『世界史で学べ! 地政学』
茂木 誠
ジョージ・フリードマン『100年予測』やマクニール『世界史』がおもしろかったので、地政学の本をどんどん読みたくなって購入。
なんか予備校講師が書いた本みたいな表紙。
表紙が安っぽいので5点減点......。というどうでもいい採点はさておき、内容は明快。
地政学の入門書としてはちょうどいい。
複雑な世界の緒地域の歴史・政治を、地理的要因を軸にして、快刀乱麻を裁つように説明。ニュースがわかりやすくなるね。
なるほど。ソ連解体が中国の海洋進出につながってるのか。
でも地政学の観点から見ると、穀倉地帯で鉄鉱石の産地、さらに黒海への出口であるウクライナがロシアにとって絶対に手放したくない場所であることがわかる。
ロシアの行動原理って、100年前からずっと変わってないんだよね。
「冬でも船が出港できる不凍港を手に入れる」ことの重要性は現代でも変わらない。
ほとんどの人は船に乗る機会がほとんどないけど、今でも国際的な流通の要は海路。
島国日本に住んでると海があるのがあたりまえな気がするけど、海って大事なんだね。
日本がモンゴル帝国に侵略されなかったのは島国だったからだし、大航海時代にヨーロッパ諸国の植民地にならなかったのは鎖国をして海からの交易を拒んでいたおかげだし(そうじゃなかったら中国のように切り刻まれていたかも)、明治維新が成功したのも海にうって出やすかったから。
日露戦争、日中戦争での勝利も海に出やすかったのが要因だし、太平洋戦争で敗れた要因のひとつは海路を絶たれたから。
戦後の復興も、海に面していて貿易がしやすかったことと、地続きの隣国がいないおかげで防衛に多くの国費を割かなくてすんだから、ってのが成功の一因だ。
日本史上に起こった出来事の多くは「島国だったから」で説明できてしまう。
歴史や政治を理解するための手助けになってくれる本だけど、ちょっと鼻につくのは頻繁に著者の政治思想が顔を出すところ。
けっこう右寄りの思想が頻出するので「まあまあ。あなたが中韓を嫌いなのはわかったからもうちょっとニュートラルに地政学の説明してよ。そういうのはべつの本でやってよ」と言いたくなる。
でも「世界みんな仲良く」という理想論ではなく、現実的な損得で物事をみる姿勢は嫌いじゃないけどね。
ロシアのクリミア併合について説明した章。
なるほど。
オバマ大統領は平和的でいい大統領だと思ってたけど、アメリカぐらいの大国になると、自国にとっての平和が他国にとっての戦争や紛争につながることもあるんだね。
こういう話を読むと、「いついかなるときも戦争はだめだ!」という主張は、やっぱり幼稚なものに感じてしまう。
もちろん、そういうことまで把握した上で、「他の国の国民がどんなに理不尽でひどい目に遭わされていたとしても自分たちだけは平和に暮らしていたいから戦争をしない!」という主張だったら、それはそれでありだと思うけど。
他にも、日本が満州事変を起こしたときに調査にきた「リットン調査団」。
あのリットンさんがどういう人物だったのかというと、イギリスがインドを半ば詐欺のような形で植民地支配していたときの官僚だったそうだ。
これらのエピソードを読むと、英米って、自国のことを棚に上げるのがうまいんだなって思うね。棚に上げるのがうまいからこそ世界の覇権国家になれたのかもしれない。
どの国だって誇らしくない歴史はあるけど、そこにはふれずに自分には汚点なんてひとつもないみたいな顔をいて、ぬけぬけと他国を非難できる。そういう才能を持った国だから、世界的にでかい顔ができるんでしょうね。
政治でも会社でも、出世する人ってそういうタイプだもんね!
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