2015年8月9日日曜日

怨嗟のニュース

「連休がスタート。新幹線は満員で、みなこれからはじまる休暇に期待いっぱいです」
ってニュースが、ゴールデンウィークやお盆、お正月には必ず流れる。

しかし、そのニュースをテレビで見ている人のほとんどは、遠出しないか、休みをとれない人だ。
おまけにニュース映像を作っている人も、読み上げているアナウンサーも、世間が休みなのに仕事をしている人たちだ。

流す側も流される側も「のんきに旅行かよ、いいよな、こっちはたいして休めないのによ」と不幸にさせるあの手のニュース、もうやめませんか?

その点、渋滞情報はいい。
旅行に行けない人が「ざまあみろ」と溜飲を下げることができるから。
ああいう、休めない人の怨嗟のこもったニュースをもっと流すべきだ。

2015年8月8日土曜日

流したっけ?

会社のトイレでうんこして、トイレを出て数歩歩いたところで
「あれ? ちゃんと流したっけ?」

水音を聞いていないような。
無意識にやっている動作だから、自信がない。
流した気もするし、流し忘れた気もする。

で、トイレに戻ってみると、ぼくが入っていた個室はもう誰かが入っておりドアが閉まっている。

ううむ。
大丈夫だったんだろうか。
それとも見られたんだろうかアレを。

もうしわけない。

はずかしい。

こわい。

2015年8月7日金曜日

乾燥ヒトデブーム

うちの近くの商店街。
大通りからは離れているので人通りは決して多くないが、ちょっとしたスーパーなんかもあるので地元の人はけっこう利用している。
その商店街の中に、表札屋がある。
家の表札を彫ってくれるお店だ。

このお店の存在が、ぼくには不思議でならない。
だってどう考えたって商売が成り立つわけがないんだもん。
表札なんてものは、一生に何度も買うものじゃない。
おまけに地元の人しか来ない商店街というのは最悪の立地だ(だってその地に長く住んでいる人はもう表札を持っているのだから)。
そんなわけで、案の定その表札屋に客がいるところを一度も見たことがない。
やる気だけはあるらしく、1月2日からもう営業していたのだが、もちろん正月から表札を買いにくる人はいない様子だった。

店主もさすがにこのままではまずいと感じたのだろう、店の片隅でべつの商売をはじめた。
火山石やヒトデの死骸や貝殻をどこからか仕入れてきて、一個二千円くらいの値を付けて売りだしたのだ。
ううむ。
表札と死んだヒトデ……。
謎の組み合わせだ。
共通点といえば、どちらも「せいをかいている(姓を書いている/生を欠いている)」ということぐらいしか考えられないが……。

なぜだか気になるこのお店。
とうぶん持ち家を購入する予定のないぼくにできることといえば、乾燥ヒトデブームが到来することを祈ることばかりだ。

2015年8月6日木曜日

イナゴ湧き肉踊る

ロシアで、猛暑のせいでイナゴが大量発生しているというニュース。
トウモロコシ畑があっという間にイナゴに食べつくされてしまうと伝えていた。
映像の中で、数百万匹のイナゴが空を覆いつくし、畑の持ち主であろうおやじがイナゴに向かって酒瓶を振りまわしていた。

冷静に考えれば、数百万匹いるうちの何十匹かを酒瓶で殴ったところで焼け石に水だ。
だがそれでもやらずにいられないのは、畑を愛する気持ちのためか、それとも暑さでやけくそになったからなのか、はたまた酒瓶に入っていたウオッカのせいなのか。

 イナゴ湧き
 ロシアおやじも
 ゆるむ夏

2015年8月5日水曜日

しれっとした嘘

書店で働いていたときのこと。

なにかと因縁をつけてくる常連客のおっさんがいた。
店員が勤務中におしゃべりをするなとか、この店は品ぞろえが悪いとか、だったら来るなと言いたくなるようないいがかりばかりつけてくる困ったおっさんだった。

あるとき。
大学生のバイトの子が、おっさんに因縁をつけられた。
「なんだその接客態度は!」だの
「お客様は神様だろうが!」だの怒鳴りちらし、
「店長を呼べ!」となった。
店長が出ていって、すみません注意しときますんでと言って客をなだめ、その場は収まった。



それから1ヶ月ほどたったときのこと。
おっさんが店に来て、店長に話しかけた。

「こないだおれが怒鳴りつけたバイトの子、最近見いひんな。どないしたんや」

そのバイトは大学4年生だった。
春になってめでたく大学を卒業し、地元に戻って就職したのだった。
就職したからバイトを辞めただけだったのだが、店長はしれっと嘘をついた。

 「ああ、あいつですか。クビにしましたよ」

「えっ!? なんでや!?」
と、おっさん。

 「こないだお客様に不愉快な思いをさせたでしょ。だから辞めさせたんですよ」

「いやいや、そこまでせんでもええやろ。まだ若い子やったんやし……」

 「いえ、給料もらって働いている以上、年齢は関係ないです。接客態度がなってないやつを働かせるわけにはいきません」

「だからって辞めさせんでもよかったのに……」

 「彼にも辞めたくないですって泣きつかれましたけどね。でもここはびしっとしないと他のアルバイトにもしめしがつきませんから」

「……」

罪の意識を感じたのであろう、それ以来、おっさんはすっかりおとなしくなり、理不尽なクレームをつけることはほとんどなくなった。

いやあ、あれは素晴らしいクレーム処理術だった。