイ】凶器を手にした心を持たないやつら


いっとき仕事で毎日車を運転していましたが、どれだけ運転しても慣れなくて、車に乗るのがイヤでイヤでしかたありませんでした。
そのときの会社を辞めたときにまず思ったことは「よかった、これで車の運転をしなくて済む」でした。

なんでそんなにもイヤだったのかというと、周りのドライバーの悪意がむきだしになっている(ように感じられる)ことに耐えられなかったからです。


ぼくは大量殺人鬼や総理大臣ではないので、あからさまな敵意を向けられることは、めったにありません。

でも、車を運転していると、それをしょっちゅう感じてしまうのです。
「こいつ、とろとろ走りやがって。割り込んでやれ」
「へたくそな運転してやがるな。わざとぶつけてやろうか」
「だっせえ車に乗ってんな」

周囲の車のドライバーからの声が聴こえてくるような気がします。


歩いていたり自転車に乗っているときはそんなこと感じないのに、どうして車を運転しているときだけそのような心持ちになるのでしょうか。

やはり、顔が見えないからでしょうか。

運転手の顔が見えず、ただの大きな鉄の塊しか目に入らないため、攻撃的な目を向けられているような気がするのかもしれません。


考えてみると、自動車というものはいともかんたんに人の命を奪うことのできる乗り物ですから、いわば凶器です。

多くの車と並んで走っているという状況は、ナイフや銃やアイスピックやバールのようなものを手にした人たちに囲まれている状況と同じようなものなのです。

おまけに、その凶器を持った人たちは顔が見えず、何を考えているのかまったくわからないのです。

不安な気持ちにならないわけがありません。
車を運転している間、ぼくはずっと怖くてしかたありません。


しかし。
ぼくが大嫌いな車の運転をしているときでも、ただひとつだけ安心する瞬間がありました。

それは、救急車がサイレンを鳴らして近づいてきたときです。
救急車が来ると、ほとんどすべての車は速度を落としたり脇に寄ったりして道を譲ります。
この行動を見て、ぼくはほっとするのです。

ああよかった、ぼくの周りにいるのは凶器を手にした心を持たない大量殺人鬼じゃなかった。
ちゃんと良心を持った人たちが運転しているのだ。
その証拠にほら、どこかで怪我か急病になった顔も知らない人が助かるよう、救急車に道を譲ったじゃないか。


救急車が走り去ると、車たちはまた雑然と走り出します。
でももうさっきとは違います。
つい先ほどの行動によって、彼らは見ず知らずの人のために道を譲る、心優しい人たちだと証明されたのですから。

もう怖くありません。
ぼくはひと心地つきます。

そして冷静に周りを見渡して、こう思うのです。

前の車、とろとろ走りやがって。
わざとぶつけてやろうか。

と。

2016年9月22日木曜日

【思いつき】歌詞ビフォーアフター

日本人に「嫌いな歌詞の歌は?」と訊いたらまちがいなくトップ3には入るであろう『世界にひとつだけの花』。

終始上から目線なのが、嫌われている要因なんでしょう。

(話はそれますが、昔の槇原敬之は掌篇小説のようなストーリー性の高い良い歌詞を書いていたのに、逮捕されてから説教くさくなってしまった。これは、たくさん説教された人間は説教くさい人間になってしまうといういい教訓です)。


それなのに僕ら人間は
どうしてこうも比べたがる
一人一人違うのにその中で
一番になりたがる?

そうさ 僕らは
世界に一つだけの花
一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに
一生懸命になればいい

うん、「何を偉そうに」という気持ちが湧いてくる歌詞ですよね。

「僕ら」というところが特に良くないんでしょうね。
おまえがそうだからって他の人まで同じ心持ちだと思うなよ、って気持ちが湧いてきますもんね。



だから思いきってこの歌詞をリフォームしちゃいましょう。

やり方はかんたん、「僕ら」を「ヤツら」にするだけ。

それでは、歌詞リフォームの匠が修繕した後の歌詞をごらんください。


それなのにヤツら人間は
どうしてこうも比べたがる?
一人一人違うのにその中で
一番になりたがる?

そうさ ヤツらは
世界に一つだけの花
一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに
一生懸命になればいい


なんということでしょう。
あれほど偉そうに感じられた歌詞が、「僕ら」を「ヤツら」にしただけで、宇宙人の視点が与えられ、見ちがえるほど新しいテーマを持った歌詞へと生まれ変わりました。

最大の特徴だった説教くささは残しつつも、「宇宙人からの説教」という様相を呈したことで、「おまえが言うな」感を見事に取り払いました。
これなら聴いた人も「文明の進んだ宇宙人に言われるのならしかたない」とすんなり受け入れられます。


さらに、

「ワレワレから見たらおまえら人間など大差ない。おまえらもアリの個体差を見分けられないだろう。おまえらがどれだけがんばったところでワレワレの足下には及ばんのだから、せいぜい種の保存のために、ちっぽけな命というその花を咲かせることだけに一生懸命になればいい」

というメッセージが伝わってくるではありませんか。


これなら宇宙船地球号の住人たちも大喜びですね。

2016年9月19日月曜日

【読書感想文】茂木 誠『世界史で学べ! 地政学』

内容
なぜ日米は太平洋上でぶつかったのか。日中関係と北方領土問題の根本原因は―新聞では分からない世界の歴史と国際情勢が、地政学の視点ならスッキリと見えてくる!世界を9つの地域に分けてわかりやすく解説。ベストセラー「経済は世界史から学べ!」の著者が贈るビジネスパーソン必読の書。

ジョージ・フリードマン『100年予測』やマクニール『世界史』がおもしろかったので、地政学の本をどんどん読みたくなって購入。

なんか予備校講師が書いた本みたいな表紙。
表紙が安っぽいので5点減点......。というどうでもいい採点はさておき、内容は明快。
地政学の入門書としてはちょうどいい。

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