2015年12月14日月曜日

【エッセイ】電子クリスマス

知人が
「小学生の息子がクリスマスプレゼントに電子顕微鏡を欲しがってるんだけど、値段高くないかな?」
と言っていたので、

「大丈夫ですよ、安いやつだったら数百万円で買えますよ!」
と教えてあげた。

「ええ!? そんなに高いの!?」

「いや、安いですよ。いいやつなら億を超えるんで」

「よく知らないけど、電子顕微鏡ってそんなにするのか……」

「ふつうは大学とか研究機関が買うやつですからね。息子さん、光学顕微鏡とまちがえてるんじゃないですか?」

「あ、そうかも。光学顕微鏡ってのは安いの?」

「そうですね。電子顕微鏡よりはだいぶ安いですよ。数十万円で買えます」

2015年12月13日日曜日

【エッセイ】誰かのいつもの

 散髪に行った。
「いつもと同じでいいですか?」
と聞かれた。
「はい、お願いします」

 で。
 いつもよりかなり短い。
 ぜったい誰かとまちがえてやがる。

 というか。
 よく考えたら、はじめて行った美容院だった。

2015年12月11日金曜日

【考察】最近のリセット事情

「最近の子はゲームのやりすぎで、現実もリセットできると思っている」
という言説があるけど、

本だって途中で放り出した後にまた最初から読みはじめられるし、

サッカーでボロ負けしても次の試合は0ー0からはじまるし、

将棋や囲碁だってかんたんにリセットできるし、

絵を描き損じたら新しい画用紙にいちから描けばいいし、

ゲームにかぎらずたいていの趣味はリセット可能なんだけどな。


最近の老人はリセットするという発想ができないから、「気をとりなおす」ことができなくて、気に食わないことがあるとすぐ暴力に走っちゃうのかな?

2015年12月10日木曜日

【エッセイ】せめて順番を

妻が「そういうことは、未亡人になって、定年退職して、たっぷり時間ができてからやるわ」
と言ってたけど、
ぼくが先に死ぬのは確定かよ。

せめて未亡人になるのと定年退職の順番を逆にしてくれよ。

2015年12月8日火曜日

【読書感想文】新潮45編集部『悪魔が殺せとささやいた』

新潮45編集部『悪魔が殺せとささやいた』

 内容(Amazonより)
澱のように沈殿する憎悪、嫉妬、そして虚無感―。誰にも覚えのある感情が、なぜ黒い殺意に変わるのか。日常のなかで突然襲い来るその瞬間、血のつながった家族、愛した人、通りすがりの名も知らぬ者を殺めるまでに、人を駆り立てるものは何か。虚飾、自己愛、そして妄想…いびつで残酷な人間の本性に迫り、殺人事件の真相を暴く、ノンフィクション集。好評シリーズ第五弾。

猟奇的な殺人事件レポート。
一応ノンフィクションということになっているが、関係者各方面に取材をしているわけではなく、一方の主張をそのまま事実かのように記事にしているので、ノンフィクションとしての正確性は乏しい。あくまで週刊誌的な読み物だ。

しかし半分作り話と思って読めばそれなりにおもしろい。
ぼくは今まで殺されたことはないのだが(みなさんもないはずだ)、殺人事件に巻きこまれるかどうかというのは単に運の問題でしかないのだと思い知らされる。
隣人がどんな思いを持って暮らしているかなんて誰にもわからない。どんなことで恨まれているかわからないし。
恨みを買っていないと思っていても安心はできない。この本には「殺人者の家族として生きるのはかわいそう」という理由で親から殺されてしまったケースも載っている。もうどうしようもない。

危険な場所には近寄らない、危ない人とは関わらない、まさか殺したりはしまいと思わずに早めに逃げる。
殺人事件の被害者にならないためにできることといえば、こういったことぐらい。
それでもわずかにリスクを抑えるだけなんだろうけど。


 その他の読書感想文はこちら